営業を辞めたい時こそ「自分のキャリアの選択肢」を知っておく

営業を辞めたい時こそ「自分のキャリアの選択肢」を知っておく

営業を辞めた後に知っておきたいこととして、自分のキャリアにはどのような選択肢があるのかという点です。営業を経験した後、様々なフィールドで活躍している人がいます。自分自身のゴールを設定し、そこに至るまでのステップを積み上げた時に、営業を経験した後に活躍している人たちを前例とした時に、どのような人が自分自身が描くキャリアと近似値であるかということは、営業を辞めるタイミングで知っておいたほうが良いことと言えるでしょう。

営業マンを辞める時に知っておきたいこと

転職サイトのtypeがtype会員の営業マンに向けて実施した営業職のキャリア意識調査において営業職の継続意向について設問が設けられております。この調査結果では29歳以下の営業マンの33.9%がこれから先も営業マンを続けたいと思うと回答したのに対して、30〜39歳の営業マンでは同37.4%、40歳以上の営業マンにおいては同57.9%と、30歳から40歳の間らへんに営業職として全うしていきたいかどうかという分かれ目が存在するような印象があり、特に若い営業マンにとっては営業を続けるかどうか点において比較的多数の人が、別のキャリアについて考え始めているという実態を伺うことができます。

営業マンを辞めるというタイミングで知っておかねばならないこととして、下記のようなことがあります。

自分のキャリアの選択肢

自分の営業マンとしての市場価値

自分の営業マン以外の職種での市場価値

このページでは特に1点目の自分のキャリアの選択肢について解説しています。

自分のキャリアの選択肢

何年間、どのような業界で営業マンをしていたかにもよりますが、自分のキャリアの選択肢としてどのようなものがそもそもあるのかということは知っておかねばならない重要なことの一つです。もしかしたら、今感情的に「辞める」という気持ちが湧き上がり、自分自身が営業を辞めることについての正当性や理由を探している可能性もあります

もちろん勢いで決めたことが、たまたまタイミングよく決断したというふうによい方向に転がる可能性もあるため、必ずしも検討に検討を重ね、迷いに迷った上で決断することが必ずしもよい結果につながるとは限りません。しかし、もし「辞める」と決断するまでの間に時間的な猶予があるのであれば、ぜひこれから先の自分のキャリアにどのような選択肢がそもそもあるのかということは知っておいた方がよいと言えるでしょう。

キャリアについての選択肢ですので、必ずしも次の転職先だけを指す言葉ではありません。例えば定年までという不確かな時間軸で考えることができなかったとしても、少なくとも3年先や5年先ぐらいの時間軸での自分のキャリア形成についての選択肢として、他の人がどのようなステップでどのようなスキルを積んで、どのようなキャリアを築いている前例があるのかという点は、色々な人の話を聞いて知っておいた方がベターと言えます。

ゴールをイメージする

例えば明確なゴールがあったり、明確じゃなくてもこんなふうになっていたいと思う姿があるのであれば、ぜひ「いつまでに」そのようになっていたのかということを想像してみてください。

人によっては定年後という人もいるでしょうし、40歳頃にキャリアハイを持ってくるということでイメージする人もいます。そんなに先のことはわからないという人は3年後や5年後ぐらいの姿でも構いません。それでも想像ができない人は3歳上や5歳上の知人や会社の先輩に目を向けてみましょう。どのような人になっていることが理想でしょうか。またその中でギリギリ自分がイメージつくのはどういったキャリアでしょうか。

実際には3年後や5年後にゴールを迎えるわけではなく、その先にも自分のキャリアはずっと続くのですが、まず自分が想像できる範囲で構わないので、できる限り多くのサンプルを出して、自分の中のゴールイメージを持ちましょう。ポイントとしては「仕事内容」「働き方」「給与」「社会的地位や役職」「業界」などを切り口として、それぞれの切り口における自分のゴールイメージが具体化できれば、そのゴールは比較的明確なものと言えるでしょう。

