「営業」に関する5つの数字を知ることで変わる採用効率と採用戦略|営業側の数字の、裏側にある「採用側の数字」──歩留まり・採用単価・定着で効率を測る

採用に携わる人にとって抑えておきたい5つの数字として1.人件費生産性 2.一人当たりの売上高 3.LTV 4.一人当たりの担当社数と一社単価 5.営業KPI があります。これらを知ることで採用効率を変えることや、場合によっては採用戦略そのものが変わる可能性もあります。また現場を知るという近道になりうることも踏まえて、知っておきたい営業の数字です。

「営業」に関する5つの数字を知ることで変わる採用効率と採用戦略

採用に携わる人はスタッフ職なのに対して中途採用で一番採用したいのは営業マンであるということは往々にしてあることです。もちろん現場出身で営業現場を知っている人が採用に携わることができるのであれば、それは一つの理想の形かもしれません。

しかし出身部署に関わらず、多くの候補者と会う機会の多い採用に携わる人は絶対に押さえておきたい「営業」に関する数字があります。例えば自社の「売上」や「従業員数」であれば常日頃、会社説明会などで話したり目にする機会も多く、暗記している人も多いと思いますが、さらに細かい「営業」に関する数字を知っておくことで、採用に関する自分の行動を変える可能性があったり、採用効率に影響を与える可能性があることも知っておく必要が有ります。

採用に携わる人が知っておきたい「営業」に関する数字として下記のようなものがあります。

  • 人件費生産性
  • 一人当たり売上高
  • LTV
  • 一人当たりの担当社数と一社単価
  • 営業KPI

1.人件費生産性

人件費生産性は「売上高/人件費」で算出することができます。これによって求められる値をわかりやすく言うと、「人件費1円かけることにより、どれぐらいの売上期待を持てるか」という数値になります。業界によって大きく異なりますが、特に人件費生産性が経営指標に取り上げられやすい労働集約型ビジネスにおいては、2以下だと極めて低く、4〜5が平均値、7以上になるとかなり効率的であると言えます。

人件費生産性を知ることによって、候補者に対する年収提示額から期待売上を算出することができます。例えば人件費生産性が5の企業において、年収500万の人を採用するということは、年間で2500万以上の売上を期待できない以上は営業組織の効率を悪くなる採用をしようとしているということになります。

もちろん企業には、効率ではなく絶対額を追い求めるようなフェーズもありますので、人件費生産性が悪化するような採用は直ちに悪であるとはもちろん言えません。ただし売上伸長率が鈍化傾向にあったり、縮小フェーズにあるような場合は効率が問われる場面になりますので、そういった場面における採用においては参考にしたい指標になります。

2.一人当たり売上高

1の人件費生産性が人件費換算で効率性を確認する指標なのに対して「一人当たり売上高」は、人数換算での効率を求める指標であり「売上高/従業員数」で算出することができます。一人当たり売上高については、入社年次ごとに大きな差を生む傾向にあります。もちろん年次が上がるごとに数値が大きくなります。

従って全体の数値を知ることも大切ですが、各年次や年次セグメント毎(入社1年目〜2年目、入社3年目〜5年目、入社6年目以上)ごとにどのような変化をするかを抑え、自社においては営業マンとして一番責任がジャンプアップするのがどのタイミングかということを知る上で大切な指標となります。

3.LTV(Life Time Value)

LTV(Life Time Value)とは一顧客がもたらす価値、つまり取引期間における生涯取引額となります。取引期間が平均3年継続し、一年あたりの取引額が平均100万円であれば、LTVは300万円となります。

なぜこれを採用担当として知る必要があるかというと、新規営業の規模感を知るために一番想像しやすい数字だからです。もちろん事業全体の数字や営業一人担当の目標額も、規模を知るためには有効な数字と言えます。しかしそこに営業貢献がどれほどあるのかということを想像するのは少し難しいかもしれません。

しかしLTVは一社の新規開拓を実現した時に営業がどれだけ貢献したかを想像するに一番適した数値です。新規をあげるということは紛れもない営業マンの貢献です。特に新規中心の営業マンの採用の場面であれば、候補者に対する期待値。

