「営業のPDCAを確実に高速で回す」営業企画の「Plan(設計)」のお仕事とは|設計という仕事の輪郭──マーケとの違い、目標のつくり方、そして必要な力

営業企画とは営業のPDCAを確実にかつ高速でまわすための、横串機能です。いわゆる外回りをして顧客から受注をあげる営業マンとは違います。スタッフ職の扱いで、営業全体の底上げや営業全体の業務改善を、仕組み作りを通して実現しようとする組織および機能です。Vol.1ではPDCAの「P(設計)」にフォーカスをあてて、営業企画のあり方について紹介します。

営業企画とは

営業企画は広義の意味として営業のPDCAを確実にかつ高速で回すための横串機能としての役割を担います。一方で狭義の意味ではP(設計)とA(改善)を担います。ただし企業によって営業企画と言っていたり営業管理や営業推進など様々な名称で様々な役割を担っているため、綺麗に線引きを敷くことは実態としてとても難しいかもしれません。本章では全2パートのうち営業のPDCAの「P(設計)」にフォーカスをあてて、営業企画のあり方について紹介します。

(2017/3/12にVol.2を公開します。Vol.2ではPDCAの「A(改善)」についての説明です。)

営業企画の三機能

営業企画、営業推進、営業管理の三つの要素をあわせて、営業企画機能と差すことが多いです。また一部、経理機能としての請求管理や、システム機能としての受発注システム管理なども含めて、営業企画機能と呼ぶこともあり、これらは企業によって様々な言葉の定義を有しており、各社によって使われ方は様々です。

営業企画という言葉は広義と狭義の二つの意味で用いられ、広義の営業企画は下記3つの「営業企画」「営業推進」「営業管理」の3機能の総合体とイメージしてください。

PDCAサイクルをベースとした各三機能の詳細は下記のようなイメージです

  • 営業企画はPDCAでいう P(設計)とA(改善)
  • 営業推進はD(遂行および遂行のサポート)
  • 営業管理はC(評価)

ただし厳密にこれらの機能が明確に分断されるものではなく、同一人物が全ての機能を担ったり、プロジェクト的に、一つのプロジェクトでPDCAを全て担当するケースも多々ありますので、一つの「理想像、あるべき論」として捉えていただければ幸いです。

営業企画の基本機能は設計と改善

営業企画と聞けば、例えばキャンペーン商品の選定だったり、営業の皆さんが使用する汎用的な企画書をパワーポイントで作ったりということを想像する人も多いのではないでしょうか?それは間違っていはいません。ただ、営業企画が担う機能の全てでも決してありません。もし、それだけしか営業企画の仕事として機能していないのであれば、あなたの会社の営業企画はもっとパワーアップする余地を残しているのかもしれません。

営業機能の設計

営業機能の設計には以下のようなものが含まれます。

(人事機能との連携)

  • 人員計画の策定や、人員配置案の策定、採用要件定義
  • 営業力強化の策定や、新卒や中途の受け入れ態勢の構築、営業力ボトムアップ施策の策定
  • 離職防止策の策定や営業組織のコンディションチェック体制の構築

(経営機能との連携)

  • 事業計画達成のための目標設計
  • 営業管轄の投資コストなどの申請や予実管理
  • 年間売上計画の策定

(営業役職者との連携)

  • 月次目標達成のためのシナリオ作りと承認
  • 事業計画達成のためのシナリオ作り、懸念点と対応策の洗い出し
  • 価格戦略や競合対策に関する設計

(商品機能・購買機能との連携)

  • 売上状況の共有
  • 戦略商品の選定や仕立てに関する議論
  • キャンペーン商品の選定や商品仕入れに伴う情報の共有

などが挙げられます。

もちろんこれらは会社規模はもちろんのこと、業界そのものや、業界内の立ち位置、扱う商品や、対峙するクライアントによって大きく異なるため一概にはいえませんが、共通的な営業企画の基本機能として持ちあせておくことが望ましい項目でもあります。

これら一つ一つは完全に別の業務で、目的も手法も異なります。しかしこれらを営業企画が携わる必要性という意味で共通点を挙げるとすると「短期的、ないしは中長期的な営業組織の業績向上、業績改善」のために、「個別アプローチではなく全体アプローチで」かつ「個別最適ではなく全体最適の観点で」と言った点が挙げられます。それがそのままつまり営業企画という組織・機能が果たすべき役割と言い換えることができるでしょう。

個別ではなく全体

例えば営業企画として、手をつけるべきはどちらの優先順位が高いでしょうか?

