【事例】マタハラとは。その定義と法律による規定
マタニティハラスメントの事例を紹介します。マタハラは社会問題になっていますが政府によっては定義づけられていません。
マタハラとは
マタハラの意味、定義とは
マタニティハラスメントとは「妊娠・出産した女性に対する職場での嫌がらせ」という意味です。ただし、国によってはまだ何がマタハラか、という定義は公表されていません。
厚生労働省のサイトによるとマタニティハラスメントは下の2種類に分けられます。
- 制度の利用への嫌がらせ型
- 状態への嫌がらせ型
1.制度の利用への嫌がらせ型
- 解雇を含む不利益をもたらす取り扱いを示唆すること
- 制度利用をやめるように促すこと
- 嫌がらせをする
2.状態への嫌がらせ型
- 解雇を含む不利益をもたらす取り扱いを示唆すること
- 嫌がらせをする
マタハラは上司や同僚が、妊娠・出産した女性に対し⑴不利益となる扱いをする⑵嫌がらせと取られる言動をすることと定義できます。また、育児休暇を取得しようとする男性に対して行われる「パタハラ(パタニティハラスメント)」も問題になっています。
以下で事例を確認してみましょう。
マタハラ事例集
【マタハラ事例1】産休中の評価ができないからと降格:アストラゼネカ
妊娠し産休取得を申し立てた女性MR(医薬情報提供者)は上から2番目の評価を受けていたが「休んでいる間の評価ができない」などとして、下から2番目の評価に降格された。アストラゼネカではその評価が賃金に反映される。女性は現在同社と係争中。機関紙連合通信社に対し「子どもがいるとキャリアアップできない制度はやめてほしい。」と語った。
参照元:https://www.rengo-news-agency.com/2017/05/13/退職強要-いじめが横行-東京管理職ユニオンが告発-製薬大手のアストラゼネカで/
【マタハラ事例2】「育休・産休は周りのモチベーションを下げる」:大阪府立病院機構大阪急性期・総合医療センター
4月に採用予定だったが2月に妊娠が発覚した女性医師が、メールで小児科の女性部長にメールで報告すると「病院に全く貢献がなく、産休・育休は周りのモチベーションを下げる」などと非常勤での勤務を勧めた。部長は「当直もあるため、気遣った。」としているがセンター側はこれをマタハラと認定。厳重注意した。
参照元:http://www.sankei.com/west/news/170725/wst1707250034-n1.html
【マタハラ事例3】雇用形態の変更を強要:クスリのアオキ
女性社員は2003年に正社員として入社した。2015年に第2子を出産し育児休暇を取得した後、2016年短時間勤務(8:30-15:30)で職場復帰した。しかしすぐに遅番(22時まで)での勤務を月9回求められるようになった。店長に相談すると「できないなら勤務形態をパートに変えるか退職しろ」と言われ、退職。加入している労働組合を通じ話し合いを続けていたが提訴した。
参照元:https://www.bengo4.com/c_5/n_6242/
【マタハラ事例4】CAへのマタハラ、改善を約束し和解:日本航空
2014年に妊娠が発覚した女性CAは母体保護の観点から、乗務資格を停止された。制度に基づいて、地上での勤務を希望するも空いているポストがないとしてアルバイトも認められず、無給休暇を余儀なくされた。女性CAが会社側に休職命令の無効と未払い賃金などを求めた裁判では2017年和解が成立した。日航側は妊娠した客室乗務員全員が短時間勤務か普通勤務かを選んだ上で、希望の地上勤務に就けることを約束した。
参照元:https://mainichi.jp/articles/20170629/k00/00m/040/055000c
【マタハラ事例5】「もう辞めましょう」新聞社のマタハラ:日本商業新聞社
2011年に妊娠した女性記者は当時の社長が退職を促され、それを拒否した。その後次男を出産し育児休暇が開ける直前に今の社長などから「もう辞めましょう。」などと退職を求められた。それも拒否すると復職を先延ばしにされ、女性記者は退職した。
後の未払い賃金などの支払いを求めた裁判では解決金300万円が女性に支払われることとなった。
参照元:http://mainichi.jp/articles/20161102/k00/00m/040/079000c
マタハラ保険・・・動き出した東京海上日動
男女雇用機会均等法改正、企業名公表・・・
マタハラに関して規定している法律は男女雇用機会均等法です。以下該当条文を引用します。
第11条の2 事業主は、職場において行われるその雇用する女性労働者に対する当該女性労働者が妊娠したこと、出産したこと、労働基準法第65 条第1項の規定による休業を請求し、又は同項若しくは同条第2項の規定による休業をしたことその他の妊娠又は出産に関する事由であつて厚生 労働省令で定めるものに関する言動により当該女性労働者の就業環境が害されることのないよう、当該女性労働者からの相談に応じ、適切に対 応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。
2017年1月男女雇用機会均等法が改正され、マタハラ防止対策の実施が義務化されました。罰則も存在し厚生労働省によって企業名が公表されます。安倍政権による働き方改革が進む中、過料20万円が課されるようになる可能性もあるそうです。
