社員の英語能力わかってますか?TOEIC900点の罠!!人事評価それで大丈夫??
英語を使える人材が欲しいと言ってもどのような英語がどれくらい使えるのかは、実際にその人員が業務にあたってみなければ測りにくいというのが現状です。そこで便利なのがTOEICをはじめとする英語の資格試験ですが、本当にビジネスシーンで英語を使える人材なのかどうかを判断するにはそうしたスコアを客観的評価軸として利用しつつも、批判的に捉える必要があります。この記事ではそうした悩みを持つ人事担当者の方へのインサイトを提供しています。
初めに
英語能力を売りにする人材は多くなっています。英検1級、TOEICスコア900・・・・・。
ただ、そんな彼らが実際に海外顧客・取引相手と関わった時どれほどビジネス英語が使えるのかは、試してみないとわからないというのが現状ではないでしょうか。この記事ではビジネス視点で社員の英語能力をどう図っていくべきなのかを考察します。
TOEICハイスコア≠英語ペラペラ!!
TOEICは現在、TOEIC R&L、TOEIC S&Wに分かれています。しかし一般的に単にTOEICと言った場合、前者のTOEIC L&R、つまり、リーディングとリスニングのテストを指します。
このTOEIC R&Lどんなテストなのかおさらいして行きます。
- 問題数200問
- 試験時間
- 問題用紙への書き込み禁止
- テスト構成
- リスニングパート100問
- パート1(6問)
- 写真を見ながら短い英文を聞き取る4択問題。
- パート2(25問)
- 質問に合った応答文を選ぶ3択問題。
- パート3(39問)
- やや長めの会話文を聞き取る4択問題
- パート4(30問)
- 映画、ラジオなどの広告やアナウンス等長めの英文を聞き取る4択問題。
- リーディングパート100問
- パート5(30問)
- 短い文章に合った単語、イディオムを選ぶ穴埋め4択問題。
- パート6(16問)
- 長めの文章に合った単語、イディオムを選ぶ穴埋め4択問題。
- パート7(54問)
- 1-3の長文を読み内容に沿った記述を選ぶ4択問題。
TOEIC R&Lで測られるのは英語での情報処理能力
TOEICのハイスコアを持っている人とそうでない人のもっとも大きな違いは「リーディング問題を解ききれるかどうか。」と言えます。制限時間の中でこのリーディング問題を解ききるには英語で書かれている大量の情報を頭に入れ、瞬時に取捨選択しなければなりません。またリスニング問題においても流れてくる長文の中から問題の答えとなる情報を探し出して覚えておく必要があります。
ビジネス英語能力を図るというテストの性質上、難しい語彙はあまり使われません。換言すれば、TOEIC L&R とは簡単な言葉を素早く理解し、処理する能力が問われるテスト、というわけです。
ビジネス視点でこのテストを見ていくと、当然ながら英語をアウトプットする能力は測れません。さらに問題の形式やパターンを頭に入れてしまえば、中高生でも800点や900点が狙えます。つまりビジネスシーンで英語を「使う」ことができる人材を見つけるのにこのテストは不向きです。
ただし先に述べたとおり、話して、書く能力を測るTOEIC S&Wも登場しています。TOEICと言っても種類があってそれぞれに計られる能力は全く異なるということを頭に入れておきましょう。
「仕事で使う英語」とは
メールを使う、商談をするなど、実際のビジネスシーンでの英語の使われ方とTOEICの問題の中で出てくる文章とは別物、と考えた方が良いでしょう。TOEICで測られるのはあくまでも一般的なビジネス英語を理解し処理する能力です。ITなのか、メーカーなのか、大企業なのか、ベンチャー企業なのかによって使われる語彙は全く違うはずです。それらすべてを網羅的に覚える必要はもちろんありません。しかしながら英語で仕事をしていこうとなれば業界の用語はもちろん、その人材が行う業務で使える英語能力が求められます。
ビジネスパーソンの英語をはかるには
英語の資格・試験の比較
TOEIC
- 語彙のレベル:低
- ターゲット:非ネイティブのビジネスパーソン
- テスト所要時間:2時間15分
- 受験料:5,725円(L&R、個人受験)、10,260円(S&W、個人受験)