次のステップとしては、そのゴールイメージが世の中に存在するかどうかという点です。自分で考えることは自由ですが、そもそも受け皿となる職業や仕事が存在しない限りは、そのキャリアの実現は極めて困難なものになります。 また存在したとしても就職偏差値などの言葉があるように、現実的に入れる企業と入れない企業というものが存在します。あくまでも理想形でありつつリアリティ高く、努力の成果に応じて実現可能性が高いゴールを知ることが大切です。

ステップで積み上げる

もしゴールそのものをイメージすることができなかったとしても、どれぐらいの期間、どのような業務に従事すればその対価として、給与や役職、働き方の自由度などをどのレベルまで手にいれることができるかを知り、ステップごとに積み重ねることが必要です。

例えば、営業マンであるあなたが、2年間Webマーケターとして集客の知識を積み、その後2年間営業企画として営業組織の底上げの仕組みについて如何なく実力を発揮した後、1年間現場で営業の組織長を経験したとすると、その時の給与イメージはどのようなものでしょうか。

その時の営業の組織長としての業務内容はどのようなものになるのでしょうか。また裁量や権限として自分に与えられているものはどのような範疇のモノと想像できるでしょうか。このように自分が想像しうるステップを積み重ねた時に、前例も含めてどのレベルのビジネスマンとなりうるのか、ということをステップを積み重ねることで仮の姿を描くことで、先述したリアリティを高めることが大切です。

選択肢は「逃げ道」ではなく「主導権」——持つほど、辞めずに済むこともある

ある調査では、営業を続けたいと答えた人の割合は、29歳以下で33.9%、40歳以上では57.9%と、年齢が上がるほど高くなります。裏を返せば、若い営業ほど、別のキャリアを考え始めている人が多いということでしょう。

ただ、ここで気をつけたいことがあります。「辞めたい」という気持ちが先に立つと、人は無意識に、辞める正当性をあとから探し始めます。そうなると、見えるのは「辞める理由」ばかりで、選択肢そのものは増えません。ここで効くのが、交渉の世界でいう「BATNA(バトナ)」という考え方です。これは「相手と合意できなかったときの、最善の代替案」のこと。キャリアに引きつけると、今の会社を離れることになっても取れる選択肢を、複数持っておくということです。

不思議なもので、この選択肢を持つと、それは逃げ道ではなく主導権に変わります。いつでも動ける状態にあるからこそ、今の会社で無理に我慢する必要も、感情に任せて飛び出す必要もなくなる。辞めるための準備が、結果として「辞めずに、ここで戦う」という余裕まで生んでくれるのではないでしょうか。

※著者の体験

5年間、転職エージェントを運営し3000名ほどの面談のご対応をさせていただきました。印象に残っているのは、いつも冷静に「今の会社に残る」という決断をしていた営業マンたちの共通点でした。彼らの多くは、実は転職活動を並行して進めており、内定を持った状態で最終的に残留を選んでいました。ある製造業向けの営業をしていた方は「内定が出た瞬間、上司との交渉の仕方が変わった。辞める気はなかったが、いつでも動けると分かった状態で臨む面談は、それまでと全く違った」と話していました。実際に、私が担当した候補者の中で、選択肢を複数持った状態で意思決定した人ほど、その後のキャリアの納得度が高かった、という肌感覚があります。

ゴールは「描く」より、他人の“経路”から逆算する

とはいえ、なりたい姿を最初から明確に描ける人は多くありません。そんなときは、3歳上、5歳上の先輩や知人を、できるだけ多くサンプリングしてみてください。仕事内容、働き方、給与、役職、業界。こうした切り口で「この人のここは理想に近い」と思える人を複数集めると、ぼんやりしたゴールが少しずつ輪郭を持ち始めます。

