不動産営業の3つの光と影とは?仕事内容の魅力と懸念点|光と影の、その中身へ──種類で変わる実態、宅建という土台、影を和らげる実務

不動産営業には3つの光と影が存在します。それぞれ給与面、成果主義、スキルという面において働き手にとって光のようなプラスの部分と影のようなネガティブな部分があります。歩合給の割合が高いということは成果を出す人にとっては光ですし、成果が出ない人にとっては影です。成果主義は、自立心を養うという光と成果を出すために長い労働時間が必要という影があります。スキルについては強い提案力が身につくかわりに、会社から育ててもらうということが難しい業界であります。

不動産営業の3つの光と影とは?仕事内容の魅力と懸念点

不動産営業には一つの事実に対して光の部分と影の部分があります。言い方を捉えると魅力として光の部分を多く取り上げる人もいますし、影の部分が退職理由になることも。このような不動産営業の光と影について3つの要素を取り上げたいと思います。

給与面の光と影

不動産営業における給与といえば、インセンティブや歩合給が極めて特徴的です。ベースは他業界よりも低く設定されているものの歩合による給与の上乗せ期待額が非常に大きいと言えます。給与面における光と影とは一体どのようなものなのでしょうか。

成果を出せば高い収入が得られる

フルコミッションとなればかなりの高収入が期待できます。もちろんしっかりと成果を出すことが前提ですが、若くても同年代よりはるかに高い収入を得られます。さらに基本的に個人プレーとなるので、自分のスキルを自分なりに高めることで、やりがいを感じることにもなります。1000万プレーヤーはそこら中にいます。中には経営者以上に給与をもらう営業マンもいるほどです。

成果が出ないと給料はとにかく安い

不動産営業の基本給はかなり低く設定されています。つまり成果を出さなければ生活することさえ難しくなります。これが離職率が高い理由です。しかし成果が出ていたとしても、不安定さがプレッシャーとなり、それに耐えることができずに辞める人も少なくありません。

成果主義がもたらす光と影

自立心が備わる

不動産営業はインセンティブによって給料の額が決まります。自分の成果が収入に直結するために、全ての結果は自分の行動次第であることを強く自覚します。これはある意味、経営者にも似た感覚となるので、会社に頼らず自分で道を切り開くという習慣が備わります。実は成果を出せる営業マンは特に、この自立心が高いものです。成果を出すためにはどう取り組めば良いのかを常に考えるからです。

労働時間は長くなる傾向に

不動産営業は多くが消費者向けの仕事となり、休日が最も忙しくなってしまいがちです。顧客が休みの日でなければ交渉できないというケースが多いからです。あるいは相手が仕事の終わった後に商談することも多いので、どうしても勤務時間は長くなりますし、休日出勤も多くなります。このように成果を追い求めるためにはどうしても長い時間働く、人が休んでいる時に働くという側面があることは否めません。低労働高成果という生産性の高い働き方がしづらい業界とも言えます。

スキル面における光と影

実力をつければ他業種への転職も有利

不動産営業で成果を出す秘訣は、いかに提案力を備えるかということです。高額な買い物なので、よほどの購入意欲がなければ契約にはつながりません。つまりお客さんの購入意欲を引き出せる提案力があれば、大抵の仕事でその能力を発揮できることになります。

そしてこの提案力こそが営業として他業界でも活躍できるスキルであり秘訣の部分となります。そこに存在する「モノ」を、スペックではなくいかに価値を見出し、伝えることができるか、という点はどのような業界の営業にも求められる資質であり、不動産営業はその最たるものと言えるでしょう。

万人に役立つノウハウは存在しない

営業という仕事は昔ほど根性論で語られることはなくなりました。マネジメントも科学的に行われますが、高い成果を出すためには何かしらの“感覚”が必要です。これはモノ作りの職人にも似たものですが、万人で共有できるようなノウハウにはしにくものです。つまり営業としてのスキルアップは自分自身で感覚を掴むということが必須となります。

