営業マネージャーの役割とは?|仕事内容と求められるスキル

営業マネージャの役割は、営業メンバーの「モチベーション管理」「育成」「離職防止」、営業施策の実行、営業数字のモニタリング、営業目標の達成の6つです。合わせて求められるスキルは、部下のモチベーションを高める・能力を引き出す・政党な評価を下す・適切なフォローを行う・数字を構造的に見る、の5つです。ここでは営業マネージャの役割と求められるスキルについて解説しています。

トップ営業マンに営業マネージャは務まらない?

営業マネージャは、個々の営業マンをまとめ組織(課・グループなど)として売上の成績を最大化することをミッションとしています。しかし、営業マンの時と決定的に異なるのは「自分で売る」ことで組織の売上に貢献するのではなく、「人に売らせて」全体を最大化させなければならないことです。

多くの企業においてトップ営業マンが営業マネージャに昇格するというケースは頻繁にみられます。しかし、ここで注意しなければならないのは営業マンとしてトップだった人に必ずしも営業マネージャは務まらないということです。前述したように「自分で売る」ことと「人に売らせることは全く違うことなのです。もちろん営業としても営業マネージャとしても、どちらもうまくできる人もいますが、それは本人が仕事として全く異なることを理解して務めているからです。

営業マネージャの役割とは

では、営業マンとは異なる、営業マネージャの役割とは一体何なのでしょうか?もちろん管轄の営業組織をマネジメントすることで、全体の売上を上げることです。

具体的には、

  • 営業メンバーのモチベーション管理
  • 営業メンバーの育成
  • 営業メンバーの離職防止
  • 営業施策の実行
  • 営業数字のモニタリング

を通して、

営業目標の達成

を実現することです。

営業メンバーのモチベーション管理

営業という業務は日々大きなストレスを抱える仕事です。メンバーそれぞれのモチベーションが下がることは営業組織として業績を上げ続けるを阻害します。逆に一人一人のモチベーションが高ければそれだけで組織として強い状態と言えるでしょう。

営業マネージャは営業メンバーにはそれぞれモチベーションリソース(モチベーションを左右する要因)が異なります。目標達成自体なのか、社内での評価なのか、顧客への貢献なのか、それぞれに異なるモチベーションリソースに対して、寄り添った日々のコミュニケーションを取らなければマネージャーのコミュニケーション自体がストレスの要因になることもあるのです。メンバーがそれぞれ何によってモチベーションが上がるのか?を積極的に知り、高い状態をキープさせられる環境をマネージャ自ら作りましょう。

モチベーションと勤怠の状況はリンクすることが多い(遅刻が増える、直行直帰が増える)ため、管理職としてこのようなサインも見逃せません。

営業マネージャは知っておきたい「営業メンバーのモチベーションマネジメント」について

営業メンバーの育成

営業マネージャになった方はおそらく営業として優れた能力を持っていた方だと考えられます。しかし、その部下である営業メンバー全員が営業として優れているとは限りません。会社や組織が拡大すればするほど個々の営業マンの能力にバラつきが生じるでしょう。少数の優れた営業マンがいても他の営業マンの能力の底上げができなければ組織全体の業績は思うように上がりません。そのため、営業メンバーの育成は営業マネージャの役割として最も重要なことの一つと言えるでしょう。なんども申し上げているように「人に売らせる」ことができなければ営業マネージャとしての仕事を果たせないのです。

メンバーの育成をする際に気をつけなければならないのは、自分が営業マンだった頃の成功体験を押し付けてはならないということです。営業という仕事は属人的な仕事であり、必ずしも自分のやり方が他の人にとっても最適であるとは限らないのです。個々の営業メンバーの特性を見極めた上でそれぞれにあった方法で育成をしなければなりません。

また、営業メンバーのミスや失敗をフォローするのも営業マネージャの役割です。企業によってはあくまで本人に責任を取らせるというようなこともあるようですが、監督指導責任は営業マネージャにあると考えるのが一般的です。顧客に対する対外的な責任だけでなくメンバーとの信頼関係を作り上げる上でも重要なことです。ミスや失敗のタイミングは営業メンバーの貴重な成長機会でもあるため適切なフォローをし、なぜ起きたのか、改善できることは何か、など一つ一つ振り返らせることも必要です。

