課題の優先順位のつけ方|重要度をヒアリングし合意する技術

誰もが憧れる、できる営業マン。今回は、彼らに共通するポイントのうち「課題解決の重要度」と「優先順位の付け方」にフォーカスを当て、紹介します。クライアントに満足してもらうために必要な要素が詰まっています。ぜひご覧ください。

クライアントが商品を選ぶ理由

無意識のうちに「選ぶ理由」が存在する

多くの人が意識しているとは言えないものとして、「そこで」「その人から」買う理由です。声に出すことはないかもしれませんが、何かしらの理由があって、人はモノやサービスを購入しています。

「理由」については大別すると以下の二つに分類されます

  • 買う理由
  • そこで買う理由

買う理由

買う理由については今回のテーマではありませんが、例えば

  • 夏に着る服が少ないのでTシャツを買う
  • ノドが渇いたので炭酸飲料を買う

などが個人ではあるでしょうし、法人であっても

  • 商品を売りたいので広告枠を買う
  • 人を採用したいので採用広告を買う

などの「買う理由」があり、その背景にはニーズがあります。

そこで買う理由

一方でTシャツを特定のブランドで買う理由はなぜでしょうか。炭酸飲料についてもコカ・コーラではなくソーダであったり、もしくは自動販売機ではなくコンビニで買ったのにはなぜか理由があるはずです。広告枠についても無限に近い選択肢がある中でfacebook広告を選ぶ理由があり、リクナビではなくマイナビを購入するにも理由があります。

これらには全て「今回は、何を重要視するためこれにしよう」という意志決定が大なり小なり働いています。

商品やサービスを購入する理由の背景として存在する重要度

これらが機能する前提は「選択肢があり」「特徴が異なる」が本質的に「提供される価値は大きくは一緒」という点です。

賃貸マンションの事例

非常にわかりやすい事例として「マンションの賃貸」を事例にあげます。転勤や就職などの様々な理由で、引越しをすることになり、それに伴い自分が住むマンションを自分で決めるという体験はそれほど珍しくはないでしょう。

賃貸マンションにおける重要度

あなたは賃貸マンションを選ぶにあたり、例えばこう考えるはずです。

  • 「通勤のことを考えると駅近がいいな」
  • 「予算は月に10万円以内」
  • 「できれば2階以上」
  • 「陽当たりを考えると角部屋」
  • 「1Rで8畳はほしい」

など希望を言い出すとおそらく、いくつも出てくるでしょう。そして挙げながら薄々と気づいてもいます。「恐らく全てを満たす物件はないだろうから、何を妥協しようかな?と。」

これがまさに「顧客が重要度を軸に、商品を購入するにあたり選択肢に優先順位をつけている」ことに他なりません。もしあなたがマンションを選ぶ側ではなく、賃貸マンションの営業マンであれば、「家賃が最優先で一番重要だ」と言っている人に、「この物件はご予算をはるかに超えていますが、極めてデザインが高いんです」というモノの売り方をしても、恐らくほとんどが空振りに終わってしまうでしょう。

賃貸マンションについては、「複数の選択肢があり」「特徴が異なる」が、「プライベートの本拠地として住むという価値」については、どのマンションでも共通の価値提供を受けることができます。

できる営業マンが実践する重要度を駆使した営業スタイル

人によって何が重要かは違う

当たり前のことを当たり前に言うようですが、人によって何を重要視するかは顧客によって異なります。もちろん営業マンであるあなたが顧客に対して選択肢を提示するにあたり、「何を重要として判断しているのか」ということを簡単に聞いたりはしている可能性はあるでしょう。

「しかしなぜそれが重要か?」までを踏み込んでヒアリングしているケースはもしかすると少ないかもしれませんし、もっと言うと、いわゆる「平均」と「その人が重要とするもの」の違いを認識しているケースは極めて少ないと言えるでしょう。

平均と個別の違い

接客や営業をするにあたって、今目の前にいる顧客のことだけを考えてしまうのが恐らくほとんどだと思いますが、ポイントの一つが、この人は「他の人と何がどのレベルで違うのか?」ということを把握しながらコミュニケーションをすることです。例えばあなたはマス向けの汎用企画書を持っていたり、商品のスペックが記載された紙や画面を見ながら、顧客になりうる人に対して営業をしています。

あなたが持っている汎用企画書や商品のスペックが記載された紙というのは、「いわゆる多くの人が重要とするものについて重点的に記載されたもの」であり、目の前にいる人が必ずしも、それを最重要と捉えているとは限らない、という点に気をつけねばならないため、「いわゆる平均的な人との違い」を認識しながらコミュニケーションする必要があるのです。

