営業企画の改善業務とは|直す場所と打ち手の型
営業企画とは営業のPDCAを確実にかつ高速でまわすための、横串機能です。いわゆる外回りをして顧客から受注をあげる営業マンとは違います。スタッフ職の扱いで、営業全体の底上げや営業全体の業務改善を、仕組み作りを通して実現しようとする組織および機能です。Vol.2ではPDCAの「A(改善)」にフォーカスをあてて、営業企画のあり方について紹介します。
営業のPDCAのうちの「A(改善)」にどのように企画として関わっていくのかを取り上げます。
営業機能の改善
営業機能の改善機能は、大きく二つに分類することができます。
- ルーティング業務の延長で月次モニタリング等で評価された後工程として、評価内容を受けて、どのように改善していくのかという業務
- 現状の営業業務の課題や現場の声を始発点とするプロジェクト型の業務
営業機能の改善(定常業務)
定常業務の改善として、大きなウェイトを占めるのが、前月の受注実績などを踏まえて、今月ないしは翌月以降、どのような営業施策を実施して売上実績を伸ばすのかという営業施策の検討を通じた、業務改善がそれにあたります。
改善というと、今存在しているものをより良くしていくこと、というイメージがありますが、このタイミングでいう改善とは主に「予定されていたモノを、より効果が上がるためにどのようなことをしていくかを議論する」「実績を振り返っていく中で反省すること、やめること、変えること、続けること、を峻別する。またその理由を明らかにし、議論の土台に上げる」などを指し、これらも「改善業務」の範囲に含まれます。
具体的には、多くの会社では事業計画や売上目標という営業上の売上として到達すべきラインが設定されており、商品によっても異なりますが、多くは月次の目標に対して月次の実績が閉まったタイミング(翌月月初~月中)に、評価を行います。
目標に対して達成したのか、未達成になってしまったのか。
達成したのであれば売上を分解したときに、各指標は健全な達成の仕方であったのか
未達成であれば、どのような点が行き届いていなかったのか、想定と違ったのか
などの評価をします。評価の後にこの実績を受けて「一ヶ月から三ヶ月ぐらいの単位で、営業全体をどう指揮していくのか」がこの改善業務にあたります。施策として、値引きをして受注社数を増やしたり、売れ筋商品から注力商品を定めて販売量が増やす形を構築したり、営業士気を高めるためのインセンティブやチーム対抗キャンペーンの設計をしたり、成功事例の共有の場を設けることで、受注コンバージョンを上げる試みを実施したり、などです。
これらを「数字」を見ながら「施策」を設計し、現場に「浸透」させ、終わった後に「評価」を行う、といった一連の業務(PDCAの中の小さなPDCA)を担い、全体マネジメントを図るのが、営業企画の定常業務としての改善業務にあたります。
営業機能の改善(プロジェクト業務)
現場の声や、業務課題が顕在化し始めたタイミングで、意志を持つ人の号令で始まるのがプロジェクト型の営業機能の改善です。これらは前工程としてPDCがあるわけではなく、現場が機能していないので、疲弊しているので、ミスが多発しているので、非効率なので、などの理由で始まることが多いです。
特に多いのが
- 業務フローに関する改善
- 受注コンバージョン向上のための改善
- 生産性向上のための業務の集約化による改善
- 効率化のためのシステム化の検討
などが多いです。これらのプロジェクト型の業務改善において大切なこととして、
- 期間限定でゴールを決めて動かすことが多いためスコープなどがはっきりしているか
- 現場のスイッチングコスト(金銭負担、心理負担、一時的な時間負担)は特定できいるか
- 関係各所に対する適切なコミュニケーションがとれているか
- 影響範囲の特定ができているか
などがあげられ、前項の通常業務型の業務改善が決まったスケジュールで過去の事例などから比較的「選択」して意思決定をしていくのに対して、プロジェクト型の業務改善は「フリーハンドで描く」ことも多々あるため、全く違った機能、全く違った働き方、全く違った能力、がそれぞれ求められるます。どちらが重要か、ではなく企業や営業組織の状態に応じて適切なバランスをとりながら進めることが求められます。
通常業務型の改善とプロジェクト型の改善のバランス
特に、営業が好調な時こそ、通常業務型の改善の必要性は低くなるため、そういうタイミングで、いかにプロジェクト型の全体改善を多く、深く、確実に、走らせることができるかなどが求められるます。このあたりに関しては営業企画全体をマネジメントする人物(部長やマネージャー格)が適切な課題に対して、適切なリソースを充当して行く必要があります。
逆に、営業が不調なタイミングであればあるほど、通常業務型の改善に加えて、組織コンディションが悪くなることなどが加味されて、大鉈をふるうために、プロジェクト型の業務改善を営業企画に求められる傾向が強いように思います。しかしそういうタイミングで無計画に走らせたプロジェクトは、準備不足、リソース不足の影響で多くが失敗したり、当初想定していたクオリティを担保できずに終わる傾向にあるため、営業企画をマネジメントする層においては、現状どの程度の改善をどの程度のリソースで実施していくかの差配が大きなミッションの一つであると言えるでしょう。
営業企画を意識するだけで、結果は変わります。お伝えした内容を、次の商談や日々の行動に落とし込んでいきましょう。
「どこを直すか」を、気合ではなく数字で特定する
改善(Act)でいちばん多い失敗は、「もっと頑張ろう」で終わることです。先に「数字を見ながら施策を設計する」と述べたとおり、改善の出発点は精神論ではなく、どこが詰まっているかの特定です。