ここで一つ、大事な注意点があります。前例を見るとき、その人の「結果」だけを見ても真似はできません。肩書きや年収は、いわば到達点の写真です。本当に聞くべきは、そこに至るまでの「経路」のほうでしょう。どのスキルを、どの順番で積んだのか。どこで何を捨てる判断をしたのか。たとえば、2年間Webマーケティングで集客を学び、次の2年で営業企画として組織の仕組みづくりに関わり、その後に現場の組織長を経験する。こうした積み上げの順番と、各段階で得られた給与や裁量をセットで聞けたとき、前例は初めて、自分が歩ける地図になります。結果は飾れますが、経路は再現の手がかりになるのです。

※著者の体験

営業マンの転職相談に乗ってきた中で、最も再現性が高かったのは「結果ではなく経路を聞きに行った人」でした。ある人材業界出身の営業の方は、転職を考え始めたとき、社内の5歳上の先輩に「あなたの今の役職や年収ではなく、この5年間、何をどの順番でやってきたか」を直接聞きに行ったそうです。「最初の2年は数字だけ追っていたが、3年目から営業企画に異動願いを出し、そこで初めて『仕組みを作る側』の視点を持てた」という先輩の話を聞き、その順番をそのまま自分のキャリア設計に取り入れていました。結果だけを見て「あの人みたいになりたい」と言っていた人よりも、経路を聞きに行った人の方が、後から振り返ると迷いなく次の一歩を選べていた印象があります。

まとめると——「選択肢を広げる」は、辞める前の今日から始められる

選択肢を増やすのに、退職は必要ありません。今日から始められることばかりです。営業で身についた移転可能なスキル、つまり相手の課題を引き出すヒアリング、論点を立てる課題設定、数字を読む力、人を巻き込む力を、一度棚卸しして言葉にしておく。少し上の世代の経路を複数の人から聞く。社外の人にも意識して会ってみる。

これらは一見、辞めるための準備に見えて、その実、「どこでも通用する状態」を自分の中につくる作業です。そしてその状態に立てたとき、「営業を辞めたい」という漠然とした衝動は、「いつでも動けるけれど、今はここで力を尽くす」という、自分で選んだ前向きな構えへと変わっていくのではないでしょうか。選択肢を持つ人だけが、自分のキャリアの主導権を、他人や勢いに渡さずにいられるのです。

営業の現場では、営業への理解が成果を大きく左右します。本記事で紹介したポイントを振り返り、明日からの業務に少しずつ取り入れていきましょう。

※著者の体験

エージェントとして支援する中で、営業出身で他業種に転職して活躍していた方に共通して聞かれたのが、「現場にいるうちに、自分のスキルを一度言葉にしていた」という点でした。あるIT業界向けの法人営業だった方は、辞める1年以上前から「自分がやっているのは、結局ヒアリングと課題設定と数字の管理だ」と自分なりに整理していたと言います。実際に転職活動が始まってからではなく、現場にいる段階でこの棚卸しを済ませていた人ほど、面談での説明にも迷いがなく、結果的に選考の通過スピードも早い傾向がありました。現場を離れる前に、現場での経験を言葉にしておくことの価値を、支援する立場から何度も実感しています。

筆者:店長

営業と、競馬と、しゃべる植物。あっAIも。つい、いろいろ作ってしまう人です。

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店長

Xアカウント:@nishi_sales_ai 新卒で大手IT企業に入社し、飛び込み営業から深耕営業、大手企業担当まで第一線で経験を積む(表彰歴多数)。その後、事業企画・営業企画部門で経営に近い立場から営業組織と数字に向き合い、10年勤続を経て独立。営業組織の改善に特化したコンサルタント企業を立ち上げる。 コンサルタントして数々の現場に入りつつ、自ら営業特化の転職エージェントも運営。近年はAIを活用した営業組織の業務改善・生産性向上プロジェクトに携わる。現場の最前線と経営の両方を見てきた視点から、営業3年目前後がぶつかる壁を越えるための実践知を発信する。

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