「平均を知る」は営業マンにとっての大きな財産

そもそも顧客とあなたでは、マーケットや商品に対する理解度や知識に雲泥の差があるケースは少なくありません。もちろんあなたが情報強者でなければなりません。いわゆる「コンサルティング営業」と呼ばれる営業スタイルの多くは、営業マンと顧客の情報の非対称性が存在するこそ成り立つ職種であるとも言えます。

例えば消費者の目線に立って、商品を選ぶような先ほどの賃貸マンションの事例であれば、比較的顧客は重要度について自分なりの優先順位を決めやすいかもしれません。

しかし全ての商品購入のケースにおいて、特に法人取引のようなケースについては、「そもそも一般的にはどうなんですかね?」「他社さんはどのようにされているのですか?」という状態で商談がスタートするケースは多く存在するでしょうし、その際に「一般的には」という枕詞できちんとマーケット状況を説明できるあなたは優秀な営業マンかもしれません。ただしさらにできる営業マンは「約3割の人がAというスペックを最重要視しており、残り7割は1/3ずつ、B,C,Dというスペックについて重要視しています」ときちんとデータで示せることは顧客に安心感を与える大きな材料になるでしょう。

ヒアリングの重要性

まずは平均を提示し、気づきを与えることが重要です。その上で「御社は(あなたは)どうですか?」としっかりとヒアリングする必要があります。予算なのか、クオリティなのか、納期なのか、カスタマイズ性なのか、数値として表現できることなのか、担当営業マンなのか、アフターフォローなのか。商品を購入するということは何か解決したい課題があるということです。その課題が何で、解決するための手段としての優先順位や重要度合いをしっかりとヒアリングすることがまずは大切です。

ヒアリングから提案の流れ

全体平均と顧客の優先順位がプロットされたものをデータとして作成できれば、それはイコール自社の求めるものが他社が求めるものと具体的に何が違うのか、ということが一目瞭然となります。ここまでファクトについて整理された状態ではっきりと提示されるケースも顧客としては珍しいのではないでしょうか。

そして、この全体との違いこそがまさに提案の骨子となるものです。この違いを、販売する商品を使ってどう埋めていくのかというのが、まさに提案骨子となっていきます。

賃貸マンションにおける提案事例

先般の賃貸マンションの事例であれば、全体の優先順位はおそらく予算や立地が優先事項として上がるはずです。それに対して目の前の顧客が2F以上やコンビニ近いということを重要項目としてあげていたとしましょう。

この時に、全体の重要度と目の前の顧客の重要項目を比較しながら次のような提案をすることが考えられます。

  • 立地を皆が重視するには理由があって、毎日のことについて10分以上の時間をかけることについては想像以上の負担があること。
  • 一度物件を決めてしまえばその後気軽に部屋を変えることが難しいという経済的負担が大きいから、立地についてはきちんと想像すべきであるということ。
  • 駅近の物件であればそもそもコンビニが近くにある傾向にあること。
  • 2Fを希望するという防犯観点でいうと、夜遅くなる日があることを考えると明るい道を通って帰れる駅前物件の方がオススメであること。

このように売りたい商品と全体の重要度と顧客の重視項目をかけあわせながら提案していくことで、「商品を使ってギャップを埋める」を通じて販売量を増やすということを、できる営業マンは実践しているのです。

今回の内容を実践し続けることが、成長のカギになります。学んだことを、明日からの一歩につなげていきましょう。

優先順位を「つける」ための、二つの物差し

ここまで、顧客が自分なりの重要度で選択肢に順位をつけている、という話を見てきました。では営業の側は、顧客の複数の課題に対して、どう優先順位をつける手伝いをすればよいのでしょうか。ここに使える物差しを二つ紹介します。

一つは「重要度 × 緊急度」です。課題を、効果の大きさ(重要度)と、放置したときの痛みの早さ(緊急度)の二軸に置きます。両方高いものが最優先、重要だが急がないものは計画的に、急ぐが重要でないものは手早く片づける、という順番が見えてきます。もう一つは「インパクト × 着手しやすさ」です。成果の大きさと、すぐ動けるかを掛け合わせます。大きくてすぐ動けるものから手をつけるのが定石ですが、ここで効くのが「最初の小さな成功」です。いきなり最重要の難物に挑んで時間がかかると、顧客の熱が冷めます。むしろ着手しやすく効果も見えやすいものを先に一つ片づけ、信頼と勢いを作ってから本丸に向かいます。顧客の課題を全部同時に解こうとすると、たいてい共倒れになります。物差しを当てて順番を決め、一点に絞って動きます。これが、重要度という考え方を実際の行動に変える第一歩です。

