営業組織の成果を最大化させる営業KPIの設定について
営業組織の成果を最大化させる営業KPIの設定について
営業組織の成果を最大化させる営業KPIは「先行指標」と「プロセス指標」に。また「管理可能指標」と「管理不能指標」とに分類することができます。またこれらを用いて業績最大化させるためのコツはどのあたりにあるのでしょうか?特に先行指標でかつ管理可能指標であるものをKPIとして管理する術について、ひいては業績最大化のKPI管理のコツについてまとめました。
営業KPIとは
営業KPI(Key Performance Indicator)とは「営業組織のアカウントの絶対量を上げるための重要な成功ファクターになりうるもの」です。いわゆる事業全体のKPIとしての管理ではなく、営業組織に焦点を絞ったKPI管理とは一体どのようなものがあるのでしょうか?
先行指標とプロセス指標
近年、KPIという言葉は二つの意味合いを持つようになってきました。
将来の受注量や受注額を増やすための管理としての先行指標 KPIマネジメント 営業活動をプロセス分析した上で受注量の底上げをどこまで実現できたかを管理するプロセス指標KPIマネジメント
どちらが大事ではなく、どちらも大事です。企業によっては両方をKPI管理対象としているケースも、片方だけを集中して管理しているケースも両方が存在します。
先行指標KPI管理
先行指標としての営業KPIを管理・マネジメントしていく上で重要なことは「先行指標として機能しているか」という点です。つまり、先行指標であるKPIが上がればのちの売上は上がらなければなりませんし、同じく下がれば売上も下がらないといけません。そういう関係性のものでなければ先行指標として機能しているとは言えません。逆に綺麗に相関関係があるものについては、先行指標としてKPIマネジメントに適していると言えるでしょう。
一定期間以前の各月のKPI指標の値と各月の受注実績をExcel上に並べて CORREL関数で相関係数を算出し、0.5以上の数値になったのであれば、先行指標として十分機能するレベルと言ってよいでしょう。
プロセス指標KPI管理
先行指標とは似て非なるものですが、営業プロセスに分解して各数値がどのような状態になったかを分析したり、強化することを通じて営業の底上げを実現していくのがプロセス指標KPI管理です。一つの例に過ぎませんが、営業受注を分解していくと「受注社数と単価」に分解され、社数は「訪問数と受注CVR」に。さらに訪問数は「接触数と訪問CVR」にそれぞれ分解されます。要は、受注を上げるためには以下のいずれかを上げればよいのです。
接触数
訪問CVR
受注CVR
単価
売上だけの受注目標だけではなく各指標についても、目標や参考値をおくことで、その数値をクリアしていけば理論上は受注目標を達成することができます。後は実際に営業組織全体で数値や指標を上昇させるためにどのような施策を講じていくのかということを、検討し行動に移し、結果が出たら評価し、改善する。このサイクルを通じてプロセス指標管理としてのKPIは磨かれていきます。
営業KPI管理をする上で知っておきたいポイント
プロセス指標と先行指標についてはどちらが大事というのはビジネスモデルや事業の状況によって大きく変わります。先述したように一方的にどちらが大事、どちらが不要というのは一概には言えません。
ただし、プロセス指標は受注内容を分解していけば比較的容易にたどり着き管理しやすいのに対して、先行指標は極めて論点が多く難しいポイントが多い為、この記事内では先行指標管理を主に取り上げていければと思っています。
KPI管理の「仮説検証と未来予測」の側面
先行指標としてのKPI管理が比較的「この指標が上昇すれば近い将来の売上増加につながるのではないか」という仮説をもとに検証をしなければならないのに対して、プロセス指標としての営業KPI管理は、数式の成立に仮説は不要です。プロセスが上がれば受注は増えます。
