営業のクレーム対応|理不尽な叱責とカスタハラの見極め方

営業をしていると時には自分の責任で、時には理不尽に、クライアントから怒鳴られたり、出入り禁止を言い渡されたり、担当変更を要求されたり、様々な苦しい経験をします。ほとんどは身から出た錆なのですが、時には、泣きたくなるような不運も。そんな経験をまとめました。

罵詈雑言

20代 食品関係

仕事でミスして、ストレートに「もうお前は二度とうちに来るな」って言われた。でも次の日もまた行った。その次の日も行った。4日目に向こうが折れて謝ったら許してくれた。

20代 機械

納期に間に合わなくて、クライアント先の工場のラインを丸一日全部止めることになった。普段すごく温厚で絶対に怒らない戦法の課長さんに「時と場合によっては訴えますよ?」ってめちゃくちゃ冷静に言われた。冷や汗が止まらなかった。

30代 広告

前任の営業が偉大すぎた。前任の先輩営業が産休に入って引き継いだクライアント。社内一クライアント数を担当していたから、ほぼ放置だった。引き継ぎの挨拶から三ヶ月放置してたら子供を産んで育児中の先輩に連絡が入った。「あの営業を辞めさせない限り御社とは取引しない」と言われた。

20代 建築

下請け企業がやらかした。当然責任は元請けのうちにある。「面倒見きれねぇのに下請けに投げるんじゃねぇ!」って言葉と同時に、手元にあった本が飛んできた。工事関係は本当に怖いと思った瞬間だった。それ以来何年も、先方からお許しが出るまでそのクライアントは元請けで対応してた。

20代 人材広告

飛び込み営業してたら、飛び込んだらまずい系の事務所に入ってしまった。見た目はそうでもないが、後から思うとオフィスの雰囲気がそうと言われればそうかもしれなかった。新人だったのでよくわからず、普通に提案したら即決してくれた。会社に戻って報告したら後日法務部から「反社会的勢力とは取引できない」と言われた

普段いつも新聞しか読んでいない使えない窓際族の総務部のおじさんだと思っていた人が、実はそういう対応をされる方だと初めて知った。そのおじさんとその企業に出向いた。「お前らが掲載してくれって言ったから掲載してやるって言っただけなのに、一方的にやっぱりできませんじゃ筋が通らないだろう」ってすごくドスの効いた声で言われて、しょんべんちびりそうになった。あとはその総務のおじさんがうまくやってくれて事なきを得たけど、正直怖すぎてその日のことは全く覚えていない。

営業の現場では、営業マンへの理解が成果を大きく左右します。本記事で紹介したポイントを振り返り、明日からの業務に少しずつ取り入れていきましょう。

怒鳴られた瞬間の初動——謝る対象を切り分け、まず事実を掴む

強い言葉を浴びせられた瞬間、頭が真っ白になって、その場を収めたい一心で「すべて私が悪うございました」と全面的に謝ってしまう——これがいちばんまずい初動です。まだ何が起きたか確認できていない段階で全面的に非を認めると、後で事実が違っていても引き返せなくなります。ここで必要なのは、謝る対象を二つに分けることです。相手を不快にさせた、不安にさせた、という事実に対しては、即座に素直に詫びる。一方で、まだ確認できていない責任の所在については、「すぐに事実を確認してご報告します」と、認定を保留する。

そのうえで、相手の言い分を遮らずに最後まで聞き切り、いつ・何が・どうなったのかという事実を掴みます。怒っている相手は、まず「話を聞いてもらえた」という感覚がないと次に進めません。反論や言い訳をこの段階でぶつけると、火に油を注ぎます。誰の責任かという議論より先に、何が起きているのかを正確に把握する。そして、対応のスピードと初動の連絡だけは、何より早く。初動の丁寧さと速さが、その後の展開の八割を決めます。

それは「クレーム」か「ハラスメント」か——線を引いて対応を変える

すべての強い言葉を、同じ「お叱り」として受け止める必要はありません。ここには明確な線があります。商品やサービスへの不満、改善してほしいという要求は、正当なクレームです。真摯に受け止め、対応すべき情報が含まれています。一方で、人格の否定、長時間の拘束、土下座の強要、物を投げつける、脅すといった言動は、もはや顧客対応の範囲ではなく、カスタマーハラスメントです。近年は行政も、こうした迷惑行為から従業員を守る対策を企業に求める方向に動いています。

この二つを混同すると、正当な指摘は改善につながらず、理不尽な攻撃はあなたの心を削るだけに終わります。判断の軸はシンプルで、「その言葉のなかに、業務を良くするための具体的な要求が含まれているか」です。含まれていれば拾う。含まれず、ただ人格や尊厳を攻撃しているだけなら、それは受け止めるべき情報ではなく、身を守るべき状況です。まじめな人ほど、理不尽な暴言まで「自分が至らないせいだ」と抱え込みますが、線の向こう側は、あなた一人が耐えて解決する種類の問題ではありません。