  • ハイパフォーマーのサポート
  • ローパフォーマーのボトムアップ

結論は後者のローパフォーマーのボトムアップです。前者について営業企画が主体となって議論する余地があるのだとすれば、

  • 「それが全体の売上に占める影響が大きい」
  • 「個人のサポートではなく、サポート体制の構築そのものの議論」
  • 「全体の生産性改善などに伴う、営業効率化の一環」

などについてであり、営業企画が個別の営業個人の業務をサポートするようなケースはあまりありません。あるとすると、それは「営業事務職や営業サポート職」の業務であり、営業アシスタントや営業サポートと呼ばれる方々の業務に近いと思っていただいて差し支えありません。

営業事務について

一方ローパフォーマーのボトムアップが、営業企画として取り扱うべきテーマであることの理由として

  • 「ローパフォーマー(新人や中途入社者含む)は全体に占める人数が毎年一定規模発生する」
  • 「育成白地・育成余地が多く、ボトムアップができた時の業績インパクトが大きい」
  • 「業務を属人化させずに、仕組みで担保する」

などが挙げられます。特に、三点目の「業務を属人化させずに仕組みで担保する」について次項で少し取り上げたいと思います。

業務を属人化させずに仕組みで担保する

育成、クライアント接点の二つについての課題をお持ちの企業が多いのではないでしょうか。要は、「あのマネージャーの下だったので彼は成長した」「あの営業だったので、これだけの受注をすることができた」などがそれに該当します。また大前提として、業務を属人化させずに標準化させたとて、個人にそれぞれの個性がある以上、パフォーマンスや業績に個人差が生まれるのは当然のことです。

もっと言ってしまえば、全ての業務が標準化された状態とは、まさに機械化された状態のことであり、営業職というものが必要な以上、何でもかんでも標準化、仕組み化できると思うのは、現場を知らない人の驕りです。無理な目標設定はやる気を削ぐだけなのと同じように、実現可能な範囲での「営業業務の標準化・仕組み化」をスコープに置くことは、非常に重要になってきます。

業務の仕組み化を通じた育成

例えば、営業の育成に関しては、様々な育成観点、育成手法があります。あまり一般的に育成という観点で語られることはありませんが、営業業務の標準化そのものが安定的な成果を残すことにつながることも往々にしてあります。業務の仕組み化や標準化が、結果的には営業の育成や早期戦力化、ひいてはミスやトラブルの極小化につながり、安定業務を手に入れるのと同時に、新人営業マンなどの早期育成につながるなどのメリットもあります。これらはまさに、個別ではなく全体に照準を定めた、「営業企画の設計」に当たる業務であり、営業企画の設計精度により、大きな業績影響を与える業務であるといえるでしょう。

営業の現場では、営業企画への理解が成果を大きく左右します。本記事で紹介したポイントを振り返り、明日からの業務に少しずつ取り入れていきましょう。

営業企画・マーケティング・営業推進は、どこで線を引くのか

営業企画の「設計」を理解するうえで、まず混乱しやすい隣接領域との違いをはっきりさせておきます。営業企画、マーケティング、営業推進――言葉は似ていますが、担う工程が違います。

ざっくり言えば、マーケティングは「見込み客を生み出す」役割、営業は「その見込み客に売る」役割、そして営業企画は「営業が売れる仕組みそのものを設計する」役割です。マーケが商談の入り口に水を引き、営業が現場で刈り取り、営業企画は畑全体の設計図を描きます。前半の言葉を借りれば、個別ではなく全体、個別最適ではなく全体最適を担うのが営業企画です。さらにこの記事の前半が三機能として挙げた「営業推進(D=遂行支援)」との違いも押さえておきましょう。営業推進が「決まった計画を現場が実行できるよう支える」実働寄りの機能なのに対し、営業企画の設計(P)は「そもそも何を実行するかを描く」上流の機能です。同じ人が兼ねることも多いですが、頭の使い方は別物で、設計は「決める」仕事、推進は「回す」仕事だと区別しておくと、自分がいまどちらの帽子をかぶっているのかが見えてきます。

「設計」の中核──目標を、絵に描いた餅にしない

設計業務のなかでも背骨にあたるのが、目標の設計です。この記事の前半では業務項目を幅広く列挙しましたが、その多くは最終的に「達成可能で、かつ現場が納得する目標をどう置くか」に集約されます。