一方でプロセスを上昇させるために取り組んだ施策の効果見立て自体に未来予測が介入するために「これだけの施策を講じればこれだけの指標上昇に貢献し、結果これだけの受注売上を生むはず」という見立てが、必ずしも予測した通りに着地しないところに、KPIとしての精度向上ひいては業績向上の白地があると言えるでしょう。
管理不能先行指標と管理可能先行指標
管理不能先行指標
主に先行指標に言えることですが、自社ではどうすることもできない指標に財務的命運を握られているケースも存在します。つまり先行指標として管理していきたいと思っているが、例えば景気のように自社ではどうしようもない指標に後々の売上が連動するというのは当然ですがありえます。
景気の他にもクライアント企業の業績に大きく左右されるケースや、市場金利に影響を受けるなどのケースも当然あるでしょう。これらは管理不能先行指標と言います。該当指標のコントロール権限が自社にはないが、それによる自社への受注影響が極めて大きいケースです。
管理可能先行指標
管理可能先行指標とは、先行指標として機能していてなおかつ自社の受注量に影響を及ぼすような指標のことです。景気などのマクロ指標ではなく、自社でコントロールできるようなものが該当します。
例えばクライアントの決裁者と会えた量が後々の受注に比例するということは考えられるでしょうし、納品した商品の先方社内での活用率が高まれば継続受注できる可能性が飛躍的に高まるなどのケースもそうです。クライアント企業が計画を策定した段階でプロジェクト設立のアドバイザーとしてアサインされれば受注は決まったようなものであれば、アドバイザリーとして組み込んだ数が管理可能先行指標です。他にも単純に営業マンの数が増えれば売上が上がる状態にあるので、採用接点数を増やすことが受注の近道だという場合や、その逆で一年以上在籍している社員の離職率を抑えることが一番売上増加の近道というケースもあります。
結局は事業の構造がどのようになっていて、売上がどのような構造で増えたり減ったりするのかということを的確に捉えていることができていれば、KPIとして管理するものも変わる可能性がありますし、管理可能先行指標を見つけることができれば、ひたすらその指標を磨き続ければ理論的には売上は上がることになります。
先行指標管理の難しさ
非常に難しいのは受注の増減が、複数の要因によって生み出されているという点です。当然プロセスの影響も受けるでしょうし、景気などの外部要因の影響もあるし、自社で管理可能な範囲でも複数の影響を受ける点などが挙げられます。
また期間的な概念として先行指標が受注に影響を与えるものは顕著なものの、期間としてどれぐらい後に受注影響を及ぼすかは様々で、何ヶ月後の受注に綺麗に比例する、ということの方が稀ということもありえます。これらのケースにおいて先行指標管理はどのように実現していけばよいのでしょうか?
事業というのは生き物です。その時その時で最適解というものは存在する可能性がありますが、ビジネスの環境が変われば先行指標として機能していたものが全く別のものになり変わる可能性もあります。
また先行指標の良化悪化が財務指標に影響を及ぼすまでのタイムラグというものが元々存在しているからこその先行指標管理なのですが、タイムリーに先行指標の変化が財務に影響を与えないからこそ、ビジネスモデルが変化していることのキャッチアップが遅れる可能性も存在します。
そういう意味では日々日々経営環境が変化することが当たり前の業界においてはあまりKPIの先行指標管理というものはあまり機能しない可能性すらあります。
そういう前提ではありますが、最適なKPIを先行指標として見つけ出すことにはトライ&エラー以外の方法はありません。そして一定期間内はその指標を信じ、磨き続けるしかありません。リスクはそれらを一つに絞りきった時です。そして投資対象をその一つに限定してしまうことです。もちろん当たれば極めて大きなリターンを得ることになります。
例えばビッグワードでGoogleの検索順位の一位を取れたとすると、それが事業に与える影響は計り知れないでしょう。