危険を感じたら、一人で抱えず即エスカレーション——暴力・脅迫・反社

物が飛んでくる、身の危険を感じる、脅しめいた言葉が出る、相手に反社会的勢力の気配がある——こうした局面は、営業個人が背負う問題ではなく、その場で対応の次元が変わります。まずは自分の安全を確保し、必要ならその場を離れます。無理にその場で解決しようとしないことです。そして会社に、できるだけ早く、正確に報告します。

このとき、記録が武器になります。いつ、どこで、誰に、何を言われたか・されたかを、事実に基づいてメモに残す。相手が反社会的勢力に該当する疑いがあれば、取引そのものが会社として不可であり、法務や然るべき部署、場合によっては警察が関わる領域です。危険な相手のところへは、一人で行かない、二人以上で対応する、上司を同行させる、といった体制で臨みます。「怖い」と感じた自分の感覚は、我慢して打ち消すものではなく、エスカレーションすべきという信号として扱う。抱え込んで一人で処理しようとすることが、いちばん危ない選択です。

立ち直りと関係修復——人格と業務を切り分け、事後対応で挽回する

理不尽な言葉を浴びた後、それを引きずらないための整理も、実務のうちです。鍵は、相手の言葉を「業務への指摘」と「人格への攻撃」に仕分けることです。業務の指摘は次に活かすために持ち帰り、人格を攻撃する部分は、そもそも受け取る必要のない言葉として手放す。相手の感情の激しさと、あなたという人間の価値は、まったく無関係です。一人で抱え込まず、同僚や上司に話して外に出すだけでも、受けたダメージはずいぶん軽くなります。

そして、自分に非があったクレームは、対応次第で関係を挽回できる場面でもあります。不満を持った相手に対して、逃げずに向き合い、原因を説明し、再発を防ぐ具体策を示す。不満を適切に解決してもらった顧客が、かえって前より強い味方になることは、実際によく起こります。一度は強い言葉を投げた相手が、誠実な事後対応を経て、最も頼れる取引先に変わることもある。叱責の直後こそ関係が動く分岐点だと捉えると、その一件は、避けたい災難から、関係を作り直す機会へと意味を変えます。

そもそも罵声は、なぜあなたに向かって飛んでくるのか

ここまで、初動、線引き、エスカレーション、立ち直りと、強い言葉を浴びたときの動き方を並べてきました。最後に、自分に非があって叱られる場面に限って、そもそも罵声とは何が起きている現象なのかを、少し分解してみたいと思います。理不尽な人格攻撃は前述のとおり別の話なので、ここでは扱いません。

叱責を「自分に向けられた個人的な怒り」として真正面から受け止めると、心はまっすぐ削られます。けれど、怒鳴っている相手の背後に目を移すと、たいていの場合、別の景色が見えてきます。工場を止められて激高する担当者は、その上で、自分が現場や上司から責め立てられる側に立たされています。担当を代えろと迫る相手は、社内で「なぜあの会社を使い続けるのか」と問われているのかもしれません。つまり、あなたに飛んでくる罵声の多くは、その人自身が抱え込んだ圧力が、逃げ場を失って、たまたま接点にいるあなたのところで放電しているのです。怒りの矢印は、確かにあなたを指しています。けれど、その矢が飛び出す根もとには、相手が背負っている困りごとがある。

この見方は、罵声を我慢するための気休めではありません。次の一手を変えるための、実用的な視点です。飛んでくる言葉そのものに反応して謝り倒したり、言い返したりしても、相手が抱えている圧力は消えません。だから、罵声を浴びたら、言葉の激しさの奥にある「この人はいま、誰に対して、何を守ろうとしているのか」を探る。工場を止めた担当者が本当に恐れているのが上司への報告なら、打つべき手は平謝りではなく、その報告に耐える再発防止策を一緒に用意することです。二度と来るなと言われて通い続けた営業が、四日目に相手を折れさせられたのも、罵声に耐えたからではなく、その裏にある相手の困りごとから逃げなかったからだと考えると、筋が通ります。罵声は、雷に似ています。落ちた場所が悪かったのではなく、どこかに溜まった圧力が放たれた結果として、そこに落ちる。だとすれば、避雷針のように受け流す技術を磨くより、その電気がどこで生まれたのかを見にいくほうが、はるかに遠くまで問題を解けるのだと思います。

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筆者:店長

営業と、競馬と、しゃべる植物。あっAIも。つい、いろいろ作ってしまう人です。

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