営業マンの離職率が高い業界の特徴|辞める側・残す側から読み解く定着

営業マンの離職率が高い企業というのは給与が低い、労働時間が長い、など簡単にイメージがつく一方で「業界そのもの」が営業マンにとって働きやすい環境とは言えない業界もあります。社会にとっては必要な仕事である一方で、どのような業界において、営業マンの離職率が高くなってしまう傾向にあるのでしょうか?

営業マンの離職率が高い業界の特徴

企業単位ではなく業界全体で、離職率が高い業界が存在します。業界構造上そうなってしまうという表現が正しいかもしれません。これらの仕事は社会的には必要なものもたくさんありますが、決して営業マンにとって働きやすい業界とは言えないようです。どのような業界が離職率が高くなる傾向にあるのでしょうか?

各企業ではなく各業界に目を向けた時に、営業マンの離職率が低い業界の特徴として下記のようなものを挙げることができます。

  • 個人向け営業の業界
  • 営業マン一人当たりの売上額が低い業界
  • 商品を差別化しにくい業界
  • 営業先が富裕層の業界
  • 衰退業界
  • 企業間の競争が激しい業界

個人向け営業の業界

圧倒的に法人営業よりも離職率が高いのが個人向けの営業マン。ただし販売職ではなくあくまでも顧客先を訪問する営業スタイルととっているケースです。

アポが取れない

個人向けの営業は基本的に訪問販売のスタイルを取ります。しかし自身に置き換えると、自宅にアポもなしに訪問してきた訪問販売員に時間を取るでしょうか。よほど困っているタイミングではない限り、歓迎しないでしょう。逆を返すと訪問目標売上目標を持つ営業マンにとっては辛い環境と言えます。

単価が低い

個人向けの営業は法人営業と比べて、圧倒的に単価が低いです。これだけの労力でこれだけの売上かという空さがつきまといます。

土日出勤

業界によっても異なりますが、基本的に顧客対象が自宅にいる時や時間がある時が営業時間になります。従って土日出勤の個人向け営業の業界は少なくありません。メリットもありますが、色々な予定の調整や結婚アドを考えると退職理由になりえます。

業界イメージ

金融リテール・不動産

営業マン一人当たりの売上額が低い業界

一人当たりの目標額が低いということは、人件費にかけるコストも低くなります。一人の営業マンが年間500万しか売上をあげることができないのに、給与を500万払うことはできません。つまり一人当たりの売上額が低い業界は自ずと給与が低くなる傾向にあり、退職理由に繋がるようです。

業界イメージ

新聞・各種訪問販売・旅行

商品を差別化しにくい業界

例えば技術が拮抗していたりして商品の差別化が、しにくかったり、顧客への提供価値がシンプルで単純な業界については、価格で優位性を保つという思考になりがちです。となると、当然利益幅は薄くなり、人件費をかけることができないだけでなく、顧客と営業マンの関係性も他社乗り換えのカードを持つ顧客が上位になりがちです。そうした環境では顧客と営業マンが対等な関係性を築くことが難しく、営業本来以外の仕事にも、顧客からの要望であれば対応せざるを得ず、長時間労働などにつながり、ひいては退職理由につながるということになります。

業界イメージ

電気メーカー・テレアポ代行・物流

営業先が富裕層の業界

医者や弁護士などの富裕層を相手にした業界は、基本的に退職率が高くなる傾向にあります。職業に貴賎はありませんが、選民意識がある人がいるのも事実です。富裕層相手のビジネスは学びや出会いなどメリットもたくさんありますが、育った環境が異なるなどの理由でそもそも対等な人間として付き合う難しさもあるため、ビジネスの楽しさを感じるのが難しい側面もあります。ほとんどはそういう人ではなくとも、顧客のうちの一人がそういう人であれば、ポジティブな気持ちを打ち消すほどのネガティブな気持ちにさせられるということもあるようです。