- コメント:
- 日常的に使われる表現を理解し運用できるかを測るテスト。情報量は多いが内容は複雑ではない。
- 2技能ずつ(リーディング+リスニング/スピーキング+ライティング)
TOEFL (iBTの場合)
- 語彙のレベル:高
- ターゲット:留学したい非ネイティブ
- テスト所要時間:4時間半
- 受験料:235アメリカドル(テスト当日の7日前までに個人で申し込んだ場合)
- コメント:
- アカデミック。天文学、経営学などの資料を読み解く、講義を聞き取るなど。情報量は多く複雑。同時に論理的出力が求められるため難易度は非ネイティブからすれば高め。
- 4技能
IELTS
- 語彙のレベル:中
- ターゲット:非ネイティブ
- 4技能
- テスト所要時間:2時間45分
- 受験料:25,380円(個人)
- コメント:
- アカデミックモジュールとジェネラルトレーニングモジュールに分かれています。前者はTOEFLのようにアカデミックな内容で留学希望者向け。後者は学業以外での研修や移住申請を希望する人に向けて作られています。いずれも休憩なしでリスニング、リーディング、ライティングが同日に行われ、スピーキングのみ他のセクションのテストの前後6日間に行われます。
GTEC
- 語彙のレベル:低
- ターゲット:英語学習者
- テスト所要時間:選択可
- 4技能(選択可)
- コメント:
- 日常生活やビジネスシーンで使う一般的な英語能力を測る。人事評価を念頭に入れて開発されたものであるため、使われる語彙はTOEIC、TOEFLよりは実践的。試験時間も科目の組み合わせを変えることで短縮することが可能。
英検1級
- 語彙のレベル:高
- ターゲット:英語学習者(4大卒レベル)
- テスト所要時間:170分(筆記試験合格の場合、後日約10分の面接試験あり)
- 受験料:8,400円(個人)
- コメント:
- 社会人としての高い英語スキルを測る。かなり専門性が高く日常英会話の中でほとんど見られない表現がほかのテストに比べて多い。
- 4技能
英検準1級
- 語彙のレベル:低
- ターゲット:英語学習者(大学中級)
- テスト所要時間:155分(筆記試験合格の場合、後日約10分の面接試験あり)
- 受験料:6,900円
- 4技能
- コメント:
- 社会人として必須の英語スキルを測る。
必要な英語は業務によって異なる
一言で英語ができるといっても、どんな英語をどれくらい使えるのかは本来全く違います。きれいなブリティッシュイングリッシュが話せても、業界用語を理解し運用できるとは限りませんし、インフォーマルな言葉遣いでも意思の疎通ができれば御の字と言う業務も存在します。そこで、場合と相手ごとに必要な英語能力とそれを測るのに有用な資格試験をまとめました。
ビジネスメール/レター
求められる語彙は高くありませんし、フォーマットを頭に入れて、例文をいくつか保存しておけば何度でも使えます。したがって英語運用能力としてそこまで高いものは求められません。
→英検2級、GMAT、TOEIC S&W
接待
相手によっては相当に高い英語能力が求められます。愛嬌やコミュニケーション能力で選ぶのも手ですが、安全ではありません。
→英検準1級、GMAT、TOEIC S&W
会議やミーティング
高い英語能力が求められます。また自分の意見を的確に論理的に英語で表現しなくてはなりません。
→英検1級、TOEFL、IELTS
プレゼンテーション
スクリプトを先に用意したり、練習したりがある程度はできるため、そこまで高い英語力は求められないでしょう。質問には想定問答集を用意するなどして対応できる場合もあります。ただし、鋭い質問や、ハプニングがあった場合対応できないことを考えると、あまり自信を持って英語を話せない人材に担わせることは危険です。
→英検1級、GMAT、TOEIC S&W
商談
相当高い英語能力が求められます。相手の言っていることの微妙なニュアンスまで理解できなければ損害をもたらしかねない立ち位置になります。海外生活経験者、且つフォーマルな英語をある程度使える人材を配置することが最も安全でしょう。
→TOEFLかIELTSのハイスコア
テレアポ