恐らくそれはGoogleの検索表示順位を一つのゴールとして、逆算してKPI管理がうまくはまったケースとして言える一方で、Googleの検索ロジックが変更になることで指標として置いていたKPIが一変するということもありえます。
そういう意味でも外部環境に左右されるが影響が大きい指標と、内部だけで管理しきれる指標の二つを重要指標として配置し、ヒトやカネなどの経営資源を突っ込んでひたすら磨くというのがベターと言えるかもしれません。
先行指標とプロセス指標——本当の違いは「仮説が介在するか」
営業KPIは、プロセス指標と先行指標に分けて考えると整理しやすくなります。プロセス指標は、受注を「社数×単価」、社数を「訪問数×受注率」、訪問数を「接触数×訪問率」と分解していく、いわば数式です。ここに仮説は要りません。接触数を増やし、各転換率を上げれば、理屈のうえでは受注は必ず増えます。一方の先行指標は、「この数字が上がれば、少し先の売上も上がるはずだ」という仮説の上に立っています。だからこそ、本当に機能しているのかを、相関係数で検証しなければなりません。過去の各月のKPI値と受注実績を並べ、相関がおよそ0.5を超えていれば、先行指標として使えるレベルと言ってよいでしょう。
ここで一つ、設計上の着眼点があります。両者の本質的な違いは「未来予測が介在するかどうか」です。プロセス指標は確実ですが、伸びしろが見えやすく、やがて頭打ちになります。一方の先行指標は外れることもありますが、当たれば大きく跳ねる。だとすれば、KPIは二階建てにするのが賢明でしょう。確実なプロセス指標で土台の受注を固めつつ、当たれば大きい先行指標で勝負をかける。どちらが大事かではなく、役割が違う二つを、意図して併用するということです。
KPI最大の罠——「先行指標を号令にした瞬間」に機能しなくなる
ここからが、多くの営業組織が踏み抜く地雷の話です。先行指標は、本来「少し先の売上を予測するための観測装置」です。ところが、たとえば「決裁者と会えた数が受注に効く」と分かった瞬間、それを「今月は決裁者面談を一人あたり10件」という現場へのノルマ、つまり号令に変えてしまう。これをやると、何が起きるでしょうか。現場は、その数字を満たすことに最適化を始めます。受注の見込みが薄い相手にまで無理に会いに行き、面談数は確かに増える。けれど、肝心の受注は増えません。
これは「指標が目標になると、指標として機能しなくなる」という、よく知られた現象です。先行指標は、現場を追い立てる号令ではなく、静かに観測し続ける対象にとどめるべきもの。現場を動かすのは、確実なプロセス指標と、商談の質です。順番を間違えてはいけません。着地の精度を上げるために現場を動員するのではなく、現場が正しく動いた結果として、着地が自然とぶれなくなる。この順番を取り違えた組織は、月末だけが慌ただしく、報告と数字合わせに追われ、営業が辞める理由をまた一つ増やすことになりかねません。
最強の「管理可能先行指標」は、商談スコアである
自社でコントロールできて、なおかつ受注に効く。そんな管理可能先行指標として「決裁者と会えた数」を挙げるのは、実は少し粗い発想です。会えたとしても、確度がゼロなら受注にはつながりません。結局は量を数えているだけだからです。
もっと粒度の高い先行指標は、一件一件の商談を「受注確度」でスコア化し、その合計を見ることです。予算が確保されているか。商材そのものへの懸念がないか。決裁者が承認しているか。検討期限が直近に迫っているか。顧客が認識している課題を、自社の商材で解けるか。こうした観点を点数化していく。とりわけ「商材への懸念」と「課題と商材のミスマッチ」は、ほかがどれだけ良くても受注を遠ざける“即死要因”なので、ゼロ点ではなくマイナスとして重く扱います。会えた数という「量」ではなく、確度という「質」の合計を先行指標に据える。すると、号令に転化しにくく、予測の精度も上がり、しかも現場の日々の行動にも直結する。この三拍子がそろうわけです。先行指標を探すなら、まず商談そのものの確度を測る物差しから始めるのが近道と言えるでしょう。
「達成」ではなく「ズレない」をKPIに据える