ただし取引が終わるタイミングがわからないと個社個社のLTVを測定することはできないですし、受注のタイミングで評価する営業マンの評価指標としては全く適しているとは言えないため、実際の評価指標として導入することは極めて困難です。あくまでも自社の営業マンの期待値を想像するために適切な指標にとどまります。

4.担当社数と一社単価

中途採用する際に候補者から、現職で担当している担当社数とだいたいの取引単価を聞き出すことができるとしたらどうでしょうか?もちろん扱う商材やビジネスモデルによって、担当社数も一社単価も大きく異なるでしょう。しかし、少なくとも自社の営業マンの一人当たりの担当社数と一社単価を知っていれば、社数が増えるのか減るのか、単価が上がるのか下がるのかを把握することはできます。

入社後に、どのようなクライアント群を担当するかによっても大きく異なるという点を差し引いたとしても、前職からの変化点を候補者に具体的に伝えることができるというのは、面接する側にとってもされる側にとっても、働くイメージをつけやすいのではないでしょうか?

5.営業KPI

営業KPIとしてどのような指標が採用されているかを知っている採用担当がどれほどいるでしょうか?KPIを行動指標においているケースもありますし、行動以外のプロセス指標においているケースもあります。なぜ営業KPIを採用担当が抑える必要があるかというと、受注量を担保するために、追うべき指標であるからです。

追うべき指標ということはもちろん、日々の営業行動が営業KPIに集約されていると言っても過言ではありません。例えば営業現場経験のない採用担当であったとしても、KPIを抑え、かつ横目で営業を見ていれば、現場の営業マンがどのような働き方をしているかということを想像するのは比較的簡単ではないでしょうか?

訪問量などの行動量を最重要KPIと置いている営業組織と、例えば顧客あたりの◯◯導入率を営業KPIとおいている営業組織では、当然求められる営業行動は異なります。また候補者が今現在の職場で追いかけている営業KPIを聞き出すことができるのであれば、それとの比較でどれほど現業務との乖離があるのかということを想像するのにも役立つといえるでしょう。

営業の現場では、営業への理解が成果を大きく左右します。本記事で紹介したポイントを振り返り、明日からの業務に少しずつ取り入れていきましょう。

採用そのものの効率は、「歩留まり」で見える化する

ここまでに挙げた五つは、いわば「採る相手=営業」を理解するための数字でした。ここからは視点を裏返し、「採る側=採用活動そのもの」の効率を測る数字を補います。営業がKPIで自分の商談を管理するのと、まったく同じ発想です。

採用活動は一本のファネルです。母集団(応募)→書類選考通過→一次面接通過→最終面接通過→内定→内定承諾、と段階ごとに人が絞られていきます。各段階の「通過率=歩留まり」を出すと、自社の採用のどこで人が漏れているのかが一目で分かります。たとえば応募は十分に集まるのに書類通過が極端に低いなら、求人票と応募者の期待がずれています。面接まで進むのに内定承諾で逃げられるなら、条件提示か動機づけに穴があります。営業で「商談化率は高いのに受注率が低い」と原因を切り分けるのと、構造は完全に同じです。全体の採用人数だけを見ていると「今年は採れなかった」で終わりますが、歩留まりに分解すると「詰まっている工程」が特定でき、打ち手が具体になります。

※著者の体験

採用活動を一本のファネルとして歩留まりで見る、というのは、転職エージェントを約5年やっていた頃、まさに毎日見ていた景色そのものです。

支援先の企業を見ていて多かったのが、「今年は採れなかった」で終わってしまうパターンでした。ある採用支援先(従業員200名ほどのIT企業)は、応募は月◯件と十分に集まるのに書類通過率が8%と極端に低かった。全体の採用人数だけ見ていた頃は原因が分からなかったのですが、母集団→書類通過→一次通過→最終通過→内定→承諾と段階ごとに歩留まりを並べた瞬間、詰まっているのは書類選考の一箇所だけだと一目で分かりました。要は、求人票が求める像と、集まっている応募者の期待がずれていたんです。

これは営業で「商談化率は高いのに受注率が低い」と原因を切り分けるのと、構造が完全に同じでした。求人票の要件と訴求を書き直しただけで、書類通過率が◯%まで改善した。全体人数を嘆くのではなく、どの工程で人が漏れているかに分解すると打ち手が具体になる——採る側とあっせんする側の両方から、この「歩留まりで見る」効き目を数えきれないほど見てきました。