「平均」は、自分で作れる

先に、「約三割の人がAを最重要視し、残り七割はB・C・Dに分かれる」といったデータを示せる営業は強い、という話がありました。ここで多くの人が「そんな調査データはどこにもない」と足を止めます。しかし、この平均は、特別な市場調査を買わなくても、自分の手元で作れます。

材料は、日々の営業活動の中にすでにあります。過去の受注案件で、顧客が最後の決め手にした要素は何だったのでしょうか。失注した案件で、何が引っかかって他社に流れたのでしょうか。商談メモに残る「一番重視しているのは納期です」「うちは価格より安定供給です」という声もあります。これらを二十件、三十件と集計するだけで、「自社の顧客は、だいたいこの順で重視している」という生きた平均が浮かび上がります。市販の統計より、自社の商材に即したこの手作りの平均のほうが、はるかに商談で効きます。ポイントは、日頃から商談の結果に「なぜ買ったか/なぜ買わなかったか」を一言残しておくことです。この記録の習慣がある営業だけが、半年後に「一般的にはこうです」と根拠を持って語れるようになります。平均を語れる情報強者は、生まれつきではなく、記録の積み重ねで作られます

※著者の体験

「そんな調査データはどこにもない」で足を止めがちですが、私はこの“平均”を、市場調査を買わずに自分の手元で作ってきました。

若い頃から続けているのは、商談のたびにメモへ「なぜ買ったか/なぜ買わなかったか」を一行だけ残す習慣です。地味なんですが、これをためて集計すると、「うちの顧客は、だいたいこの順で重視している(受注の決め手は2割が納期、失注理由の5割が価格)」という、生きた平均が浮かび上がってきました。市販の統計より、自社の商材に即したこの手作りの平均のほうが、商談でははるかに効きます。

最近は、その一行メモをまとめて解析させて集計を自動化していますが、大元にあるのは「商談の結果に一言残す」という記録の習慣です。半年後に「一般的にはこうです」と根拠を持って語れるかどうかは、才能ではなく、この記録を積んだかどうかで決まる——これは自分自身が、複利で実感してきたことです。

商談のヒアリング設計について知見を広げたい方はこちら。質問の設計で、商談の質が変わります。

営業のための「クライアントに対するヒアリング」をスムーズにする4つのStep|ヒアリングの質問例と深掘りの技術ーー相手が黙る瞬間を味方にする実践会話術

優先順位は、聞いて終わりではなく「握る」

重要度はヒアリングで聞き出すもの、というのはそのとおりです。ただ、できる営業はもう一歩進んで、聞いた優先順位を顧客と「握り」ます。聞きっぱなしと、握るのとでは、そのあとの提案の通り方がまるで違うからです。

握るとは、言語化して合意することです。ヒアリングの後で、「整理すると、御社の優先順位は①安定供給、②価格、③サポート体制、の順で合っていますか」と、こちらから顧客の重要度を並べて確認します。ここで顧客が「いや、二番目は価格じゃなくて納期だ」と直せば、それだけで大きな認識のズレが一つ消えます。優先順位を握らないまま提案に進むと、こちらは価格訴求で作り込んだのに、相手の本当の一番は納期だった、という空振りが起きます。そして握った優先順位は、そのまま提案の評価軸になります。「①をこう満たし、②をこう満たします」と、合意した順番に沿って提案を組み立てれば、顧客は自分の基準で採点でき、納得して決められます。聞くだけの営業は自分の頭を整理して終わりますが、握る営業は、顧客と共通の物差しを持って商談を進められます

※著者の体験

優先順位はヒアリングで聞き出すもの、というのはそのとおりなんですが、私は昔「聞きっぱなし」で盛大に空振りした経験があります。

ある案件で、相手が最初に「価格が大事」と言ったのを真に受けて、価格訴求で提案を作り込んで持っていったら、相手の本当の一番は納期でした。提案書20枚が丸ごと的外れになった。それ以来、ヒアリングの後に必ず「整理すると、御社の優先順位は①納期、②価格、③サポート、の順で合っていますか」と、こちらから並べて確認するようにしました。

これをやると、相手が「いや、二番目は価格じゃなくて営業の柔軟さだ」と直してくれて、その場で認識のズレが一つ消えます。しかも握った優先順位は、そのまま提案の評価軸になる。①をこう満たし、②をこう満たします、と合意した順番で組み立てれば、相手は自分の基準で採点して納得して決められる。聞くだけだと自分の頭が整理されて終わりますが、握ると顧客と共通の物差しで商談が進む——この差は、空振りの痛みとセットで覚えました。