他の人のマネをしながら、なんとか自分の中の勝ちパターンを掴まない限りは決して継続した成果を出すことが難しいです。それを期待できるかどうかを入社前に自分自身で判断することが難しいために、やってみないとわからないというリスクを飛び越えて入社しなければならないという影が存在します。

「不動産営業」は一括りにできない──種類で、光も影も変わる

給与・成果主義・スキルの三つの光と影を見てきましたが、その強さや現れ方は、実は「どの種類の不動産営業か」で大きく変わります。まず、自分が向き合うのがどれなのかを知ることが出発点です。

大きく分けると、賃貸仲介、売買仲介、新築販売、投資用不動産の四つがあります。賃貸仲介は、一件あたりの単価は低いものの、件数が多く回転が速いです。日々たくさんの顧客と接し、比較的短いサイクルで成果が出ます。売買仲介は、単価が高く、一件の契約に数か月かかることもある長期戦です。歩合の振れ幅も大きくなります。新築販売は、モデルルームや広告からの反響を受ける「反響営業」が中心で、飛び込みは少なめです。投資用不動産は、相手が法人や富裕層になり、収益や税務の知識が問われます。同じ「不動産営業」でも、単価も、労働時間も、求められる知識も、まるで違います。歩合の高収入という光が最も大きいのは売買や投資用ですが、その分、成果が出ないときの影も濃くなります。逆に賃貸仲介は、収入の振れ幅が比較的小さいぶん、光も影もマイルドです。ひとくくりの「不動産営業はきつい/稼げる」という話を鵜呑みにせず、種類ごとの実態で捉えることが、最初の一歩になります。

※著者の体験

「不動産営業はきつい/稼げる、を一括りで語ると必ず実態を外す」——これは、私が営業組織の改善コンサルとして、ある不動産会社の支援に入って痛感したことです。
創業20年ほど、営業30名ほどの会社で、扱いは売買仲介が中心でした。入った当初、経営陣は「うちは離職率が高い、営業の根性が足りない」と言っていたのですが、種類ごとに分けて見ると景色が変わりました。
同じ社内でも、賃貸仲介の担当は単価が低いぶん件数が多く回転が速くて、収入の振れ幅も小さい。一方、売買仲介は一件の契約に数ヶ月かかる長期戦で、歩合の振れ幅が桁違いに大きい。
同じ「不動産営業」なのに、単価も労働時間も、成果が出ないときの影の濃さもまるで違ったんです。会社は全員を一律の目標と評価で回していたので、売買の長期戦を戦っている若手が、数字が出るまでの数ヶ月で心を折られて辞めていた。私が最初にやったのは、根性論を疑って、業態ごとに評価とフォローの設計を分けることでした。種類ごとの実態で捉え直しただけで、離職の構造がくっきり見えたんです。

宅建という、光を大きくする土台

不動産営業を語るうえで避けて通れないのが、宅地建物取引士、いわゆる宅建の資格です。これは、この業界特有の「会社が育ててくれない」という影を、自分の力で埋められる、数少ない客観的な足場になります。

宅建が重要なのは、単なる箔付けではないからです。不動産取引に必須の「重要事項説明」は、宅建の有資格者にしかできません。つまり、資格の有無が、担当できる業務の範囲を直接左右します。多くの会社で資格手当がつき、そのまま収入に反映されますし、転職の際にも明確な評価材料になります。さらに、宅建の勉強で身につく法律や税務の知識は、そのまま提案の質を押し上げます。「なんとなくおすすめ」ではなく、「法的にこうで、税制上こうなるから、あなたにはこれが合う」と根拠を持って語れる営業は、高額な買い物を前に迷う顧客の信頼を勝ち取れます。感覚と経験がものを言う世界だからこそ、誰でも取れる資格という客観的な土台を早めに固めておくことは、影を小さくし、光を大きくする、確実な一手です。未経験からこの業界に入るなら、まず狙うべきはここです。