できる営業マネージャが実践する「営業マンの育成」について

営業メンバーの離職防止

組織とって育った営業メンバーに退職されることはかなりの痛手です。退職に伴って開いた穴を埋めるにはまたメンバーを採用し、育てなければならないため、ハイパフォーマーであればあるほど痛手は大きくないります。多くの退職希望者は「転職先が決まってから」深刻してきます。この時点で退職を止めることはほとんど不可能でしょう。しかし、転職先を決める前に、もっと言えば退職の意思を固める前にメンバーの意思をキャッチアップすることは実は可能なのです。

営業メンバーと日常的なコミュニケーションをとっていれば間違いなくサインは出るはずで、その出たサインに対して、適切なコミュニケーションを適切なタイミングでとることができれば、よほど待遇がひどくない限りは留まります。マネージャー自らこの会社・組織で働き続ける理由を作り出すなどあらゆる手段を講じて、優秀なメンバーを組織にとどまらせ続けることは重要な役割です。メンバーの退職が続くマネージャは不適格という判断をされることさえあるでしょう。

モチベーション管理のところでもいいましたが、退職意思についても勤怠に明確に反映されるケースは多く見受けられます。遅刻や、直行直帰が増えるなど勤怠が荒れ始めた場合は何らかの兆候が出ている可能性があります。特に勤怠時間の承認などがマネージャの役割として与えられている会社の場合は、承認の際に過去の傾向などと見比べ、サインが出ていないかということを確認しましょう。

営業施策の実行

会社や組織において決まった(決められた)営業施策は現場における実行がなされてこそ意味があり、それによって初めて結果・効果が見込めるものです。その施策は必ずしも個々の営業メンバーの考えに沿うものではないこと、また、担当顧客にとって有益なものではないかもしれません。しかし、組織として業績を最大化させるためには実行が必要なものなのです。そのため、個々の営業マン・顧客のことを理解しつつ、いかに前向きに取り組ませられるかは、組織をマネジメントする営業マネージャにかかているのです。

営業マネージャしかできない「営業施策の実行とモニタリング」について

営業数字のモニタリング

自組織における、また各営業メンバーにおける様々な数字のモニタリングをすることも営業マネージャの重要な仕事です。単純な売上目標の達成の成否ではなく、その売上数字は過去の売上・先の見込みの売上と比較して何を示すのか?達成できた・できなかった要因はなんなのか?何に注力すれば次の売上目標を達成できるのか?などを分析することで、先々のリスクや、適正な目標設定にも繋がるのです。またこれは、自組織全体だけでなく個々の営業メンバーに対しても行うことが必要です。

これらのモニタリングについて事業規模では会社(事業企画や経営企画の担当部署)でやっていると考えられますが、個々のメンバーレベルでやれるのは営業マネージャのみなのです。

営業マネージャしかできない「営業施策の実行とモニタリング」について

営業目標の達成

初めに述べたように、解説してきた「営業メンバーの育成」「営業施策の実行」「モニタリング」を通じて「営業目標の達成」をすることが営業マネージャに会社から求められる役割です。

組織として営業目標を達成するためには、適切な目標設定が必要です。いくらの目標が適切なのか?は営業メンバーの個々の力量把握はもちろん、各数字のモニタリング結果から算出されるのです。

次にその目標設定に対するメンバーへのマインドセットが必要です。目標が上から降りてきた背景の分からない数字だと、営業マンはそれをノルマとして課せられたと受け取ります。しかし個々のメンバーに対しその目標の背景を伝え、目標達成する動機づけをすることで、課せられたノルマでなく絶対に達成した目標として前向きに取り組むことができるのです。

そしてその目標を達成させるために、日々の活動設計やスケジュールへの落とし込みをさせることで、自分で売るのではなく人に売らせて目標を達成させることができるのです。

営業マネージャの「営業目標達成」について

営業マネージャに必要なスキル

ここまでで営業マネージャの役割を仕事を解説してきました。では、この役割を果たすために必要なスキルとはなんでしょう?