目標設計には、二つの流れを擦り合わせる作業が要ります。一つはトップダウン。会社の事業計画から逆算し、「営業全体でこれだけ必要」という総量を割り付ける流れです。もう一つはボトムアップ。現場の営業一人ひとりのキャパシティや既存顧客の積み上げから、「現実的にこれだけ積める」という総量を出す流れです。この二つは、放っておけばほぼ必ずずれます。上から降ってくる数字と、下から積み上がる数字の差――このギャップをどう埋めるかが、設計者の腕の見せどころです。ギャップを現場に丸投げして「気合で埋めろ」とやれば、先にも触れたとおり、無理な目標がやる気を削ぐだけに終わります。逆に、差を埋める施策(新規開拓の強化、単価アップ、離反防止など)をセットで設計して初めて、目標は「数字」から「達成へのシナリオ」に変わります。目標を置くとは、数字を決めることではなく、そこへ至る道筋まで描くことです。

※著者の体験

目標設計はトップダウンとボトムアップの擦り合わせだ、というのは、複数社の営業組織に入って設計を手伝ってきた中で、いちばん事故が起きるポイントでした。

ある支援先(従業員150名ほどのサービス業)では、事業計画から逆算した「全体で前年比120%」というトップダウンの数字と、現場の営業一人ひとりのキャパや既存顧客の積み上げから出した「現実的に積めるのは108%」というボトムアップの数字が、そのまま12ポイントぶんずれていました。よくあるのは、このギャップを現場に丸投げして「気合で埋めろ」とやるパターンで、案の定その会社もそれで前年、目標が絵に描いた餅になって未達に終わっていた。

そこで私がやったのは、その12ポイントのギャップを「新規開拓の強化で◯%、既存の単価アップで◯%、離反防止で◯%」と施策に分解して、差を埋めるシナリオごと設計し直すことでした。すると目標が、ただの「数字」から「達成への道筋」に変わって、現場の納得感がまるで違った。目標を置くとは数字を決めることではなく、そこへ至る道筋まで描くこと——これは、ギャップを放置して未達になる現場を何度も見てきたからこそ、強く思うことです。

設計者に必要な三つの力と、この仕事のキャリア価値

では、こうした設計を担うにはどんな力が要るのでしょうか。大きく三つです。

一つ目は、数字を読む力。実績を分解し、どこに伸びしろがあり、どこが崩れているかを数字から読み解く力です。二つ目は、企画を通す調整力。設計はどれほど正しくても、現場が動かなければ机上の空論です。関係各所を巻き込み、抵抗を減らし、実行にこぎ着ける政治力とも言える力が要ります。三つ目は、抽象化する力。一人の成功事例を、誰でも使える型に抽象化し、仕組みへ落とす力です。個別の出来事から共通の構造を取り出す思考が、設計の土台になります。

営業三年目の読者にとって、営業企画は有力なキャリアの選択肢になります。現場で個人の成果を出す段階から、仕組みで組織全体の成果を動かす段階へ――影響の及ぶ範囲が一気に広がるからです。そして、現場を知っている人ほど、この設計は強くなります。机上で数字をいじるだけの設計は現場に見抜かれますが、営業の痛みを知る人が描く設計には、現場が納得する肌理があります。現場経験は、営業企画で捨てる資産ではなく、最大の武器になる資産です。

※著者の体験

設計者に必要な力のうち、コンサルとして支援に入っていていちばん差が出ると感じるのは、二つ目の「企画を通す調整力」でした。

支援先で、正しい設計が現場で動かず死んでいく場面を何度も見てきました。ある会社では、数字を読む力の高い優秀な企画担当が、分析としては完璧な営業改革案を作っていたのに、現場の営業部長を巻き込む前に「正しいんだから従うべき」と正論で押してしまって、現場がまるで動かなかった。設計はどれだけ正しくても、現場が動かなければ机上の空論なんですよね。

私が入るときにまずやるのも、実は分析より先に「誰を、どの順番で巻き込むか」の設計だったりします。抵抗しそうなキーマンには先に個別で相談を持ちかけ、小さく成功事例を作ってから横に広げる。三つ目の「抽象化する力」——一人の成功事例を誰でも使える型に落とす力——も、結局は現場に降ろして初めて意味を持ちます。私自身、現場で営業をやってから設計側に回った人間なので言えるのですが、机上で数字をいじるだけの設計は現場に一瞬で見抜かれる。営業の痛みを知っている人が描く設計にだけ、現場が納得する肌理が出る——現場経験は、設計者にとって捨てる資産ではなく最大の武器です。

そもそも、仕組みは人を管理する道具なのか、解放する道具なのか

ここまで設計の輪郭を描いてきました。最後に、営業企画の信条である「仕組み化・標準化」そのものを、一度問い直しておきたいと思います。

営業企画は、属人化を敵とみなします。「あの人だから売れた」を「誰でも売れる」に変えるのが使命だからです。この方向性は正しいです。けれど、標準化を突き詰めていくと、ある地点で厄介な副作用が顔を出します。すべてを型にはめた瞬間、営業は「判断する仕事」から「手順をこなす作業」へと痩せていくのです。先に「全部を標準化できると思うのは現場を知らない人の驕り」と一瞬だけ触れていますが、本当に難しいのは、その驕りの手前で立ち止まり、「何を仕組みにして、何を個人に残すか」の線を引くことです。ここが設計の最難関でありながら、最も語られない部分です。