トークスクリプトを用意し、ある程度相手が聞き取りやすい英語を話せれば良いでしょう。ほとんどの場合はそれで事足りるため、そこまで高い英語能力は求められません。
→英検2級、GMAT、TOEIC S&W
書類作成
作るものによってはかなり高い英語能力が求められます。アジェンダ作成等同じ言葉を繰り返し流用できる場合はそこまで高い英語能力は求められませんが、法務書類、特許書類等は外注している企業が多いように、専門用語やかなり高いレベルの語彙への理解がなければ作成できません。
結論。ビジネス英語の能力はスコアでは測れない
英語がどこまで使えるのかを測る最も簡単な方法は、人員を配置したい部署で働いている人が口頭試問したり、書類を実際に作成させたりすることです。しかし、新規事業や大企業ではなかなか難しいのが現状です。この場合のフィルターとしてTOEICを使うのは有用と言えます。ただし900点ならできるはず、帰国子女なら大丈夫は危険です。高得点を取るコツを覚えてしまえば900点を取ることは可能で、帰国子女にしても、滞在先で受けた英語教育のレベルによってはフォーマルな英語を全く使えないことが考えられます。また、あまり高い点数は取れなかったとしても、コミュニケーション能力や努力で仕事で使うことのできる英語を習得する人材は少なくないのです。人事担当者には様々な角度からその人材の英語能力を根気強く測ることが求められています。
TOEIC・TOEFL・英検を"横並び"で比較する物差し——CEFRという国際基準
複数の資格試験を並べて比較しても、「TOEIC900点と英検1級とIELTS7.0は、結局どっちが上なのか」で人事担当者はつまずきます。試験ごとに点数の付け方が違うため、単純には比べられないからです。ここで役立つのが、CEFR(セファール)という国際的な物差しです。
CEFRは、言語の運用能力をA1(初級)からC2(最上級)までの6段階で示す、ヨーロッパ発の共通基準です。重要なのは、TOEIC・TOEFL・IELTS・英検といった主要な試験の多くが、自分のスコアがCEFRのどの段階に当たるかの対照表を公式に用意している点です。これを使えば、異なる試験のスコアを同じ物差しの上に並べ、「この応募者はB2相当、あの応募者はC1相当」と横断的に比較できます。求人票に「TOEIC◯点以上」とだけ書くと、英検やIELTSしか持たない優秀な人材を取りこぼしますが、「CEFR B2以上」と定義しておけば、どの試験の保有者も同じ土俵で評価できます。まず社内の評価基準をCEFRに翻訳しておくこと。これが、資格の種類に振り回されないための第一歩になります。
スコアだけに頼らない実地確認——英語面接・ロールプレイ・実務課題の設計
配属先の社員に口頭試問をさせたり、実際に書類を作らせたりするのが確実だ、という点は、まさにそのとおりです。ただ、それを場当たりでやると評価者ごとに判断がぶれるので、実地確認は"設計"して行うと精度が上がります。
やり方は、その職務で実際に起きる英語の場面を、そのまま再現することです。海外顧客と商談する職務なら、社員が顧客役になって英語で交渉のロールプレイをする。英文メールを書く職務なら、実際のやり取りに近いシチュエーションを渡して、その場で返信を書かせる。会議で発言する職務なら、簡単な議題について英語で意見を述べ、想定外の質問を一つ投げてみる。ポイントは、用意してきた自己紹介やスクリプトではなく、その場で対応する即興の力を見ることです。台本のある部分はどれだけ練習してもこなせてしまうので、鋭い質問への切り返しや、聞き取れなかったときの聞き返し方にこそ、実務で使える英語かどうかが表れます。評価する観点(正確さ・スピード・伝わりやすさ・とっさの対応)を事前に決めて共有しておけば、複数の候補者を同じ基準で比べられます。
職務ごとに「合格ライン」を決める——足切りスコアの現実的な引き方
スコアをフィルターとして使うのは有用ですが、「とりあえずTOEIC800点以上」のように一律で引くと、過剰にも過小にもなりがちです。合格ラインは、職務ごとに、その仕事で英語に何をさせるかから逆算して決めます。
