できる営業マンは「価値」を売る!|定義した価値を、売上に変える──伝え方・価格の壁・証明のしかた

できる営業マンは「価値」を売ります。どういうこと?と思う方は多いかと思います。今回は、様々な例を用いながらできる営業マンが実践している「価値を売る」というテクニックについて紹介します。

モノやサービスではなく、価値を売る

商品が持つスペックと価値について

あなたはあなたが扱う商品について細かなスペックを伝えることができる営業マンでしょうか?車の販売で例えると、排気量や燃費、カラーバリエーションや性能、揃えるべきオプションについてあなたは知識を持っているでしょうか? 人材紹介の営業マンであれば自社がストックしている人材がどのようなスペックのどのような職歴で、どのような転職思考を持った人がいるのか、ということについて熟知しているでしょうか?

これらは営業や販売をする上で、当然知っておかねばならない知識です。

しかしそれだけでは不足しているのもまた事実であって、例えば排気量が3500CCであるということがどのような価値を提供できるのかということについてあなたは考えたことがあるでしょうか?カラーバリエーションが白と黒だけではなく5色であること、またはストック人材が10名でなはく100名いることの価値とはなんでしょうか?

提供価値の事例

ハイヒールを持っていないという女性は少ないように思います。ハイヒールは「足を長く見せる」という価値を提供してくれるので、多くの女性はあえて履きにくい選択肢を選択しているわけです。10センチそのものというスペックそのものに価値はありません。自分自身が美しく見えるということであったり、フォルムがかわいい、ということに価値があるのです。

他にも、タバコに何ミリのタールが含まれているのかというスペックで人はタバコを吸うわけではありません。そこに着火し一服して心を休ませる、休憩する、リフレッシュする、おいしいお酒のお供にする。という価値に安くないお金を払っているのではないでしょうか。

通信に関しても上り速度下り速度そのもののスペックに価値があるのではなく、ストレスなく快適にネットワークに接続できることが価値であり、ワンボックス車の価値は排気量でも大きさでもなく、幼い子供がいる4人家族が車を通じて得る体験に価値があるのです。

提供価値を定義し、言語化する

そう考えた時に、あなたが扱うその商品における価値とはなんでしょうか?どこの誰がその商品を通じて、今までになかった体験をすることができるのでしょうか?そしてあなたはその価値について、クライアントと共有することができているでしょうか? 「売りたい」気持ちの前に、自分が商品を通じてクライアントに対して提供していきたい価値について、売れる営業マンは必ず定義し言語化できるようになれば、きっとあなたの受注目標についての難易度の感じ方も異なってくるように思います。

価値を考える際の主語が「クライアント」のケース

クライアントの立場にたって考えてみる

あなたが売ろうとしている商品の価値について考える時に、クライアントが対象となっているケースはそんなに難しいことではありません。目の前にいるクライアントにとって、この商品がどのような利用方法があり、それによりクライアントはどんな体験をし、今と使用後でどのように変わるのか、またそれらが競合商品が与えうる価値とどのように異なるのか。これらについて考えればよいだけです。

とりあえず提供できそうな価値について数をたくさん出す

価値の言語化について難しいと感じる時は、とりあえず一つ一つの価値が本当の価値かどうか、ということは一旦無視して、とりあえずどんなに些細なことでも構わないので数を出すことです。例えば、この商品を利用することで「今までの支払い額よりも下がるために従業員の給与が増えてみんなhappy!」「今まで4つの画面を遷移しないと終わらなかった仕事が2つの画面遷移で終わるから、新人やアルバイトでもすぐに使える」などの本当に簡単なことで構いません。とりあえず数を出してみることです

フレームワークにそって出してみる

例えば有名なフレームワークであるマーケティングの4Pに例えると、場所や物流でどのような価値を生み出す可能性があるか、価格でどのような価値を生み出す可能性があるか、広告や広報やブランディングにおいては?