業界イメージ

MR

衰退業界

マーケット全体が盛り下がっている業界のことを斜陽産業といいます。基本的にTOPシェアを誇るリーダー企業をはじめ多くの業界プレイヤーの企業が昨年対比で売上を下げるため、その対応策として、利益確保のためにあらゆるコストカットや業務改善が施策として講じられます。そうした環境では勉強になったり身につくこともたくさんありますが、決して雰囲気が明るいとは言えない部分があります。また目標額がなかなか届きにくいラインで張られることも多くなり、未達成機会が増え、モチベーションの低下を招き退職につながるという構造になっています。

業界イメージ

パチンコなどのアミューズメント

新規開拓がメインの業界

新規開拓は既存顧客の対応の数倍の工数がかかると言われています。つまり同じ100万円の売上をあげるためには、既存顧客であれば1週間の努力で済むが新規顧客の場合は3倍も5倍も7倍もかかるということです。これはつまり既存顧客から得た利益を新規顧客の開拓に投資をしているということになります。本来の価値以上の値付けを既存顧客に対してしていると言い換えることもできます。こうした環境では顧客からのクレームも起きやすいですし、そもそもの信頼関係が薄い状態でクレーム対応にあたる辛さもあります。

そして何よりも新規開拓自体が個人向けの営業同様アポが取りづらかったり、体力面できつかったり、将来的に続ける自信を持てないという側面は否めません。これらが最大の退職理由として上がるポイントです。

業界イメージ

小規模広告代理店

企業間の競争が激しい業界

商品の差別化ができない業界や価格競争が激しい業界に通ずるものがありますが、企業間の競争が激しい業界においては顧客に対するアプローチはより強いものを求められます。また明確な競争相手が存在すればするほど、本来の顧客提供価値とは離れた「勝つための仕事」を求められる傾向にあります。顧客価値の追求という長期的な競争優位の源泉を生み出すことよりも、短期的な売上利益に目がいってしまうのが、企業間の競争が激しい業界の特徴です。当然ですが、競争の最前線にいる営業マンが疲弊することは言うまでもありません。

業界イメージ

小規模広告代理店・Netマーケティング関連

辞める理由は「業界」ではなく「消耗の積み上げ」で決まる

業界の輪郭を眺めると離職のしやすさは見えてきますが、実際に人が辞表を出す瞬間は、もっと手前の小さな出来事の積み重ねで決まります。ある調査では、二十代から四十代の営業職のうち七割近くが「最近、退職を検討した」と答えたと報告されています。これは特定の業界に限った話ではありません。営業という仕事そのものが、消耗を溜め込みやすい構造を抱えているということです。

辞める理由を分解すると、大きく三つの層に分かれます。一つ目は「入口の摩擦」。新規開拓で断られ続ける、アポが取れない、といった日々の小さな否定です。断られること自体は業務の一部ですが、経験が浅いうちは「自分の力不足」「向いていない」と受け取ってしまい、実力の問題と適性の問題を切り分けられなくなります。二つ目は「評価の納得感」。動いた量と手にした数字、そして評価が一本の線でつながっていないと感じたとき、人は努力の意味を見失います。三つ目は「生活との折り合い」。土日商談や夜間の対応が続き、私生活の予定が常に仕事に譲歩を強いられる状態です。

重要なのは、この三層はどれか一つが致命傷になるのではなく、複数が同時に効いたときに離職へ傾くという点です。断られ続けても評価が納得できていれば持ちこたえられますし、評価が渋くても生活リズムが守られていれば折れにくい。逆に、三つが揃った瞬間に「この環境は自分に合っていない」という結論が一気に固まります。辞める側の頭の中で起きているのは、業界への失望ではなく、複数の摩擦が閾値を超えた瞬間の見切りなのです。

入社前に高離職の職場を見抜くチェックポイント

転職で営業職を選ぶとき、求人票の「離職率」という一語だけで判断するのは危険です。数字は出し方でいくらでも見え方が変わります。面接や職場見学の場で、次の五点を具体的な質問に落として確認してください。

