営業メンバーのモチベーション管理|内発と外発を切り分けて動機づける

営業マンのモチベーション管理をしていく上で、営業マン個々人のモチベーションリソースがどのようなポイントにあるかを知ることは極めて重要なポイントです。特に、これらは日常会話で引き出すことはなかなか難しいです。従って半強制的にでもそういう機会を敢えて設ける必要があり、特に半期や一年間での営業マンの「評価」を伝える場においては極めて感情的になりやすく、感情の振れ幅が大きいため、モチベーションリソースに関する話をするための絶好の機会と捉えることができます。

営業メンバーのモチベーションマネジメント

営業マンは多大なるストレスを日々抱えています。時に数字に圧迫され、時にはクライアントからの理不尽な要求に対応せねばならない時もあります。気をつけなければならないポイントとして、上司である自分が、営業マンのストレスリソースになりうる可能性も大いにある点です。

つまり、営業マン一人一人のモチベーションをしっかりと底上げしていかないとなかなかハイレベルな次元の営業組織でい続けることは非常に困難と言えます。逆に営業マン一人一人のモチベーションが非常に高い状態にある営業組織はそれだけでも強力な武器を持った営業組織と言えるでしょう。

営業マンのモチベーションリソースを知る

営業マンのモチベーション管理やモチベーションの維持向上を実現していく上で知っておきたいポイントは営業マン一人一人がどのような点でモチベーションを左右させる可能性があるかという点です。

これらは一人一人、異なる可能性が高いです。人によっては将来描いている自己実現の過程として営業をしているケースもありますし、目の前のクライアントのために頑張りたいという営業マンもいます。おそらく彼らのモチベーションリソースは個人によっても大きく異なるでしょう。従って、これらは基本的に彼らと何度もコミュニケーションを重ねてとることを通じてでしか知りうることができません。

もしかすると、社内アンケートやモチベーション管理のための組織サーベイ等で、横一線の画一的な管理や健康状態のチェックは可能かもしれませんが、あくまでもそれらは補助的なツールにすぎません。調査結果などを踏まえてどのような施策を講じることができれば、個々人のモチベーションを上げるきっかけを作り出すことができるか?について検討しなければなりません。

きちんと彼らからのサインを見逃すことなく、コミュニケーションやもっと気軽な声掛けを通じて、一人一人のモチベーションを高めてあげることが大切です。

営業マンのモチベーションリソースを知る機会を作る

具体的には、モチベーションリソースを知る機会を半強制的にでも作ることです。おそらく多くの企業では一年間や半期単位で営業マン評価をしていることと思います。そのタイミングで単純な数字の達成度合いだけで一律的な評価をしてしまって、コミュニケーションは企業から営業マン向けの一方的なコミュニケーションに終始してしまっているのではないでしょうか?

本質的にどのような基準に基づいて、このような評価になったのかという点はきちんと伝える必要がありますが、それ以上に、営業マンに自身の想いを発信させる絶好の機会として活用すべき場でもあります。当然評価の内容がそれほど良くなかった時に、モチベーションリソースに関する質問をされたとて営業マンは素直に回答できないような状況もあるでしょう。そうした二の足を踏む状況だから上司である管理者達は二の足を踏んでしまいます。

モチベーションリソースに関する質問を投げかけたところで、目の前の評価に関する不満や愚痴を聞いて終わってしまう可能性が高いと踏んで、なかなか積極的に質問をすることができない状況であることは容易に想像することができます。だからこそ、感情的になりやすい場面だからこそ、突っ込んだ質問が有効であるという側面もあります。そうした踏み込みがなかなかできない場合は、平穏な感情の起伏が少ないタイミングで営業マンと心を開いて話す必要がありますが、できれば営業マンの本音を引き出せる絶好の機会である「評価」に踏み込んだ時こそ、モチベーション管理の絶好の機会と捉えて、積極的に会話すべきです。

営業の現場では、営業マネージャへの理解が成果を大きく左右します。本記事で紹介したポイントを振り返り、明日からの業務に少しずつ取り入れていきましょう。

内発的動機と外発的動機を切り分けて捉える

モチベーションをひとまとまりで扱おうとすると、打ち手がぼやけます。まず、動機を「外発的」と「内発的」の二層に分けて見てください。外発的動機は、数字の達成、評価、周囲からの承認といった外側から与えられる刺激で立ち上がるものです。内発的動機は、成長している実感、仕事を自分で決めている感覚、顧客の役に立てているという手応えなど、本人の内側から湧くものです。

この二つは、効き方の持続時間が違います。外発的な刺激は反応が速い代わりに減衰も速く、次の刺激がないとすぐにしぼみます。内発的な動機は立ち上がりに時間がかかる代わりに、いったん火が付くと外部環境が多少揺れても消えにくいという性質を持ちます。