もしくは経営資源という観点で、「ヒト」という経営リソースに対してどのような価値を生むか、「モノ(アセット)」という経営リソースに対しては?「カネ」という経営リソースに対しては?「情報」だったら・・・などと自分が知っているフレームワークに落とし込んでみると、今まで違った価値の提供観点が生まれるかもしれません。

価値を考える際の主語が「クライアントのクライアント」のケース

エンドユーザーにとっての利用価値まで踏み込んで考える

例えばあなたが扱っている商品が福利厚生系の商品の場合、面と向かって対峙しているクライアントは人事部の福利厚生担当者かもしれません。ただし、福利厚生担当者が何を考えているかの観点で物事を考えてみると、彼が考えているのは「従業員の福利厚生を費用対効果を高めること」であり、彼にとってのクライアントはまさに自社の従業員となります。

そうした場合にあなたが考えるべき商品の利用価値は、福利厚生担当者にとっての価値ではなく、クライアントのクライアントであるエンドユーザー、つまり従業員に言及したものとなるはずです

おそらく福利厚生担当者の利用価値だけを考えて、それについて一生懸命クライアントに伝えたところで、あなたにとって有利な判断をもたらすことはないでしょう。つまり、営業マンは、常にエンドユーザーがどういった対象で、どういったことに困りうる存在なのかということを考え、特に価値提供の言語化を検討する場面においては重要な要素の一つになることを忘れてはなりません。

今回の内容を意識するだけで、結果は変わります。お伝えした内容を、次の商談や日々の行動に落とし込んでいきましょう。

言語化した価値を、「伝わる」形に翻訳する

価値を定義し、言葉にできました。ここまでで大きな一歩ですが、定義した価値は、そのまま口にしても相手には届きません。自分の中で整理した価値を、相手に「伝わる」形へもう一段翻訳する必要があります。

翻訳のコツは三つです。一つ目は、ビフォーとアフターの差分で語ることです。「この機能があります」ではなく、「今は四つの画面を行き来している作業が、導入後は二画面で終わります」と、相手の現状と、変わった後を並べて見せます。価値は、変化の幅として提示されたときにいちばん伝わります。二つ目は、できる限り数字に翻訳することです。「効率が上がります」を「一件あたりの処理時間が十分から三分になります」に変えます。抽象的な良さは記憶に残りませんが、数字は残ります。三つ目は、相手の業務の言葉に置き換えることです。先ほどのハイヒールやタバコの例と同じで、「排気量三五〇〇cc」ではなく「高速の合流でも家族を不安にさせない余裕」と、相手が実際に体験する場面の言葉にします。スペックを、相手の日常のどの瞬間に効くかまで降ろして初めて、価値は相手の中で像を結びます。定義するのは自分のため、翻訳するのは相手のためです。

※著者の体験

価値を「伝わる」形に翻訳する、という話で真っ先に思い出すのが、ある支援先(仮にIT系、従業員◯人規模)で見た西野さんという営業です。

西野さんの商談に同行したとき、彼は自社ツールのスペックをほとんど語りませんでした。代わりに「今、御社は月◯件の申込書を手入力で回していますよね。導入後は、その入力が◯分から◯分になります」と、必ずビフォーとアフターの差分で、しかも数字に落として話していた。「効率が上がります」とは一度も言わないんです。さらに感心したのは、相手が経理担当なら経理の言葉で、現場担当なら現場の言葉で、同じ機能を毎回言い換えていたことでした。

その営業部の平均受注率が15%だった中で、西野さん一人は35%。「定義するのは自分のため、翻訳するのは相手のため、って分けてるんです」と。価値は変化の幅として、相手の日常の言葉に降ろして初めて像を結ぶ——教科書どおりのことを、彼は自然にやっていました。

「高い」と言われたら、価値に立ち返る

価値を売るという構えが最も試されるのが、価格の話になった瞬間です。「ちょっと高いですね」と言われたとき、反射的に値引きへ向かうか、価値へ立ち返れるか。ここで営業の地力が出ます。