影を和らげる、二つの実務

この業界の影として、「万人に使えるノウハウがなく、我流で感覚を掴むしかない」ことと、「休日出勤や長時間労働になりやすい」ことが挙げられていました。この二つは、業界の構造として完全にはなくせませんが、和らげる工夫はあります。

一つ目の我流の壁には、「盗んで、言語化する」で立ち向かいます。感覚は共有しにくいと言われますが、それは多くの人が感覚を感覚のまま放置しているからです。トップ営業の同行に食らいつき、その人がどの場面で何を言い、どう間を取ったのかを観察して、自分の言葉でメモに落とします。そして自分の成約案件も、「なぜ決まったか」を毎回振り返って言語化します。こうして掴んだ感覚を型に変えていけば、我流にたどり着く時間を大きく縮められます。二つ目の長時間の影には、時間の使い分けで対処します。顧客の休日に商談が集中するのは変えられませんが、平日を「仕込み」の時間、休日を「決めにいく」時間、とはっきり分けます。平日のうちに追客や資料準備、物件の下見を済ませ、顧客と会える休日は、クロージングに集中します。だらだら長く働くのではなく、時間帯ごとに役割を決めるだけで、同じ労働時間でも成果は変わります。影を「仕方ない」と諦めるか、和らげる工夫をするかで、この業界での寿命は大きく変わります。

※著者の体験

「感覚が共有できないのは、多くの人が感覚を感覚のまま放置しているからだ」——これは、私が例の不動産会社(創業20年ほど、営業30名ほど)で、我流の壁に手を入れたときの実感です。
その会社もご多分に漏れず、トップ営業のノウハウが一子相伝で、「見て盗め」の世界でした。売買仲介は一件が高額で、購入意欲を引き出す提案力が全てなのに、その提案力がどう作られているのか、本人すら言葉にできていなかった。
そこで私がやったのは、トップ営業の商談に若手を同行させ、「どの場面で何を言い、どう間を取ったか」をその場で若手にメモさせ、自分の言葉で型に落とす作業でした。
あわせて、成約案件を毎回「なぜ決まったか」で振り返らせて言語化させた。感覚を型に変えていくと、我流にたどり着くまでの時間が大幅に縮んだんです。
もう一つ入れたのが、時間の使い分けでした。顧客の休日に商談が集中するのは変えられないので、平日を「仕込み(追客・資料準備・物件下見)」、休日を「決めにいく(クロージング)」とはっきり分けさせた。だらだら長く働くのではなく、時間帯ごとに役割を決めるだけで、同じ労働時間でも成約率が変わりました。影は「仕方ない」で諦めず、和らげる工夫で寿命が延びるんです。

そもそも、光と影は「選べない」

ここまで、種類ごとの実態、宅建という土台、影を和らげる実務を見てきました。最後に、「光と影」という捉え方そのものを、もう一段掘り下げてみたいと思います。

三つの光と影を並べて眺めると、あることに気づきます。給与の光と影も、成果主義の光と影も、スキルの光と影も、実はバラバラの三組ではなく、たった一つの構造から生まれているのです。その構造とは、「成果への責任が、丸ごと個人に乗っている」ということです。歩合で青天井に稼げるのも、稼げないと生活が苦しいのも、自立心が鍛えられるのも、長時間働くはめになるのも、会社が型を教えてくれず我流になるのも――すべては、「会社が守らず、個人に委ねる」という同じ一点から派生しています。言い換えれば、不動産営業とは、雇用の形をとった個人事業に限りなく近い働き方なのです。この構造が見えると、問いの立て方が変わります。「不動産営業は自分に向いているか」ではなく、「自分は、成果の責任を丸ごと引き受ける働き方を望むのか」。これは、職種の好き嫌いではなく、働き方のモードそのものの選択です。