営業マネージャのスキルとして求められるのは下記の5点になります。

  • 部下のモチベーションを高める
  • 能力を引き出す
  • 正当な評価を下す
  • 適切なフォローを行う
  • 数字を構造的に見る

逆に言うと求められるスキルとして水準を満たせていない場合、営業マネージャとして不適格との評価を招くだけでなく、営業組織そのものが成り立たないという可能性すらあります。それは今後の降格などあなた自身の評価の問題以上に、部下である営業メンバーにとって本当に不幸なことです。しっかりとスキルを身につけ、営業マネージャとして業務に邁進せねばなりません。

1. 部下のモチベーションを高めるスキルとは

部署の売上を高めるためには、部下が成果を上げる必要があります。そこでまず必要なことは、モチベーションの向上です。そのためにはメンバーと個別に面談を行い、目標設定をします。ポイントは成約へとつながる過程をそれぞれマイルストンとして細かく設定し、その都度達成感を味わえるようにすることです。このような部下のモチベーションを高めるような場をどれだけ用意できるかというのは営業マネージャの大切な仕事の一つです。

特に若手の営業メンバーは上司の存在そのものがモチベーションを高める要因にもモチベーションを下げる要因にもなりえます。しつこいほどのコミュニケーションをとることで、部下が成果を上げることができるようなサポートをする必要があります。

  • 営業マネージャは知っておきたい「営業メンバーのモチベーションマネジメント」について
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2. 能力を引き出すスキルとは

営業という仕事は人それぞれ得意とするアプローチが異なります。営業マネージャは自身の経験を押し付けるのではなく、部下それぞれの能力に適した方法を引き出さなければなりません。そのためによく観察し、部下それぞれの特性を見つけるスキルが必要になります。その上で、効率良く成果を生み出すアプローチを指導することになります。

特に、できないマネージャほど、自分が今までしてこなかった営業スタイルを否定する傾向にあります。またクライアントに対するスタンスについても人それぞれです。個々の営業マンの哲学を尊重しつつ、必要な場合は修正するように働き変え、個人ごとに魅力となりうるポイントを作ってあげることで、一人一人が結果を出せる環境を用意してあげることが大切です。

3. 正当な評価を下すスキルとは

営業の仕事は、成約という形ではっきりと結果が現れます。けれども部下のやる気を引き出すためには、見えない部分の努力も評価する必要があります。数字をメインとして、数字以外の部分もきちんと評価してあげる必要があります。

特に営業マン同士で、評価すべき営業マン、評価されるべきではない営業マンというものは案外明確に白黒ついています。マネージャとしてその逆の評価をしてしまえば、営業組織のコンディションは直ちに悪化してしまい、場合によっては瓦解してしまう可能性さえ秘めています。

もちろん数字の達成が占める評価のウェイトが一番高いということに問題はありません。しかし仕事やクライアントに対するスタンスであったり、営業マン個人に起因しない外部の環境要因であったり、数字には現れづらい中期的な取り組みであったり、評価すべきポイントをきちんと評価することが大切です。

営業メンバーのモチベーションを上げるための表彰制度の設計について

4. 適切なフォローとはどのようなものか

日報の確認や日々のコミュニケーションなどがしっかりしていれば、営業組織が壊れるということはあまり考えられません。多くは営業マネージャによる怠慢により営業組織のコンディションは悪化するものです。そして営業組織のコンディション悪化は数字の未達成という更なるコンディション悪化要因を引き連れてきます。スパイラル構造に陥ると極めてやっかいです。

そうなる前に、営業マン個々人に対するフォローを適切に実施し、個々人が前を向いて仕事ができる環境を用意することは営業マネージャの極めて大切な仕事と言えます。特に数字が未達成に終わってしまったメンバーや大きなクレームやトラブルの渦中にいるメンバー。クライアントから大きな叱責をもらったメンバーや、評価が不調に終わってしまったメンバーなど、マイナス局面にいる営業メンバーへのフォローは欠かしてはいけません。

5. 数字を構造的に見るとはどういうことか

先に述べたように、各種数値のモニタリングは営業マネージャの仕事の一つです。売上の伸び率や、目標設定の金額、達成率、顧客数、顧客単価・・・とモニタリングした方が良い数字は山ほどあります。その中で、何が最も組織の売上を上げるためのドライバーなのか?を見極めなければなりません。