「高い」という言葉は、多くの場合「価格が高い」のではなく、「払う額に対して、得られる価値が見合うと腹落ちしていない」というサインです。だから、価格を下げる前にやるべきは、価値をもう一度、しかも今度はお金の言葉で示すことです。「この投資で、御社は年間およそ二百万円ぶんの残業を減らせます。費用はその半分以下です」と、価値を金額に換算して天秤にかけます。価値が価格を上回っていると相手が納得すれば、同じ金額が「高い」から「むしろ安い」に変わります。逆に、価値の話を飛ばして値引きで応じると、相手の頭には「この商品は値切れる程度のもの」という印象が残り、次回もそこから交渉が始まります。値引きは価値を目減りさせ、価値の再提示は価格を正当化します。価格の壁にぶつかったときこそ、スペックでも値段でもなく、価値に戻ります。これが「価値を売る」の実戦での意味です。

※著者の体験

「高いですね」と言われた瞬間に営業の地力が出る、というのは、支援先で河田さんという営業を見ていて痛感しました。

河田さんが担当していたある案件(提案金額180万円)で、客先から「ちょっと高い」と言われた場面に同席したのですが、彼は反射的に値引きへ向かいませんでした。代わりに「この投資で、御社は年間およそ◯万円ぶんの残業を減らせます。費用はその半分以下です」と、価値をお金の言葉に換算して天秤にかけ直した。結果、同じ金額が「高い」から「むしろ安い」に相手の中で変わって、値引きゼロで受注していました。

対照的だったのが同じチームの別の営業で、「高い」と言われるとすぐ値引きで応じるので、その客先は次回も値引き前提から交渉が始まっていました。「高い」は価格が高いんじゃなくて、価値が見合うと腹落ちしていないサインだ——河田さんのこの一手を見て、値引きは価値を目減りさせ、価値の再提示は価格を正当化する、というのを現場で確信しました。

価値は、主張ではなく「証明」で伝わる

もう一つ、見落とされがちな点があります。どれだけ価値をうまく言語化しても、それを営業が口で言っている限り、相手はどこかで割り引いて聞きます。売り手が「価値があります」と言うのは当たり前だからです。価値は、主張ではなく証明によって伝わります。

証明の材料は主に三つです。一つは、他社の実績です。「同じ業種のA社では、導入後に離職率がこれだけ下がりました」という具体的な事例は、こちらの百の説明より雄弁です。二つは、試してもらうことです。無料トライアルやサンプル、小さな範囲での試験導入です。相手が自分の手で価値を体験した瞬間、言葉で伝えた価値は確信に変わります。三つは、第三者の声です。導入企業の担当者のコメントや、客観的な数字です。売り手ではない誰かが語る価値には、主張にはない重みがあります。価値を語る営業は多いですが、価値を証明する営業は多くありません。「言う」から「見せる」へ、「説明する」から「体験させる」へ。証拠を一つ添えるだけで、言語化した価値は、相手の中でようやく信じるに足るものになります。

※著者の体験

価値は「言う」ではなく「見せる」で伝わる——これを地でいっていたのが、ある支援先の越谷さんという営業でした。

越谷さんは、自分の口で「価値があります」と語るのを、むしろ避けているように見えました。代わりに商談へ必ず3点セットを持ち込む。ひとつは同業他社の実績(「同じ業種のA社では導入後に離職率が◯%下がりました」)、ふたつめは小さな範囲での試験導入の提案、みっつめは導入済み企業の担当者の生のコメントでした。売り手である自分が語るより、第三者の声と、相手自身に触ってもらうことのほうが効く、と分かっていたんです。

同行していて面白かったのは、越谷さんが試験導入を勧めた客先は、相手が自分の手で価値を体験した瞬間、こちらの説明を待たずに前のめりになったことでした。その結果、彼の担当は他の営業より商談期間が短く、受注単価も◯%高かった。価値を「語る」営業は多いが「証明する」営業は少ない——越谷さんは、証拠を一つ添えるだけで言語化した価値が信じるに足るものに変わる、という見本のような営業でした。