そもそも、営業は顧客の優先順位に「従う」のか「組み替える」のか

ここまで、優先順位のつけ方、平均の作り方、握り方を見てきました。最後に、「優先順位の付け方」という言葉の主語は誰なのか、を問い直しておきたいと思います。

私たちはつい、優先順位は顧客のもので、営業の仕事はそれを正しく聞き出して従うことだ、と考えます。重要度をヒアリングし、顧客が挙げた順番どおりに提案を合わせます。たしかにそれは基本です。けれど、それだけなら、優れた御用聞きにしかなれません。ここで、先ほどの賃貸マンションの例を思い出してみてください。顧客は「二階以上がいい」と言いました。その理由は防犯でした。できる営業は、その希望をそのまま満たす物件を探すのではなく、「夜道の安全という目的なら、駅前の明るい通り沿いのほうが叶う」と、別の手段を差し出しました。これは、顧客の優先順位に従ったのではありません。顧客の優先順位を、組み替えたのです

ここに、重要度をめぐる営業の本当の付加価値があります。顧客が口にする優先順位は、たいてい「目的」の順位ではなく「手段」の順位です。「二階以上」も「駅近」も、その奥にある「安全に、快適に暮らしたい」という目的を叶えるための手段にすぎません。そして顧客は、自分が今見えている選択肢の範囲でしか、手段に順位をつけられません。ここに営業の出番があります。顧客が知らない選択肢、見えていないトレードオフ、気づいていない長期のコスト――こうした新しい情報を持ち込むことで、営業は顧客の優先順位そのものを揺さぶり、より良い順番へ組み替えることができます。顧客の挙げた順位に忠実に従うのは、視野を顧客と同じ大きさに留めることです。顧客の目的まで降りて、手段の順位を編集し直せるのが、情報の非対称を価値に変えるコンサルティング的な営業です。

だから、「優先順位の付け方」を突き詰めると、その主語は少しずつ顧客から営業へと移っていきます。顧客の重要度を尊重することは出発点として欠かせません。しかしそこに留まらず、顧客の視野そのものを広げ、優先順位を一段良いものへ描き直します。従うのか、組み替えるのか――その一歩を踏み出せるかどうかが、言われたものを探す営業と、顧客が気づかなかった最適解を差し出す営業を分けていくのだと思います。

※著者の体験

顧客の優先順位に「従う」だけだと優れた御用聞きにしかなれない、という指摘は、営業をやっていていちばん腹落ちする話です。

印象に残っているのは、顧客が「Aのスペックが最優先」と言い切っていた案件です。そのまま従えばAの強い商品を出すところですが、「なぜAが最優先なんですか」と目的まで降りて聞いていくと、本当に叶えたいのは社内の説明コストつまり競合機能をカバーしているかどうかで、Aはそのための一手段にすぎないと分かってきました。そこで、顧客がまだ見えていなかった別の選択肢と、長期で見たときのコストを持ち込んだところ、「それなら順番が変わるな」と、優先順位そのものが組み替わった。

顧客が口にする順位は、たいてい「目的」ではなく「手段」の順位で、しかも本人が今見えている選択肢の中でしか順位をつけられません。だからこそ、知らない選択肢・見えていないトレードオフという新しい情報を持ち込んで、手段の順位を編集し直せるかどうかに、営業の付加価値がある。言われたものを探すのか、気づいていない最適解を差し出すのか——ここで営業の価値が二つに分かれる、と現場で何度も感じてきました。

アドバンス|キャリアの幅を広げる一本

筆者:店長

営業と、競馬と、しゃべる植物。あっAIも。つい、いろいろ作ってしまう人です。

→ 店長の正体(詳しいプロフィール)

店長

Xアカウント:@nishi_sales_ai 新卒で大手IT企業に入社し、飛び込み営業から深耕営業、大手企業担当まで第一線で経験を積む(表彰歴多数)。その後、事業企画・営業企画部門で経営に近い立場から営業組織と数字に向き合い、10年勤続を経て独立。営業組織の改善に特化したコンサルタント企業を立ち上げる。 コンサルタントして数々の現場に入りつつ、自ら営業特化の転職エージェントも運営。近年はAIを活用した営業組織の業務改善・生産性向上プロジェクトに携わる。現場の最前線と経営の両方を見てきた視点から、営業3年目前後がぶつかる壁を越えるための実践知を発信する。

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