また、それぞれの数字が示している事実は何なのか?そこから導き出せる仮説は何か?その仮説に対して取るべき打ち手は何なのか?と数字からあらゆることを考えるには、数字を構造的に見る力が必要なのです。

イチ営業マンだった頃は必ずしも、数字を構造的に捉える力がなくとも目標を達成することができたかもしれませんが、営業マネージャとしてはこのようなスキルも必要になります。

ビジネスにおける「数字に強い人」とはいったいどのようなスキルを持った人のことなのか

営業マネージャと向き合い、実践を重ねることが、成長のカギになります。学んだことを、明日からの一歩につなげていきましょう。

チームの数字は「案件管理」で作る──パイプラインと予実の握り方

プレイヤー時代は、自分の案件だけを頭に入れておけば数字は作れました。マネージャになると、見るべきは自分の案件ではなく、メンバー全員の案件が一枚に載ったパイプラインになります。ここが「人に売らせて数字を作る」役割の、いちばん実務的な入り口になります。

パイプラインとは、リード獲得から受注までの各段階に、いま何件・いくらの案件が乗っているかを可視化したものです。マネージャはこれを確度別に握ります。ほぼ決まりの高確度、条件次第の中確度、まだ芽の低確度、というように分け、それぞれが今月・来月のどこに着地するかを常に更新していきます。予実──予算に対して実績と着地見込みがどれだけ足りているか──は、この確度別の積み上げからしか正確には読めません

見るべきは合計金額だけではありません。どの段階で案件が詰まっているかです。提案までは進むのに受注で落ちるなら、クロージングかヨミの立て方に課題があります。そもそも商談数が細いなら、入り口のリードや初回接点が足りません。段階ごとの通過率を追うと、組織のボトルネックが数字で見えてきます。

数字が足りないと分かったとき、打ち手は状況で変わります。既存案件の確度を上げて前倒しで刈り取るのか、パイプラインそのものが薄いから新規を積み増すのか。前者なら個別案件の「次の一手」を詰める1on1、後者なら活動量そのものの設計に手を入れます。1on1で「頑張れ」と声をかけるのではなく、「この案件、決裁者に会えているか」「次に何が起きれば前に進むか」を一件ずつ具体で詰めます。これが、自分では商談に出ないマネージャが数字を動かす唯一の接点になります。

育成を「属人」から「仕組み」へ

一人ひとりの特性に合わせた育成は欠かせません。ただ、組織が拡大するほど、マネージャ一人の熱量による個別指導だけでは底上げが追いつかなくなります。メンバーが5人から10人、20人と増えたとき、全員に同じ濃さで向き合うのは物理的に不可能です。ここで効いてくるのが、育成を仕組みに変える発想になります。

まず、成果の出ている勝ちパターンを言語化します。できる営業の頭の中にある「この業種にはこの切り出し方」「この反論にはこの返し」といった暗黙知は、放っておけば本人と一緒に異動・退職で消えていきます。優秀な商談に同席する、あるいは録画して共有し、勝ち筋をトークスクリプトや提案の型として文書に落とします。個人の資産を、チームの共有資産に移し替える作業です。

次に、新人が独り立ちするまでの道筋を標準化します。最初の30日で何を覚え、何ができれば次の段階か。商材知識、ロープレ、同行、初商談という順序を手順として持っておけば、育成の質が「たまたま面倒見のいい先輩に当たったか」に左右されなくなります。

仕組み化のねらいは、マネージャがいちいち介在しなくてもメンバーが再現できる状態を作ることにあります。属人的な育成は、指導者が変わると途端に崩れます。型と共有知が残っていれば、人の入れ替わりがあっても組織の実力は落ちにくくなります。個別最適の育成と、この仕組み化は対立しません。共通の土台を仕組みで底上げした上で、その先の伸ばし方を個別に見る、という二層で考えるとよいでしょう。