そして、ここが肝心なのですが、光と影は、片方だけを選ぶことができません。歩合の高収入という光だけを取って、収入の不安定さという影を避けることはできません。自立心が育つという光だけを享受して、長時間労働という影を拒むこともできません。両者は、同じコインの表と裏だからです。一つの構造が生む果実と代償を、セットで引き受けることになります。だとすれば、成熟した選択とは、光を数え上げてわくわくすることでも、影を数えて怯えることでもありません。「この影を、自分は引き受けられるか」を、正直に自分に問うことです。

多くの人は、光に惹かれてこの世界に飛び込み、影に耐えられずに去っていきます。魅力的な側面ばかりを見て決めた選択は、影が現れたときに折れやすくなります。逆に、最初から影のほうを直視し、「この不安定さ、この長時間、この孤独を、それでも引き受けられる」と納得して入った人だけが、長く続き、やがて光を大きく育てていきます。光に誘われるのではなく、影を受け入れられるかで決めます。この順番を間違えないことが、光と影のある世界で、光の側に立ち続けるための、最初の条件なのだと思います。

※著者の体験

「三つの光と影は、実はバラバラの三組ではなく、たった一つの構造から生まれている」——これは、私が不動産営業の組織を外から支援して、一番腹落ちした発見でした。
歩合で青天井に稼げるのも、稼げないと生活が苦しいのも、自立心が鍛えられるのも、長時間働くはめになるのも、会社が型を教えず我流になるのも——全部、「成果への責任が丸ごと個人に乗っている」という同じ一点から派生している。
つまり不動産営業は、雇用の形をとった個人事業に限りなく近い働き方なんです。この構造が見えてから、私は採用の入口を根本から変えるよう提案しました。
それまでその会社は「高収入」という光ばかりを打ち出して人を集めていたのですが、光に惹かれて入った人ほど、影が現れた瞬間に折れて辞めていた。だから逆に、面接の段階で「この不安定さ、この長時間、この孤独を、それでも引き受けられますか」と影のほうを正直に直視させる設計にした。
すると、入口の人数は減ったのに、定着率がはっきり上がったんです。光と影は同じコインの表と裏で、片方だけは選べない。光に誘われて入るのではなく、影を引き受けられるかで決める——この順番を採用と育成の両方に組み込んだことが、その会社の離職構造を一番大きく変えました。

筆者:店長

営業と、競馬と、しゃべる植物。あっAIも。つい、いろいろ作ってしまう人です。

→ 店長の正体(詳しいプロフィール)

Noteも書いてます

営業を"言語化""構造化"する話を、ゆるめに。

【04】アホほど答えを知りたがるというパワーワード|晴れ時々AI@西新宿

アホほど答えを知りたがるというパワーワード 僕は「具体と抽象」というキーワードを日本で一番使うオトコかもしれない。 「AIを使って商談文字起こしを自動集約するためには、GASが必要」 これを抽象とすると 「Meetの文字起こしがGmailに飛んでくるのを未読のもののみを15分に一回トリガーを動かして、GASでgetFiles()のスクリプトを使って、データ取得する」 これが具体 営業の場面でいうと (抽象) ・ヒアリングは9つのフレームに集約ができる ー因果 ー前後 ー包含 ー並列 ー程度 ー主体 ー判断 ー変化 ー対処 (具体) それってどこでどの程度起きているんです

店長

Xアカウント:@nishi_sales_ai 新卒で大手IT企業に入社し、飛び込み営業から深耕営業、大手企業担当まで第一線で経験を積む(表彰歴多数)。その後、事業企画・営業企画部門で経営に近い立場から営業組織と数字に向き合い、10年勤続を経て独立。営業組織の改善に特化したコンサルタント企業を立ち上げる。 コンサルタントして数々の現場に入りつつ、自ら営業特化の転職エージェントも運営。近年はAIを活用した営業組織の業務改善・生産性向上プロジェクトに携わる。現場の最前線と経営の両方を見てきた視点から、営業3年目前後がぶつかる壁を越えるための実践知を発信する。

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