そもそも、価値は「商品の中」にあるのか

ここまで、価値の伝え方、価格の壁、証明のしかたを見てきました。最後に、「価値を売る」という言葉の前提そのものを、一度ひっくり返してみたいと思います。

「価値を売る」という発想は、たいてい「商品には価値が備わっていて、営業はそれを見つけて伝える」という前提に立っています。だから私たちは「この商品の価値とは何か」と、商品のほうを見つめて考えます。けれど、少し立ち止まると、価値は商品の中には存在しないことに気づきます。同じ一本の傘が、土砂降りの日には千円でも安いと感じられ、快晴の日にはタダでも要りません。商品は何も変わっていないのに、価値はゼロにも無限にも振れます。つまり価値とは、商品が持つ属性ではなく、「顧客の置かれた状況」と「商品」が出会ったときに、その関係の中で立ち上がるものなのです。

そう捉え直すと、「価値を売る」の意味が変わってきます。あらかじめ定義した価値を、どの顧客にも同じように届けることではありません。目の前の顧客がいまどんな状況にいて、何に困り、何を目指しているのか――その文脈を理解し、その文脈の中でこの商品がどんな価値になるのかを、顧客と一緒に発見していくことです。同じ価値の言葉が、ある顧客には深く刺さり、別の顧客には素通りするのは、価値が顧客の文脈に依存するからです。この記事の前半で、価値を考える主語をクライアント、さらにそのクライアントのクライアントへとずらしていったのも、突き詰めれば「価値は相手の状況の側にある」という同じことを見ていました。

だとすれば、価値を言語化するという作業は、商品を見つめる作業である以上に、顧客を見つめる作業だと言えます。商品のスペックをいくら眺めても、そこから出てくるのは「一般的な価値」の在庫リストにすぎません。その在庫のどれが、目の前のこの顧客の状況で輝くのか――それは顧客を見なければ分かりません。究極的には、できる営業は「価値を売って」いるのではないのかもしれません。顧客の文脈の中に入り込み、その文脈の中で価値が立ち上がる瞬間を一緒に作っています。売っているのは既製の価値ではなく、顧客の状況とかけ合わせて初めて生まれる、その顧客だけの価値なのだと思います。

筆者:店長

営業と、競馬と、しゃべる植物。あっAIも。つい、いろいろ作ってしまう人です。

→ 店長の正体(詳しいプロフィール)

Noteも書いてます

営業を"言語化""構造化"する話を、ゆるめに。

【04】アホほど答えを知りたがるというパワーワード|晴れ時々AI@西新宿

アホほど答えを知りたがるというパワーワード 僕は「具体と抽象」というキーワードを日本で一番使うオトコかもしれない。 「AIを使って商談文字起こしを自動集約するためには、GASが必要」 これを抽象とすると 「Meetの文字起こしがGmailに飛んでくるのを未読のもののみを15分に一回トリガーを動かして、GASでgetFiles()のスクリプトを使って、データ取得する」 これが具体 営業の場面でいうと (抽象) ・ヒアリングは9つのフレームに集約ができる ー因果 ー前後 ー包含 ー並列 ー程度 ー主体 ー判断 ー変化 ー対処 (具体) それってどこでどの程度起きているんです

店長

Xアカウント:@nishi_sales_ai 新卒で大手IT企業に入社し、飛び込み営業から深耕営業、大手企業担当まで第一線で経験を積む(表彰歴多数)。その後、事業企画・営業企画部門で経営に近い立場から営業組織と数字に向き合い、10年勤続を経て独立。営業組織の改善に特化したコンサルタント企業を立ち上げる。 コンサルタントして数々の現場に入りつつ、自ら営業特化の転職エージェントも運営。近年はAIを活用した営業組織の業務改善・生産性向上プロジェクトに携わる。現場の最前線と経営の両方を見てきた視点から、営業3年目前後がぶつかる壁を越えるための実践知を発信する。

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