※著者の体験

「できる営業の頭の中の暗黙知は、放っておけば本人と一緒に消える」——これを痛感したのは、創業10年ほど・営業100人規模のIT企業で、営業組織の立て直しに入ったときでした。
その会社はトップ営業が抜きん出て売る一方、育成が完全に一子相伝で、勝ち筋が誰にも引き継げない状態だったんです。
エースが1人異動しただけで、担当していた10億円規模の顧客群の再現ができなくなる。そこで私が最初にやったのは、優秀な商談に同席・録画して、「この業種にはこの切り出し方」「この反論にはこの返し」を、トークスクリプトと提案の型として文書に落とす作業でした。個人の資産をチームの共有資産に移し替える、地道な作業です。あわせて、新人が独り立ちするまでの最初の30日を標準化しました。
何日目までに商材知識、次にロープレ、同行、初商談——という順序を手順として持たせると、育成の質が「たまたま面倒見のいい先輩に当たったか」に左右されなくなる。私がこの型化にこだわるのは、属人的な育成は指導者が変わった瞬間に崩れるからです。共通の土台を仕組みで底上げしてから、その先の伸ばし方を個別に見る。この二層で考えると、10人が20人に増えても組織の実力が落ちにくくなりました。

業務効率化について知見を広げたい方はこちら。仕組みで成果を出す視点が持てます。

なぜあの企業は営業生産性が高いの?営業効率化の進め方|効率化の先を設計する──分子を増やす、仕組みに寄せる、自分の時間から変える

上と横を動かす──対上マネジメントと他部署連携

マネージャの仕事は、下を見る仕事だと思われがちですが、実際には上と横を動かす時間のほうが成果を左右することが多いです。目標も人員も予算も、多くは上から降りてきます。これを受け身で受け取り、そのまま現場に流すだけだと、無理な数字がメンバーを疲弊させ、離職を招きます。

そこで必要になるのが対上マネジメントです。上長に対して、現場の実態を数字で示します。パイプラインの厚みからして今の目標は現実的か、達成にはあと何人・どんなツールが要るか。感覚ではなく確度別のヨミと通過率を根拠に、目標の握り直しや増員・投資を提案します。上に「お願い」するのではなく、判断材料を渡して意思決定を引き出します。リソースは待っていても降ってきません。取りに行くものだと考えたほうがよいでしょう。

横の連携も、営業だけでは完結しない数字を作るうえで避けて通れません。リードを供給するマーケティング、初期接点を担うインサイドセールス、受注後を支えるカスタマーサクセス。これらと連携が切れていると、質の悪いリードが流れてきたり、引き継ぎで失注したりと、営業の努力の外側で数字が漏れます。リードの条件をマーケとすり合わせる、失注理由を定期的にフィードバックする、引き継ぎのルールを決める——こうした部署間の橋渡しは、現場のメンバーには権限がなく、マネージャにしかできません。自チームの外にある変数を動かせるかどうかが、チームで作れる数字の上限を決めます。

※著者の体験

「リソースは待っていても降ってこない、取りに行くもの」——これは、私が数字を設計する側に回って、骨身にしみたことです。
ある営業組織で、上から降りてきた目標が、現場のパイプラインの厚みからしてどう見ても届かない水準だったことがありました。受け身でそのまま現場に流せば、無理な数字がメンバーを疲弊させ、離職を招くだけです。そこで私は、感覚ではなく確度別のヨミと段階通過率を根拠に、「今の高確度・中確度を積み上げても着地は目標の85%。
達成にはあと7人か、インサイドセールスによるリード供給の増強が要る」と数字で示して、目標の握り直しと増員を経営に提案しました。上に「お願い」するのではなく、判断材料を渡して意思決定を引き出す。
もう一つ徹底したのが横の連携です。マーケが供給するリードの条件が営業の実態とずれていて、書類通過率が25%まで落ちていた時期があった。失注理由を定期的にマーケへフィードバックし、リードの条件をすり合わせ直すと、質の悪いリードで漏れていた数字が明確に戻りました。こうした部署間の橋渡しは、現場メンバーには権限がなく、マネージャーにしかできない。自チームの外にある変数をどれだけ動かせるかが、チームで作れる数字の上限を決める、というのが実感です。

