新築不動産営業の2つの営業スタイルについて 短期顧客の見抜き方と、値引きに逃げない追客の設計
新築マンションの不動産営業にはモデルルームでの営業と電話営業があります。モデルルームの営業は、予約をとって訪問している顧客のため、マンション購入意欲が比較的高い顧客が多いのに対して、電話営業の顧客は過去の顧客リストなどをベースにするため、今現在のマンション購入意欲はマチマチです。それぞれ違った営業スタイルが求められます。
商談のヒアリング設計について知見を広げたい方はこちら。質問の設計で、商談の質が変わります。
→ 営業のための「クライアントに対するヒアリング」をスムーズにする4つのStep|ヒアリングの質問例と深掘りの技術ーー相手が黙る瞬間を味方にする実践会話術
新築マンションの不動産営業の仕事内容
新築マンションの不動産営業ではどんな仕事を行うのかを挙げていきます。基本的には次の二つに分かれます。
モデルルームでの営業
それぞれの業務内容について詳しく見ていきましょう。
モデルルームでの営業活動
モデルルームでの接客は、興味を持って来訪するお客さんとの商談がメインになります。まずは室内を説明しながら案内し、その後テーブルについてさらに細かな説明を行います。
事前に記入してもらったアンケートを元に、どのタイプの部屋なら購入できるのか、資金計画はどのようになるのかを説明することになります。
その場で成約とならなくても、追客によって契約へとつなげるのが業務内容となります。基本的にはマンションの購入意欲を持っている顧客が相手なので、担当するマンションの魅力や購入メリットなどを伝えることが仕事となります。顧客の案内以外にも行う業務は色々とあります。契約が決まった顧客の書類作成や見学会の企画作り、事業主や広告業者との打ち合わせなども行います。
モデルルームは予め、予約を取った顧客に対して行われます。能動的に予約を取っている時点で何らかの形でマンション購入を検討していることになります。しかしながら購入意欲については千差万別です。すぐにでも購入しようと検討している客もいれば、長い目でいつか考えているという顧客もいます。
いかに短期顧客を見抜くか、いかに中期顧客を短期顧客へと引き上げるか、がポイントになります。特に物件内容が優れているケースは惹きつけ商材としての強い力を発揮します。その分価格は高くなりますが、その価格で前提で予約を取ってきているため、価格が高いということが即ち売れにくいということではありません。
電話による営業
モデルルームはある程度販売を終えた時点で撤収します。あとは売れ残った部屋を営業活動によって販売することになります。まず名簿を使って案内をする営業業務となります。主にモデルルームに来たが制約に至っていないお客様や、過去の顧客リストなどから順番にコールをしていきます。
アポイントを取って、土日に物件案内を行います。マンション購入を検討している人もマンション購入を考えている人も崑山している状態で営業しなければなりませんので、モデルルームでの案内とは異なるアプローチが必要になります。マンションの案内という形で電話をかけますが、相手のニーズをいかに引き出すかがポイントと言えます。
ほとんどが賃貸からの乗り換え客になりますので、マンション購入による節税がポイントになるケースもあれば、単純に支払いをしているのに賃貸は何も生まないが、分譲であれば資産が残るなどシンプルなトークがきくケースもあり、顧客が抱えている将来の不安を的確に見抜き、ニーズにつなげることが必要になります。
モデルルームで「短期顧客」を見抜く3つのサイン
来場した顧客の購入意欲を、表情や会話の盛り上がりで判断していないでしょうか。
意欲の高さは、雰囲気ではなく、顧客が自分から踏み込んでくる「行動」に表れます。見るべきサインは3つです。
ひとつ目は、資金計画の話にこちらから水を向けたとき、年収や自己資金、既存ローンの残高まで具体的に答えてくれるかどうか。数字を出せる顧客は、すでに購入を自分ごととして計算しています。ふたつ目は、入居時期に動かせない期限があるか。「子どもの入学まで」「賃貸の更新のタイミングで」といった締め切りを持つ顧客は、検討を先送りできません。3つ目は、意思決定者が同席しているかどうかです。夫婦や親が揃って来場していれば、その日のうちに家庭内で相談が進みます。
この3つが揃えば短期顧客、ひとつも無ければ中期顧客。そう切り分けて、追客の濃度を変えていきましょう。
判断に迷うのは、サインが混ざる顧客です。数字は具体的に出すのに同席者がいない、というケース。ここで即決を狙うのは得策ではありません。持ち帰って家族に見せる前提で資料を組み立てます。手元に残る一枚に、月々の返済額と、いま払っている家賃との差を並べておく。それだけで、話し合いの場でこちらの代わりに説得してくれます。
逆に、中期顧客を短期へ引き上げたいなら、こちらの都合で連絡を重ねるのではなく、締め切りを一緒に作ること。「このタイプは残り2戸で、次の価格改定が来月です」と、
動かせない事実を一つ渡すだけで、顧客の時間軸は一気に手前へ寄ってきます。
いろいろな営業組織を見てきて、成績が安定している営業に共通していたのが、「顧客の温度を雰囲気で測らない」ことでした。伸び悩む営業ほど、商談が盛り上がった・表情が良かったといった手応えで見込みを判断してしまう。でも実際に受注データと突き合わせると、成約に効いていたのは会話の盛り上がりではなく、顧客が"自分から踏み込んできた行動"のほうでした。
具体的な数字を自分から出してくるか、動かせない期限を持っているか、意思決定者が同席しているか——この記事の3つのサインは、不動産に限らずあらゆる商材で通用します。私が営業改善に入るときも、まず「あなたが見込みを判断している根拠は、感触ですか、それとも相手の行動ですか」と問います。感触で見込みを立てている限り、追客の濃淡を間違え続けるからです。