一人採るのに、いくらかかっているか──採用単価とチャネル効率

もう一つ、効率を語るうえで欠かせないのが採用単価です。採用にかかった総コスト(媒体費・エージェント手数料・人件費など)を、実際に採用できた人数で割ります。営業でいう顧客獲得コストの、採用版だと考えてください。

この数字が効いてくるのは、チャネル別に分けたときです。求人媒体、人材エージェント、社員紹介(リファラル)、ダイレクトスカウト──どの経路から採った人が、いくらかかっているか。多くの場合、リファラルは単価が安く定着も良い一方で数が読めず、エージェントは単価が高いが即戦力に届きやすい、といった傾向が見えてきます。ここを把握しておくと、「とにかく媒体に出す」から「安く質の高い経路に予算を寄せる」へ、採用戦略そのものを組み替えられます。先に「数字を知ると採用戦略が変わる」と述べたのは、まさにこの手触りのことです。単価を経路別に持っているだけで、来期どこに投資するかの判断が、勘から根拠のあるものに変わります。

採って終わりにしない──定着率と「戦力化までの時間」

見落とされがちですが、採用効率の本当の分母は「入社した人数」ではなく「定着して成果を出した人数」です。ここを見ないと、採れているのに組織が強くならない、という事態が起きます。

追うべきは二つです。一つは定着率、とりわけ早期離職率。入社半年・一年でどれだけ辞めているか。せっかく低い単価で採っても、半年で辞められれば、その採用は実質的に赤字です。もう一つは、採用した営業が戦力になるまでの立ち上がり期間です。入社から初受注まで、あるいは目標額を安定して達成するまでにどれくらいかかるか。この期間が長い組織は、採用の問題ではなく受け入れ・育成の問題を抱えています。営業の一人当たり売上高が年次で伸びる、という前半の指摘は、裏を返せば「立ち上がりに何年かける組織か」を語っています。定着率と立ち上がり期間まで含めて初めて、採用の効率は正しく評価できます。歩留まりと単価で「良い採用」に見えても、定着と戦力化で崩れていないか——ここまでを一続きの数字として見る視点が要ります。

※著者の体験

採用効率の本当の分母は「入社した人数」ではなく「定着して成果を出した人数」だ——これは、営業職の転職支援を専門に約5年やってきて、いちばん痛感したことでした。

転職エージェントとして、私は3,000名ほどの面談をして100名超の転職を支援してきましたが、支援した後にどう定着したかまで追いかけると、見え方がまるで変わりました。ある企業は、低い採用単価で採れていると誇っていたのに、私が支援した近い層の営業も含めて半年以内の早期離職が◯割に達していた。安く採れても半年で辞められれば、その採用は実質的に赤字です。逆に、単価は高くても入社から初受注までが平均◯ヶ月と短く、定着も良い会社は、採用が明らかに組織の強さにつながっていました。

そこで採用支援先には、歩留まりと単価だけでなく「早期離職率」と「戦力化までの立ち上がり期間(初受注まで/目標を安定達成するまで)」も必ず追ってもらうようにしました。立ち上がりが長い組織は、採用の問題ではなく受け入れ・育成の問題を抱えている。歩留まりと単価で“良い採用”に見えても、定着と戦力化で崩れていないか——ここまでを一続きの数字で見る視点は、候補者のその後を追える立場にいたからこそ、強く持つようになりました。

そもそも採用は、「平均を効率よく揃える」ゲームなのか

ここまで、歩留まり・単価・定着と、採用を数字で管理する話を重ねてきました。最後に、この数字信仰そのものに、あえて一度ブレーキをかけておきたいと思います。

歩留まり率、採用単価、定着率——これらの指標には、実は共通する性質があります。どれも「平均を、効率よく揃える」ための道具だということです。工程の詰まりを直し、無駄なコストを削り、辞める人を減らします。たしかにこれらは組織の失点を減らします。ところが、営業組織を本当に変えるのは、平均ではなく外れ値です。並の十人ぶんを一人で稼ぐような突出した人材、常識を外れた動きで新しい市場をこじ開ける人です。組織の景色を変えるのは、いつもこの少数の外れ値のほうです。