「自分の数字」が消える役割 ──プレイングマネージャの非対称

最後に、方法論の一段下にある構造を見ておきたいと思います。営業マネージャという役割が難しいのは、スキルが足りないからではなく、そもそも成り立ちが非対称だからです。

プレイヤーは、自分が売れば数字が出ます。しかもその数字は、誰の目にも「自分のもの」として映ります。受注のたびに手応えが返ってきて、それが翌日の活力になります。ところがマネージャは違います。チームが売っても、その数字はメンバーの名前で立ちます。マネージャの貢献は、案件の裏側や育成の積み重ねという、表に出ない場所にしか宿りません

さらに厄介なのは、使う頭の向きが逆だということです。自分で売る脳は、今日の商談を勝つための瞬発力を要求します。目の前の相手を読み、その場で動かします。対して売らせる脳は、人が育つのを待ち、仕組みを作り、効果が出るまでの遅れに耐える力を要求します。プレイングマネージャは、この正反対の脳を一日のなかで行き来します。午前は自分の商談で瞬発力を使い、午後はメンバーの案件で我慢します。この切り替えにかかる負荷こそ、多くの新任マネージャがすり減る本当の理由です。

そして最大の非対称は、良い仕事をするほど自分の成果が見えなくなることにあります。うまくいったマネジメントは、「メンバーが自分の力で達成した」という顔をして完結します。マネージャの存在が消えることが、成功のかたちなのです。この見えなさに耐えきれず、つい自分で商談に出て数字を作りにいくと、その月の帳尻は合っても、チームは育たず、翌月もまた自分が走る羽目になります。プレイヤーとして優秀だった人ほど、この誘惑は強いものです。

矛盾を解く鍵は、自分を測る物差しを架け替えることにあります。「自分が出した数字」ではなく、「自分がいなくても出る数字」を成果と見なします。売る役から、売れる状態を設計する役へ。自分の名前が消えたところに、営業マネージャの仕事は残ります。

※著者の体験

「良い仕事をするほど、自分の成果が見えなくなる」——この非対称は、私自身がプレイングマネージャーとして一番すり減ったところであり、後に営業組織を設計する側に回って、構造として腹落ちしたところでもあります。プレイヤー時代は、自分が売れば数字が「自分のもの」として立ち、受注のたびに手応えが翌日の活力になった。ところがマネージャーになると、チームが1000万円売っても、その数字はメンバーの名前で立つ。自分の貢献は、案件の裏側や育成の積み重ねという、表に出ない場所にしか宿らないんです。
もっと厄介なのは、使う頭の向きが逆だということでした。午前は自分の商談で瞬発力を使い、午後はメンバーの案件が育つのを我慢して待つ。
この正反対の脳を一日で行き来する負荷こそ、私がすり減った本当の理由でした。そして、成果が見えない苦しさに耐えきれず、つい自分で商談に出て数字を作りにいくと、その月の帳尻は合っても、チームは育たず、翌月もまた自分が走る羽目になる。プレイヤーとして数字を出してきた人ほど、この誘惑は強い。私が最終的に自分を救ったのは、物差しの架け替えでした。
「自分が出した数字」ではなく「自分がいなくても出る数字」を成果と見なす。売る役から、売れる状態を設計する役へ。自分の名前が消えたところにこそ、マネージャーの仕事は残るんだと、痛みとともに学びました。

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筆者:店長

営業と、競馬と、しゃべる植物。あっAIも。つい、いろいろ作ってしまう人です。

→ 店長の正体(詳しいプロフィール)

店長

Xアカウント:@nishi_sales_ai 新卒で大手IT企業に入社し、飛び込み営業から深耕営業、大手企業担当まで第一線で経験を積む(表彰歴多数)。その後、事業企画・営業企画部門で経営に近い立場から営業組織と数字に向き合い、10年勤続を経て独立。営業組織の改善に特化したコンサルタント企業を立ち上げる。 コンサルタントして数々の現場に入りつつ、自ら営業特化の転職エージェントも運営。近年はAIを活用した営業組織の業務改善・生産性向上プロジェクトに携わる。現場の最前線と経営の両方を見てきた視点から、営業3年目前後がぶつかる壁を越えるための実践知を発信する。

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