電話営業は「なぜ?」を繰り返さない
売れ残った部屋を名簿から掘り起こす電話営業では、ニーズを引き出す質問の設計が成果を分けます。ありがちな失敗は、「なぜ引っ越したいのですか」「なぜ今なのですか」と深堀りを続けてしまうこと。想像もつかない答えにたどり着いたところで、こちらに解決策がなければ商談は前に進みません。
賃貸からの乗り換え客であれば、抱えている不安はおおむね決まっています。家賃を払い続けても資産が残らないこと、更新料や老後の住まいへの漠然とした心配。このどちらかに触れるだけで十分です。「今の家賃を、あと何年払い続ける予定ですか」と一問投げれば、顧客は自分で総額を計算し、資産として残る分譲との差を意識し始めます。
深く掘るのではなく、顧客が自分で気づく問いを一つ置くこと。これが電話越しにニーズを立ち上げる最短の手順です。
電話の目的は、その場で売り切ることではありません。土日の物件案内までこぎ着けること。だからこそ「一度見てから判断されてはいかがですか」と、見学のハードルを支払いの判断より手前に置きます。「まだ検討中で」と返されたら、粘るより、次に連絡してよいタイミングだけを押さえて切り上げましょう。名簿営業は一度で決まる仕事ではありません。間隔を置いて三度、四度と接点を重ねるうちに、賃貸の更新や昇給といった顧客側の事情が動く瞬間に立ち会えるか。そこが勝負だからです。
このセクションの「なぜを繰り返すな」という指摘は、私が営業同行で最も多く直してきたポイントの一つです。若手ほど、ヒアリング=深掘りだと思い込んでいて、「なぜですか」「その理由は?」と掘り続ける。でも、こちらに解決策のない答えまでたどり着いても商談は前に進みません。掘ることが目的化してしまうんです。伸びる営業がやっていたのは逆で、"顧客が自分で気づく問いを一つ置く"ことでした。
この記事でいう「今の家賃を、あと何年払い続ける予定ですか」がまさにそれで、顧客が自分の頭で総額を計算し始める。私はよく「相手を尋問するな、相手が自分で答えを出せる問いを一つ渡せ」と伝えていました。質問の巧拙は数ではなく、相手が自分で気づくきっかけを作れるかどうかで決まります。これは金田流に言えば、"教えるより言語化させる"を顧客に対してやっている、ということでもあります。
迷っている顧客に、値引きで応じてはいけない
追客の最終盤で「もう少し安ければ」と言われたとき。値引きは、最も安易で、最も損な一手です。1000円の入園券を900円に下げても、来園者数が変わらなければ利益はそのまま100円減る。マンションも同じで、
値引き額はほぼそのまま利益の毀損額になります。しかも一度下げた価格は次の顧客の基準になり、組織全体の利幅を削っていきます。
ここで効くのは、価格ではなく「他を選び直す手間」に目を向けさせることです。顧客が安い物件に流れきれないのは、単に金額の問題だけではありません。別の選択肢を家族や上司に説明し直す手間や、選び直す不安を、無意識に避けているからです。「この立地とこの資金計画を、ゼロから探し直す時間をどう見ますか」と問い、乗り換えにかかるコストを目に見える形にしていく。値引きの100円を守ることが、そのまま利益を守ることにつながります。
それでも価格が最後の壁になるなら、値札そのものは動かさず、金額以外の条件で応えるという手があります。入居後の不安を消すオプションを付ける、引き渡しの時期を顧客の都合に合わせる、家具やカーテンの相談まで引き受ける。同じ「譲歩」でも、利益を削らずに顧客の満足度だけを押し上げられる余地は、価格の外側にいくらでもあります。
安さで並ぶのではなく、探し直す面倒を上回る価値を一つ言い切れるかどうか。その一言を、目の前の物件ごとに事前に用意できているか。そこが、3年目からの分かれ道になります。
値引きの話は、私がどの営業組織に入っても必ず最初に手をつける領域です。営業からは毎日のように「あと少し下げれば決まる」という声が上がりますが、その一言がどれだけ利益を削るかを正確に答えられる人はほとんどいません。ある支援先で担当者ごとの平均値引き率と受注率を並べたところ、値引きを多用する営業ほど受注率が高いわけではなく、"下げなくても決まる相手にまで下げている"人が何人も炙り出されました。
しかも一度下げた価格は次の顧客の基準になり、組織全体の利幅を静かに削っていく。私が現場に必ず持ち込むのが、この記事と同じ発想です。価格を動かす前に、「顧客がゼロから選び直す手間」に目を向けさせる。値札は動かさず、時期や付帯条件など"利益を削らない譲歩"で満足度だけを上げる。安さで並ぶのではなく、探し直す面倒を上回る価値を一つ言い切れるか。この一言を物件ごと・案件ごとに事前に用意できているかが、利益を守れる営業とそうでない営業の分かれ目でした。
上司と一緒に読みたい一本
店長
Xアカウント:@nishi_sales_ai
新卒で大手IT企業に入社し、飛び込み営業から深耕営業、大手企業担当まで第一線で経験を積む(表彰歴多数)。その後、事業企画・営業企画部門で経営に近い立場から営業組織と数字に向き合い、10年勤続を経て独立。営業組織の改善に特化したコンサルタント企業を立ち上げる。
コンサルタントして数々の現場に入りつつ、自ら営業特化の転職エージェントも運営。近年はAIを活用した営業組織の業務改善・生産性向上プロジェクトに携わる。現場の最前線と経営の両方を見てきた視点から、営業3年目前後がぶつかる壁を越えるための実践知を発信する。
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