答えは、「仕組みか、属人か」の二択にはありません。優れた設計は二層でできています。下の層に、誰もが使える型を配ります。トークの骨格、提案の手順、つまずいたときの定石です。しかし上の層には、その型をいつ外すか、目の前の相手にどう崩して当てるかという判断を、あえて個人に残します。型を配ることと、型の外し方を委ねることは、矛盾しません。むしろ、型があるからこそ、人は型破りの判断にエネルギーを注げます。ここを取り違えて、判断の余地まで仕組みで塗り潰すと、営業は考えることをやめ、組織は平均的な作業者の集まりになります。

だとすれば、設計者が仕組みを一つ作るたびに自問すべき問いは、たった一つに絞れます。「この仕組みは、営業から時間を奪うのか、それとも時間を返すのか」。悪い仕組みは人を管理し、報告と入力で現場の時間を吸い上げます。良い仕組みは人を解放し、ムダな作業を肩代わりして、人が判断と関係づくりに使える時間を返します。同じ「標準化」という言葉でも、この二つは正反対の結果を生みます。営業企画の設計とは、業務を管理下に置くことではなく、人がいちばん人らしく働ける余白を、仕組みの側から作り出すことなのだと思います。

※著者の体験

「何を仕組みにして、何を個人に残すか」の線引きが設計の最難関だ、という指摘は、営業組織の仕組み化を複数社で手伝ってきて、いちばん痛感していることです。

ある支援先で、標準化を突き詰めるあまり、トークも提案手順も報告フォーマットも全部ガチガチに型にはめた結果、営業が「判断する仕事」から「手順をこなす作業」に痩せてしまった現場を見ました。数字の管理は行き届くのに、現場のエースほど「考える余地がない」と辞めていく。良かれと思った標準化が、判断の余地まで塗り潰してしまっていたんです。

そこから私は、設計を二層で組むようにしました。下の層に誰もが使える型(トークの骨格、提案の手順、つまずいたときの定石)を配り、上の層に「その型をいつ外すか、目の前の相手にどう崩して当てるか」という判断をあえて個人に残す。型を配ることと、型の外し方を委ねることは矛盾しない——むしろ型があるからこそ人は型破りの判断にエネルギーを注げる。だから私が仕組みを一つ作るたびに自問するのは、たった一つ「この仕組みは、営業から時間を奪うのか、それとも時間を返すのか」です。報告と入力で現場の時間を吸い上げる仕組みは人を管理し、ムダな作業を肩代わりして判断と関係づくりの時間を返す仕組みは人を解放する。同じ「標準化」でも正反対の結果になる、というのを現場で思い知りました。

筆者:店長

営業と、競馬と、しゃべる植物。あっAIも。つい、いろいろ作ってしまう人です。

→ 店長の正体(詳しいプロフィール)

Noteも書いてます

営業を"言語化""構造化"する話を、ゆるめに。

【04】アホほど答えを知りたがるというパワーワード|晴れ時々AI@西新宿

アホほど答えを知りたがるというパワーワード 僕は「具体と抽象」というキーワードを日本で一番使うオトコかもしれない。 「AIを使って商談文字起こしを自動集約するためには、GASが必要」 これを抽象とすると 「Meetの文字起こしがGmailに飛んでくるのを未読のもののみを15分に一回トリガーを動かして、GASでgetFiles()のスクリプトを使って、データ取得する」 これが具体 営業の場面でいうと (抽象) ・ヒアリングは9つのフレームに集約ができる ー因果 ー前後 ー包含 ー並列 ー程度 ー主体 ー判断 ー変化 ー対処 (具体) それってどこでどの程度起きているんです

店長

Xアカウント:@nishi_sales_ai 新卒で大手IT企業に入社し、飛び込み営業から深耕営業、大手企業担当まで第一線で経験を積む(表彰歴多数)。その後、事業企画・営業企画部門で経営に近い立場から営業組織と数字に向き合い、10年勤続を経て独立。営業組織の改善に特化したコンサルタント企業を立ち上げる。 コンサルタントして数々の現場に入りつつ、自ら営業特化の転職エージェントも運営。近年はAIを活用した営業組織の業務改善・生産性向上プロジェクトに携わる。現場の最前線と経営の両方を見てきた視点から、営業3年目前後がぶつかる壁を越えるための実践知を発信する。

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