手順はシンプルです。まず、その職務で英語を使う場面を洗い出し、それぞれに「読む・聞く・話す・書く」のどの技能が、どの程度必要かを書き出します。英文メールが中心で会話はほとんどないなら、読む・書く力を重視し、スピーキングの基準は緩めてよい。逆に商談や会議が中心なら、スコアだけでは足りず、前の見出しで挙げた実地確認を必須にする、といった具合です。そのうえで、スコアはあくまで「これ以下だと厳しい」という下限(足切り)として使い、「これ以上なら安心」という上限の保証には使わないこと。ここが肝心です。高いスコアは可能性を示すだけで、実務力を保証しません。だから合格ラインは「スコアで足切りし、その先は実地で見る」の二段構えにする。一律の数字ではなく、職務ごとに必要技能から引いたラインこそが、取りこぼしと採用ミスの両方を減らします。
スコアの"鮮度"と技能の偏りを見る——いつの、どの技能のスコアか
同じ「TOEIC850点」でも、それが半年前のものか5年前のものかで、意味はまるで違います。人事評価でスコアを扱うときは、点数そのものだけでなく、その"鮮度"と"中身"まで確認する習慣を持つと、判断を誤りません。
まず鮮度です。語学力は使わなければ落ちていくので、数年前のスコアは、現在の実力を保証しません。応募書類にスコアがあれば、それがいつ取得したものかを確認し、古い場合は現時点の力を実地で確かめる。次に、技能の偏りです。一般にTOEICと呼ばれるテストは読む・聞く力を測るもので、話す・書く力は別のテスト(スピーキング・ライティング版)でしか測れません。つまり「TOEIC900点」は、アウトプット能力については何も語っていない、という前提で読む必要があります。総合点だけを見て「英語ができる人」と判断せず、その点数がどの技能を測ったものかまで分解して見る。鮮度と技能構成のふたつを添えて初めて、スコアは実務の判断材料として使えるものになります。
そもそも「TOEIC900点の罠」とは、測れるものが測りたいものにすり替わることである
ここまで、CEFRによる比較軸、実地確認の設計、職務ごとの合格ライン、スコアの鮮度と技能の偏りと、英語力を人事評価で扱うための具体を見てきました。最後に、そもそもなぜ「TOEIC900点の罠」のようなことが起きるのか、その根っこを考えてみます。
私たちが本当に知りたいのは、「この人は、うちの仕事で英語を使えるか」です。ところが、それは直接には測りにくい。そこで、測りやすいTOEICのスコアを、代わりの目印として使います。ここに落とし穴があります。いつのまにか、本来知りたかった「仕事で使えるか」という問いが、測りやすい「スコアが高いか」という問いに、こっそりすり替わってしまうのです。900点という数字が、いつの間にか「英語ができる証明」そのものに昇格してしまう。これが罠の正体です。測定の道具にすぎなかったスコアが、目的の座を乗っ取ってしまうのです。
しかも、この構造にはもう一段やっかいなところがあります。スコアが評価の目的になった瞬間、人はそのスコアを上げること自体に最適化し始めます。実際、出題パターンを覚え込んでしまえば、実務で英語を使えなくても900点は取れてしまう。つまり、指標を目標にすると、その指標はかえって実力を映さなくなる。測るための物差しが、測りたい対象からずれていくのです。だからこそ、スコアは「入口のふるい」として使うにとどめ、決してゴールの認定証として扱ってはいけません。
では、罠を抜けるにはどうすればよいか。順序を入れ替えることです。「英語力をどう正確に測るか」を考える前に、「この職務で、英語に何をさせたいのか」を先に定義する。海外の顧客と信頼関係を築いてほしいのか、正確な契約書を読み解いてほしいのか、会議で自社の主張を通してほしいのか。求める英語の中身が定まって初めて、どの技能を、どの場面で、どう確かめるかが決まります。加えて、翻訳ツールが日常業務に入り込んだ今、読み書きの一部は機械が肩代わりできるようになり、生身の人間に本当に問われる英語は、その場の対話や、微妙なニュアンスの受け渡しへと移りつつあります。測るべき対象そのものが動いているのです。人事担当者に求められているのは、より精密にスコアを測ることではなく、「そもそも何のための英語か」を問い直し続ける姿勢なのだと思います。
Noteも書いてます
営業を"言語化""構造化"する話を、ゆるめに