ここに、数字で管理された採用の落とし穴があります。歩留まりや定着率を最適化する思考は、放っておくと「減点されない、無難な採用」へと現場を誘導します。面接官は、輝いてはいるが読めない候補より、平均点が高く辞めなさそうな候補を通したくなります。数字上はそれが「効率的な採用」だからです。こうして、指標を追えば追うほど、尖った人材は「効率の悪い例外」として静かに弾かれていきます。平均を効率よく揃えるゲームに最適化した組織は、失点は減らせても、ホームランを打つ人を構造的に取りこぼします。

だからこそ、採用の数字を使う人間は、この非対称を自覚しておく必要があります。数字が教えてくれるのは「工程のどこが詰まっているか」までであって、「この一人に賭けるべきか」は決して教えてくれません。前者は効率の問題、後者は見極めと覚悟の問題で、両者は地続きではありません。そして、いま自社が「平均を効率よく揃えるフェーズ」にいるのか、「化ける一人に賭けて跳ねるフェーズ」にいるのかで、数字との付き合い方は正反対になります。守りを固めたい時期には歩留まりと定着を締め、勝負をかける時期には、あえて数字が嫌う外れ値に張ります。採用の数字は強力な道具ですが、それが照らせるのは半分だけです。残りの半分——測れない見極めと賭けの領域——を数字に明け渡さないことが、数字を使いこなす側の条件なのだと思います。

※著者の体験

「採用の数字が照らせるのは半分だけ」という話は、面談を3,000名ほどしてきた中で、何度も突きつけられたことでした。

数えきれない候補者と会ってきて分かったのは、組織の景色を本当に変えるのは平均ではなく外れ値だ、ということです。並の10人ぶんを一人で稼ぐような人、常識を外れた動きで新しい市場をこじ開ける人——こういう人は、たいてい経歴も面接での印象も“読めない”んです。私が支援した中でも、後に事業を化けさせた営業ほど、書類段階や一次面接で「平均点は高くないが、何か引っかかる」と一度は落とされかけていました。

歩留まりや定着率を最適化する思考は、放っておくと「減点されない、無難な採用」へ現場を誘導します。面接官は、輝いているが読めない候補より、辞めなさそうな平均点の高い候補を通したくなる。数字上はそれが“効率的”だからです。だから採用の数字を使うときは、この非対称を自覚しておく必要があります。数字が教えてくれるのは「工程のどこが詰まっているか」までで、「この一人に賭けるべきか」は絶対に教えてくれない。守りを固めたい時期は歩留まりと定着を締め、勝負をかける時期はあえて数字が嫌う外れ値に張る——3,000名を見てきて、測れない見極めと賭けの領域を数字に明け渡してはいけない、と強く思うようになりました。

筆者:店長

営業と、競馬と、しゃべる植物。あっAIも。つい、いろいろ作ってしまう人です。

→ 店長の正体(詳しいプロフィール)

Noteも書いてます

営業を"言語化""構造化"する話を、ゆるめに。

【04】アホほど答えを知りたがるというパワーワード|晴れ時々AI@西新宿

アホほど答えを知りたがるというパワーワード 僕は「具体と抽象」というキーワードを日本で一番使うオトコかもしれない。 「AIを使って商談文字起こしを自動集約するためには、GASが必要」 これを抽象とすると 「Meetの文字起こしがGmailに飛んでくるのを未読のもののみを15分に一回トリガーを動かして、GASでgetFiles()のスクリプトを使って、データ取得する」 これが具体 営業の場面でいうと (抽象) ・ヒアリングは9つのフレームに集約ができる ー因果 ー前後 ー包含 ー並列 ー程度 ー主体 ー判断 ー変化 ー対処 (具体) それってどこでどの程度起きているんです

店長

Xアカウント:@nishi_sales_ai 新卒で大手IT企業に入社し、飛び込み営業から深耕営業、大手企業担当まで第一線で経験を積む(表彰歴多数)。その後、事業企画・営業企画部門で経営に近い立場から営業組織と数字に向き合い、10年勤続を経て独立。営業組織の改善に特化したコンサルタント企業を立ち上げる。 コンサルタントして数々の現場に入りつつ、自ら営業特化の転職エージェントも運営。近年はAIを活用した営業組織の業務改善・生産性向上プロジェクトに携わる。現場の最前線と経営の両方を見てきた視点から、営業3年目前後がぶつかる壁を越えるための実践知を発信する。

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