KPIの目的は数字の最大化だ、と思われがちです。しかし、もう一つ、見落とされやすい軸があります。それが「予測の精度」です。
月末が近づくとチャットが荒れ、スプレッドシートが何度も更新され、どこかで数字が前倒しされて、最後にぎりぎり目標に届く。こういう組織はよくあります。けれど、それは数字を「揃えた」のであって、最初から「見えていた」わけではありません。本当に強い組織は、月初に引いた着地の線へ、自然と収束していきます。慌てる必要がないほど、日々の案件が手のひらに乗っているからです。だとすれば、着地のブレ幅そのものを、一段上のKPI、いわばメタKPIとして置く価値があるでしょう。達成率の高さよりも、宣言値と実績のズレの小ささのほうが、その組織のKPIマネジメントの成熟度を、正直に映し出します。ブレない組織は、たいてい、ほかのことも安定しているものです。
管理不能な先行指標は「捨てる」のではなく「早期警報」に使う
景気、主要クライアントの業績、検索エンジンのロジック。自社では動かせないのに、受注を大きく左右する指標があります。これらは管理不能先行指標と呼ばれ、「どうしようもないもの」として扱いを諦められがちです。けれど、捨ててしまうのは惜しいでしょう。
コントロールはできなくても、監視して、打ち手のトリガーにすることはできるからです。景気指標が傾き始めたら新規開拓の比率を上げる。主力顧客の業績が陰り始めたら、その一社への依存度を下げる動きを早める。管理できないからこそ、誰よりも早く気づいて備える価値がある。そう捉え直すわけです。受注への影響が大きい管理不能指標ほど、ダッシュボードの隅に置いて、静かに見張っておく。動かせないものを、嘆く対象から、警報として使う対象へと位置づけ直すだけで、その指標は意味を持ち始めます。
KPIには「賞味期限」がある——相関は定点で再検証する
事業は生き物です。ある時期に見事に機能していた先行指標も、ビジネスの環境が変われば、ある日ふっと効かなくなります。検索順位の一位を先行指標に据えて勝っていた事業が、ロジックの変更ひとつで土台から揺らぐ。これなどは典型例でしょう。
だからKPIは、一度設定したら終わり、ではありません。設定した相関が今も生きているかを、定期的に検証し続ける必要があります。先ほどの相関係数を、半年に一度でも回し直してみる。もし数値が0.5を割り込んできたら、それはその指標を磨く手を止め、別の先行指標を探すべきサインです。ここで必要になるのが、形骸化したKPIを捨てる勇気。かつて効いた指標を後生大事に追い続ける組織は、古い地図を握りしめて、今の道を走っているようなものです。一定期間はその指標を信じて磨き切る覚悟と、潮目が変わったら手放す決断。この二つを両立できるかどうかが、KPI運用の分かれ目になります。
まとめ——KPIは「平均を動かす道具」、ただし個の勝ち筋は平均に映らない
最後に、KPIマネジメントそのものの限界にも触れておきます。KPIは、組織全体の平均値を動かすための、強力な道具です。けれど、トップ営業の勝ち筋は、たいてい平均には現れません。優秀な営業を何人も並べて共通項を探しても、意外なほど見つからない。むしろ学びは、「同じ一人の営業が、時系列でどう変化していったか」のほうに宿っていることが多いのではないでしょうか。
だからこそ、KPIマネジメント(平均を動かす営み)と、個別の商談を質的に観察する営み(勝ち筋を見つける営み)は、両輪で回す必要があります。数字だけを追えば現場の機微を取りこぼし、現場だけを見れば全体最適を取りこぼします。結局のところ、営業KPIの巧拙は、どの指標を選ぶかという入り口よりも、その先の運用で決まると言えるでしょう。先行指標を号令ではなく観測として扱えるか。達成だけでなくブレの小ささを見られるか。賞味期限が来た指標を手放せるか。そして、平均と個の両方に目を配れるか。指標の設定が出発点だとすれば、ここで挙げた使い方こそが、業績を本当に動かす本体なのです。
Noteも書いてます
営業を"言語化""構造化"する話を、ゆるめに