一つ目は「配属先の残存率」。全社の離職率ではなく、自分が入る部署に直近三年で何人が入り、何人が今も在籍しているかを尋ねます。全社平均は正常でも、特定部署だけが回転扉になっているケースは珍しくありません。二つ目は「目標の決め方」。前年実績の積み上げなのか、市場と無関係に上から降りてくる数字なのかで、達成の現実味がまるで違います。未達が前提の目標が張られる職場は、モチベーションが構造的に削られます。三つ目は「新規と既存の比率、そしてリードの供給源」。新規開拓が主戦場で、しかもリードを自力で掘る前提なら、入口の摩擦は覚悟が要ります。会社が広告やインサイドセールスで供給してくれるのかを確認します。四つ目は「評価が売上単独か、プロセスも見るか」。行動量や商談の質を評価する仕組みがあるかどうかは、結果が出るまでの数か月を生き延びられるかに直結します。五つ目は「繁忙期の平均退社時刻と休日出勤の実態」。制度上の残業時間ではなく、忙しい月に現場が何時に帰っているかを、できれば現場社員に聞きます。

これらは面接官が用意した回答ではなく、その場で数字や事実で答えられるかどうかを見る質問です。言葉を濁す、精神論で返す、といった反応そのものが、その職場の情報の透明度を教えてくれます。

辞めさせない組織がやっている三つのこと

マネージャや営業企画の立場なら、離職を「本人の根性の問題」に帰さず、設計で防ぐ発想が要ります。定着している組織に共通するのは、次の三つです。

第一に、入社から最初の三か月を「成果」ではなく「立ち上がり」として設計していること。新人が最初にぶつかる断られ体験を、成績とは切り離して扱い、同行やロールプレイで場数の質を担保します。断られた回数を責めるのではなく、断られ方から次の一手を一緒に言語化します。これだけで入口の摩擦の受け止め方が変わります。第二に、目標を売上の数字だけでなく、週次の行動量に翻訳して手渡していること。月末の未達に怯えるより、今週やるべき架電数・訪問数・提案数が見えているほうが、人は動けます。第三に、一対一の面談で「感想」ではなく「事実」を聞いていること。「調子どう?」ではなく「先週の商談で顧客が実際に何と言ったか」を尋ねると、本人も気づいていない詰まりが表に出ます。

離職の予兆は、報告の質に現れます。事実で語っていた人が言い訳で語り始め、同行を避けるようになり、数字の話をはぐらかすようになります。この変化を見逃さず、辞表が出る前に対話を持てるかどうかが、残す側の分かれ目になります。

※著者の体験

「量は質を凌駕する」を掲げる営業組織を、私は当事者として内側から見てきました。
固定電話の受話器を左手にテープでぐるぐる巻きにして、リストの上から順にかけ続ける——ドラマでしか見たことのないような超・行動量マネジメントの現場です。
ある時、私は取締役との定例に一つの分析を持って臨みました。受注をゴールに商談数やコール数を追わせているのに、コール量と受注数の相関係数が -0.32、ほぼ逆相関だったんです。今でもはっきり覚えています。たくさんコールした人ほど受注が多い、ではなく真逆で、商談で埋まって忙しい人ほどコールする時間がなく、商談がない人ほどコールしていた。
ここから私が学んだのは、量そのものを否定する話ではありません。むしろアポが取れない若手は、勝ちパターンを掴むまで量をやり切るしかない。問題は、量を「立ち上がりの手段」ではなく「評価の目的」にしてしまうと、現場が壊れるということでした。だから記事にある「最初の三か月を成果と切り離して立ち上がりとして設計する」「売上でなく週次の行動量に翻訳して手渡す」は、私の実感と完全に一致します。断られた回数を責めるのではなく、断られ方から次の一手を一緒に言語化する。この一手間があるかないかで、入口の摩擦の受け止め方がまるで変わりました。

そもそも「離職率が高い」とは何を測った数字なのか

ここまで辞める側・入る前・残す側の視点を並べてきましたが、最後に一度立ち止まって、「離職率」という指標そのものを疑ってみたいと思います。私たちはつい、離職率の高い業界を「悪い業界」、低い業界を「良い業界」と読み替えてしまいます。けれども離職率は、その業界の善悪を測る温度計ではありません。それは、その環境が求める働き方と、そこに集まった人の性質との「合わなさ」が、たまたま数字として表面に出たものです。