営業マネージャが陥りやすいのは、外発的な刺激だけで走らせ続けようとする状態です。目標未達のたびに発破をかけ、達成のたびに強く称えます。これを繰り返すと、メンバーは「刺激がないと動けない」体質になり、マネージャは刺激を出し続ける役から降りられなくなります。実務では、短期の勢いは外発で作りつつ、面談や日々の声かけの中で「この案件のどこに手応えを感じたか」「半年前と比べて何ができるようになったか」を言語化させ、内発の芽に光を当てていきます。この二層を意識的に行き来させることが、持続する動機づけの土俵になります。

※著者の体験

「外発的な刺激だけで走らせ続けると、マネージャーが刺激を出す役から降りられなくなる」——これは、私が量マネジメント型の営業組織を内側から見て、骨身にしみたことです。
目標未達のたびに発破をかけ、達成のたびに強く称える。一見、勢いは出るんです。でもその組織で起きていたのは、メンバーが「刺激がないと動けない」体質になっていくことでした。私が当時見ていた"できる"とされる営業マンたちは、確かに数字は出す。ただ、彼らを駆動していたのは成長実感や顧客への手応えという内側の火ではなく、承認や競争という外からの刺激のほうが大きかった。
だからその刺激が途切れると、そこそこ育ったはずの人が「お客さんは好きだけど仕事自体は面白くない」と言って辞めていく。この経験から、私は動機を必ず外発と内発の二層に分けて見るようになりました。
短期の勢いは外発で作っていい。でも面談や日々の声かけで「この案件のどこに手応えを感じたか」「半年前と比べて何ができるようになったか」を本人に言語化させて、内発の芽に光を当てる。この行き来を意識的にやらないと、組織は外発依存でじわじわ痩せていく、というのが実感でした。

モチベーションが下がる要因を特定し、数日以内に一次対処する

動機づけの施策を足す前に、まず下がる要因を引き算してください。上がる刺激を注いでも、下げる要因が残っていれば相殺され、いたちごっこになります。営業現場でメンバーの意欲を削ぐ代表的な要因は、おおむね次の三つに集約されます。

一つ目は、業務量と責任の過多です。商談以外の資料作成・リサーチ・報告に追われ、余裕を失っている状態です。二つ目は、支援と期待の欠如です。必要なときに上司の助けが得られない、自分に何を期待されているのかが見えない状態が続くと、意欲は静かに落ちます。三つ目は、挑戦機会の乏しさと孤立です。同じ層の顧客ばかりを担当し成長実感が得られない、あるいは成績上位の同僚と自分を比べて塞ぎ込む状態です。

大切なのは、要因を特定したら数日以内に一次対処まで進めることです。放置された不満は、時間が経つほど「この組織では変わらない」という諦めに固まります。業務過多なら、今週の抱え案件を一緒に棚卸しし、後回しにしてよいもの・巻き取れるものをその場で三つ決めます。支援不足なら、次の商談に同行する日程をその場で押さえます。孤立の兆候なら、比較の対象を他人から過去の自分の行動量に置き換えます。完全な解決でなくても、「動いてくれた」という事実が、下がりかけた意欲の底を止めます。

1on1と目標設定で、一人ひとりに動機づけを設計する

評価面談のような年に一、二度の場だけでは、動機の起伏は追い切れません。隔週から月次で、三十分ほどの1on1を仕組みとして持ってください。ここでの主役はマネージャの指示ではなく、メンバーの言葉です。「今どこに詰まっているか」「何が追い風になっているか」を本人に話させ、こちらは要因の切り分け役に回ります。話の八割を相手が占めるくらいが適正です。

目標設定は、動機づけの設計図そのものです。数字目標だけを渡すと、達成できない期間はまるごと自己否定の時間になります。そこで、結果目標(受注件数・金額)と行動目標(面談数・提案数など自分の裁量で積める指標)をセットで置き、成果が出ない時期でも「行動は前に進んでいる」と確認できる足場を残します。加えて、目標の数値と難易度を本人に一度言わせてから握ること。上から配るのではなく決定に関与させることで、同じ数字でも納得感がまるで変わります。

そのうえで、合わせ方はメンバーごとに変えます。成長を燃料にするタイプには、次に伸ばす一段上のスキルを一緒に名指しします。貢献を燃料にするタイプには、その提案が顧客のどんな困りごとを解いたのかを具体的に振り返ります。安定を好むタイプには、行動目標を細かく刻んで達成の刻みを増やします。何が効くかは、日々の反応を観察して当てにいくしかありません。画一的な号令ではなく、一人ひとりの燃え方に合わせて向き合うことが、組織全体の熱量を底から支えます。

※著者の体験

1on1で「話の八割を相手が占める」——これは言うのは簡単ですが、実際にやると多くのマネージャーが逆になります。
私が営業組織の改善に入って必ず手を入れたのが、この1on1の"問いの立て方"でした。というのも、「調子どう?」と聞くと、返ってくるのは感想か言い訳なんです。そうではなく「先週の商談で、顧客が実際に何と言っていたか」という事実を聞くと、本人も気づいていなかった詰まりが表に出てくる。
この一問の差が、動機の起伏を追えるかどうかを分けました。
目標設定も同じで、数字目標だけを上から配ると、達成できない期間がまるごと自己否定の時間になってしまう。だから私は、結果目標(受注件数・金額)と、自分の裁量で積める行動目標(面談数・提案数)を必ずセットで置くようにしていました。成果が出ない時期でも「行動は前に進んでいる」という足場が残るからです。そしてもう一つ徹底したのが、目標の数値と難易度を、上から渡す前に一度本人の口で言わせてから握ること。同じ数字でも、決定に関与させるだけで納得感がまるで変わる。動機づけは号令ではなく、一人ひとりの燃え方に合わせた設計だ、というのが現場で得た結論でした。