やり方はシンプルで、営業プロセスを段階に割り、各段階の転換率を並べます。たとえば「リード獲得→商談化→提案→受注」と分け、それぞれの通過率を出します。すると、商談化率は高いのに提案から受注への転換だけが極端に低い、といった具合に、ボトルネックが一箇所に浮かび上がります。全体の受注数だけを見て「今月は悪かった」と嘆くのと、「提案後のクロージングだけが落ちている」と特定するのとでは、次の打ち手の精度がまるで違います。改善対象を一点に絞れれば、そこにリソースを集中できます。逆に絞れないまま「全部テコ入れ」に走ると、力が分散して何も動きません。改善の第一歩は、直す場所を一つに定めることです。
定番の打ち手──「見える化・属人化解消・ムダ取り」
直す場所が決まったら、次は打ち手です。営業改善の打ち手は無数にあるように見えて、実は三つの型に集約できます。
一つ目は見える化です。誰がどの案件をどこまで進めているか、SFAやCRM、あるいは共有シート一枚でもいいので、商談の状態を全員が見える状態にします。見えないものは改善できません。二つ目は属人化の解消です。トップ営業だけが持っている勝ちパターン――刺さるトーク、使う資料、詰まったときの切り返し――を言語化し、チームの共有資産に変えます。個人の職人技を、組織の再現可能な型にしていく作業です。三つ目はムダ取りです。営業が商談以外に費やしている時間――報告書作成、二重入力、社内調整――を洗い出し、削るか自動化します。商談時間そのものを増やすのが狙いです。
先に挙げた「成功事例の共有でコンバージョンを上げる」は二つ目の属人化解消の一例ですし、「システム化の検討」は一つ目と三つ目にまたがります。派手な新施策を考える前に、この三つの型のどれで攻めるかを決めると、打ち手が地に足のついたものになります。
受注管理の仕組み化について知見を広げたい方はこちら。属人化を減らし、案件を取りこぼさなくなります。
→ クラウドの受注管理システムでできること|機能表の先を読む──クラウドの利点、定着する運用、つないで効く一元化
営業企画がなくても、Aは個人で回せる
この記事の前半では営業企画という組織の視点で改善を語りましたが、専任の企画部門がない会社のほうが多数派です。だとしても、改善は一人でも回せます。むしろ自分の担当領域を、自分専属の営業企画として運営する感覚を持てると、成長の速度が変わります。
やることは、組織の月次改善をそのまま個人スケールに縮めるだけです。月末に自分の商談ログを見返し、「続けること・やめること・変えること」を三つの箱に仕分けます。今月うまくいったアプローチは続ける、手応えのなかった動きはやめる、微妙だったものは変えて来月試します。これを毎月やるだけで、自分の営業スタイルが放置されず、少しずつ更新されていきます。ポイントは、振り返りを「気分」ではなく「記録」に基づいて行うことです。記憶は都合よく書き換わりますが、商談の件数や結果のログは嘘をつきません。組織の改善が数字を土台にするのと同じで、個人の改善も自分の記録を土台にします。専任部署の号令を待たずに、明日から自分のPDCAのAを回し始められます。
営業企画の設計について知見を広げたい方はこちら。場当たりでなく、勝ち筋を設計できます。
→ 「営業のPDCAを確実に高速で回す」営業企画の「Plan(設計)」のお仕事とは|設計という仕事の輪郭──マーケとの違い、目標のつくり方、そして必要な力
そもそも、その「改善」は次の計画を書き換えているか
ここまで直す場所の見つけ方、打ち手、個人での回し方を見てきました。最後に、PDCAの「A」という営みそのものを、少し引いて問い直してみたいと思います。
PDCAという言葉は誰もが知っていますが、四文字のうち最も痩せ細りやすいのが、実はこのA(Act=改善)です。多くの現場で、Aは「振り返り」の名のもとに反省会へと縮み、「次は気をつけよう」という感想を残して解散します。そして翌月、また同じ計画(P)が何事もなかったように始まります。ここに決定的な断絶があります。改善が本当に機能しているかどうかは、回す速度でも、振り返りの丁寧さでもありません。そのAが、次のP=計画を実際に書き換えているか。この一点に尽きます。今月の学びが来月の計画に一行も反映されていないなら、それは改善ではなく、ただの反省です。
さらにもう一段、踏み込んでおきたいことがあります。改善には、性質の異なる二種類があるということです。一つは、計画の枠の中での微調整――目標は正しいという前提で、やり方を少し変える改善です。もう一つは、計画の前提そのものを疑う改善――「そもそもこの目標設定や戦略が間違っていたのではないか」と問い、Planごと捨てにいく改善です。厄介なのは、ほとんどの組織が前者しかやらないことです。設定された目標は動かせないものとして扱い、その内側でしか手を打ちません。しかし市場が速く動くとき、本当に効くのは後者、つまり計画の前提を壊す勇気のほうです。先に「フリーハンドで描く」プロジェクト型の改善と呼んだものは、本来この後者を担うはずのものでした。ところが現実には、それすら定常改善の延長に飲み込まれ、前提を問い直すところまで届かないことが多いのです。
だから、改善を回すときに一度だけ自分に問いたいのです。自分がいまやっているのは、決められた計画の中を上手に走る改善なのか、それとも計画そのものが間違っていないかを疑う改善なのか。前者ばかりを速く回しても、間違った方向へ効率的に進むだけになりかねません。速く回すことより、時々立ち止まって「そもそもこの計画でよかったのか」を問える組織や個人のほうが、結局は遠くまで行きます。Aとは、計画をなぞる工程ではなく、計画を書き換える権限を持った工程なのだと捉え直したとき、PDCAは初めて回り始めます。
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