同じ職場でも、断られ続ける日々を「打席が多い」と感じる人にとっては成長の場であり、「否定され続ける」と感じる人にとっては消耗の場になります。土日商談を、生活の自由度と引き換えの平日休みと捉える人もいれば、家族との時間を削られる苦痛と捉える人もいます。富裕層や専門職を相手にする現場を、刺激と学びの多い環境と受け止める人もいれば、間合いの取りづらさに疲れる人もいます。つまり離職率とは、環境の属性そのものではなく、環境と人の相性のミスマッチ率なのです。だからこそ、同じ業界の中でも辞めない人は辞めませんし、低離職の業界に転じても合わない人は辞めていきます。数字を業界ラベルとして受け取った瞬間に、私たちは「自分にとってどうか」という一番大事な問いを手放してしまいます。

さらに踏み込むと、高い離職率が必ずしも失敗を意味しないビジネスモデルも存在します。短期間に多くの人を採用し、成果を出せる人が残り、合わない人は早く次へ向かう――そうした回転を前提に組み立てられた事業では、離職は設計の一部として織り込まれています。そこで問われるのは、その回転が「使い捨て」なのか、それとも「早い見極めと相互の撤退」なのか、という質の違いです。短い在籍期間の中でも、営業として通用する型を持ち帰れるなら、その職場は本人にとって無駄ではありません。回転の速さそのものを責めるのではなく、その回転が人を育てているのか、ただ擦り減らしているのかを見分ける目のほうが、はるかに実用的です。

だとすれば、求職者が本当に見るべきは離職率の高低ではなく、「自分がその環境の何を得意とし、何を消耗と感じるか」という相性の解像度です。そして組織が向き合うべきは、離職率をゼロに近づけることではなく、辞める人が「合わなかっただけで、恨みは残らない」状態で送り出せているか、残る人に納得の理由を渡せているか、という定着の中身です。数字を下げることを目的にした瞬間、本質はすり抜けます。離職率は結果として動く指標であって、追いかける的ではありません。合わなさを見立てる目と、消耗を溜めさせない設計――この二つを持てたとき、初めて数字は意味を持ち始めます。

※著者の体験

「そこそこ育った営業が、成果を出せるようになった頃に辞めていく」——この現象を、私はいくつもの量マネジメント型の組織で見てきました。
長らく不思議だったのですが、ある時ふと腑に落ちた瞬間があります。その組織で「イケてる」とされる営業マンの提案資料を、たまたま何枚か目にしたんです。書かれている顧客の課題は一般論の域を出ず、資料は汎用企画書フォルダのスライドをつぎはぎしただけ。正直、顧客の課題に刺さるクオリティには届いていなかった。何人かの"できる"とされる人の商談に同席しても、同じでした。でも彼らが売れる理由もよくわかった。
畳みかける人、焦りをあおる人、お値打ち感と期限で押す人——スタイルは様々でも、共通して顧客に愛される人たちだったんです。
つまり量がもたらしたのは、質やスキルというより、関係性のグリップ力でした。そして事業が見ていたのは量と成果だけで、質のKPIはただの一度も存在しなかった。
辞めていった人たちの本音は、たぶん「お客さんは好きだけど、仕事自体が面白いとは思わない」だったと思います。この経験から確信したのは、離職率は業界の善悪を測る温度計ではなく、環境と人の相性のミスマッチ率であり、時にその環境が「成功体験を積ませる設計になっているか」を映す鏡でもある、ということでした。数字を下げること自体を目的にした瞬間、この本質はすり抜けてしまいます。

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筆者:店長

営業と、競馬と、しゃべる植物。あっAIも。つい、いろいろ作ってしまう人です。

→ 店長の正体(詳しいプロフィール)

店長

Xアカウント:@nishi_sales_ai 新卒で大手IT企業に入社し、飛び込み営業から深耕営業、大手企業担当まで第一線で経験を積む(表彰歴多数)。その後、事業企画・営業企画部門で経営に近い立場から営業組織と数字に向き合い、10年勤続を経て独立。営業組織の改善に特化したコンサルタント企業を立ち上げる。 コンサルタントして数々の現場に入りつつ、自ら営業特化の転職エージェントも運営。近年はAIを活用した営業組織の業務改善・生産性向上プロジェクトに携わる。現場の最前線と経営の両方を見てきた視点から、営業3年目前後がぶつかる壁を越えるための実践知を発信する。

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