KPI設計について知見を広げたい方はこちら。数字で成果を測り、次の一手を決められます。

→ 営業組織の成果を最大化させる営業KPIの設定について

「モチベーションを上げる」という前提を、一度手放してみる

営業組織の会話では、モチベーションを「上げる」「底上げする」「高めてあげる」という言い方が当たり前のように交わされます。けれども、この言い回しには、動機づけをマネージャが外から注入し、管理し、思いどおりに増減させられるという前提が静かに紛れ込んでいます。ここを一度、疑ってみる価値があります。

人の内側にある「やりたい」という気持ちは、他人が直接手を入れて増やしたり据え付けたりできるものではありません。マネージャができるのは、その気持ちが立ち上がりやすい状態をつくること、そして、いったん立ち上がった気持ちを削いでしまう要因を取り除くことまでです。これは、植物に「早く伸びろ」と命じても伸びないのと同じ構図です。できるのは、日当たりと水と土を整えることだけで、伸びる力そのものは相手の内側にしかありません。この区別を曖昧にしたまま「上げる」ことに躍起になると、刺激を出し続ける役から降りられなくなり、メンバーは刺激待ちの受け身に固定されていきます。

この視点に立つと、これまで見てきた打ち手の意味も少し変わって見えます。内発と外発を切り分けるのは、注入する刺激の種類を選ぶためではなく、本人の内側で火が付く場所を探し当てるためです。下がる要因を数日以内に取り除くのは、意欲を足し算するためではなく、すでにある意欲が漏れ出ていく穴をふさぐためです。1on1で相手に八割話させるのも、こちらが動機を吹き込むためではなく、本人の中で動機が言葉になって輪郭を持つ瞬間に立ち会うためです。どれも、外から熱を加える行為ではなく、内側の熱が消えない環境を整える行為だと捉え直せます。

そう考えると、マネージャの仕事は「メンバーのモチベーションを管理すること」ではありません。管理できるという発想そのものが、相手の主体性を奪います。むしろ、動機が自分から立ち上がってくる余地を組織の中に確保し、その邪魔をしている要因に先に手を打つこと。号令で人を燃やすのではなく、一人ひとりが自分の燃料を見つけられる場を整えること。営業組織の強さは、マネージャがどれだけ火を焚いたかではなく、メンバーの内側の火がどれだけ自走しているかで決まります。

※著者の体験

「モチベーションを上げる」という言い方を、私はある時から意識的に使わなくなりました。
営業組織の改善を重ねる中で、動機づけをマネージャーが外から注入して思いどおりに増減させられる、という前提そのものが現場を壊していると気づいたからです。
号令で人を燃やそうとする組織ほど、メンバーは刺激待ちの受け身に固定されていきました。
私が最終的にたどり着いたのは、マネージャーにできるのは「火を焚くこと」ではなく「火が消えない環境を整えること」だけだ、という捉え方でした。やる気そのものは相手の内側にしかない。植物に「早く伸びろ」と命じても伸びないのと同じで、できるのは日当たりと水と土を整えることだけなんです。この視点に立つと、打ち手の意味が全部変わります。
下がる要因を数日以内に取り除くのは、意欲を足し算するためではなく、すでにある意欲が漏れ出ていく穴をふさぐため。1on1で相手に八割話させるのも、こちらが動機を吹き込むためではなく、本人の中で動機が言葉になって輪郭を持つ瞬間に立ち会うため。
だから私は、営業組織の強さは「マネージャーがどれだけ火を焚いたか」ではなく「メンバーの内側の火がどれだけ自走しているか」で決まる、と考えるようになりました。管理できるという発想そのものが、相手の主体性を奪ってしまうんです。

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筆者:店長

営業と、競馬と、しゃべる植物。あっAIも。つい、いろいろ作ってしまう人です。

→ 店長の正体(詳しいプロフィール)

店長

Xアカウント:@nishi_sales_ai 新卒で大手IT企業に入社し、飛び込み営業から深耕営業、大手企業担当まで第一線で経験を積む(表彰歴多数)。その後、事業企画・営業企画部門で経営に近い立場から営業組織と数字に向き合い、10年勤続を経て独立。営業組織の改善に特化したコンサルタント企業を立ち上げる。 コンサルタントして数々の現場に入りつつ、自ら営業特化の転職エージェントも運営。近年はAIを活用した営業組織の業務改善・生産性向上プロジェクトに携わる。現場の最前線と経営の両方を見てきた視点から、営業3年目前後がぶつかる壁を越えるための実践知を発信する。

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