マタハラ問題対策保険
セクハラ、パワハラと続き、マタニティハラスメントは企業にとって大きな「リスク」になっているようです。
東京海上日動火災保険は2017年10月から企業向けに従業員にマタハラに関して訴えられた場合の保険を導入しました。これまでもあった「業務災害総合保険」で特約としてカバーされていた「セクハラ」「パワハラ」訴訟対策保険に付け加える形です。
マタハラ相談をするなら
マタハラネット相談窓口
マタハラ被害女性が中心となって立ち上げられた団体です。弁護士との無料メール相談などができます。
厚生労働省雇用環境・均等部
無料、匿名で電話相談ができ、必要であれば会社側に是正勧告がされます。都道府県ごとに設置されていることが多いので、会社所在地の自治体のサイトなどを確認すると良いでしょう。
悪意がなくても起きる ― 善意の「配慮」が排除に変わるとき
マタハラと聞くと、露骨な退職の強要や嫌がらせを思い浮かべますが、実際にはもっと見えにくい形で起こります。厄介なのは、多くが悪意ではなく「善意の配慮」から生まれることです。「体調が心配だから、負担の軽い仕事に移ってはどうか」「無理をさせられないから、この案件は外そう」。言っている側は気遣っているつもりでも、本人が望んでいないのにキャリアの中心から外していけば、それは不利益な取り扱いに近づきます。本人が望んで軽い業務を選ぶなら配慮ですが、周囲が良かれと決めてしまえば、意思を無視した排除になる。気遣いを伝えること自体は悪くありません。ただ、そこに必ず「あなたはどうしたいか」を聞く一手を挟む。この一手があるかないかで、同じ言葉が配慮にも加害にも転びます。
しわ寄せを受ける同僚と、職場という第三の当事者
マタハラは、加害者と被害者の二人だけの問題に見えて、実は職場全体が関わっています。誰かが休めば、その仕事はほかの誰かに回る。残された同僚が「なぜ自分ばかり」と不満をため、それが陰口や冷たい態度になって表れれば、直接の加害者でなくても、環境そのものが本人を追い詰めることになります。ここで効くのは、しわ寄せを個人の我慢に押しつけないことです。休みで生じる負担を、誰か一人に集中させず、チームで分け、必要なら一時的に手当や体制で報いる。同僚の不満は、性格の問題ではなく、負担が可視化も分配もされていないことへの当然の反応です。だから責めるべきは同僚ではなく、負担を放置した仕組みのほう。空気が刺々しくなってきたと感じたら、それは個人を注意する場面ではなく、負担の配り方を見直す合図だと捉えるのが実務的です。
もし見かけたら・受けたら ― 記録を残し、一人で抱えない
自分が当事者になったとき、あるいは同僚に起きているのを見かけたとき、最初にやるべきは記録です。いつ、どこで、誰が、どんな言動をしたのか。そのとき自分がどう感じたか。あいまいな記憶は時間とともに薄れ、いざ相談や交渉の場になったときに力を持ちません。手帳でもスマートフォンのメモでも、事実を淡々と残しておくだけで、後の説得力がまるで違います。そして、絶対に一人で抱え込まないこと。当事者は「自分が我慢すれば」と背負い込みがちですが、抱えるほど選択肢は狭まります。社内に相談できる窓口や、外部の公的な相談先があります。まずは話を聞いてもらうだけでも、状況を客観的に見直せる。見かけた側も、当人が声を上げにくい立場にあることを踏まえ、「何かあったら記録しておくといい」と一言添えられるだけで、力になれます。動く前に、まず残す。これが鉄則です。
そもそも「回らなくなる不安」が根 ― 属人化をほどく予防
マタハラが生まれる土壌をたどると、多くの場合「その人が抜けたら仕事が回らない」という不安に行き着きます。担当者しか把握していない案件、その人の頭の中にしかない手順。属人化した状態で誰かが長期に抜ければ、周囲は本当に困る。その困りごとが、妊娠・出産した本人への風当たりに変わってしまう。裏を返せば、日ごろから業務を可視化し、一人しか知らない状態を減らしておくことが、そのまま最大のマタハラ予防になります。案件の情報を共有の場所に置く、手順を書き残す、一つの仕事を複数人が回せるようにしておく。これは特別な取り組みではなく、誰かの急病や退職に備える普通のリスク管理そのものです。営業3年目のうちから、自分の担当を「自分がいなくても回る形」に整えておく癖をつけておけば、いざ誰かが抜ける場面でも、職場がぎすぎすせずに済みます。予防は道徳ではなく、段取りの問題です。
正当な配慮とハラスメントの分かれ目 ―「本人の自由な意思」という一線
体調や安全を理由にした配置の変更が、すべて悪いわけではありません。母体を守るために業務を調整することは、むしろ必要な場面もあります。では、正当な配慮と、行き過ぎたハラスメントは、どこで分かれるのか。一本の線は「本人の自由な意思による同意があるか」です。会社側が一方的に不利益な変更を決め、本人がそれを望んでいないのなら、たとえ健康を口実にしても、正当性は揺らぎます。逆に、選択肢をきちんと示したうえで、本人が納得して選んだのであれば、それは配慮として成り立つ。ここで大事なのは、同意を「拒めない状況で取り付けた形だけのもの」にしないことです。「これしかない」と選択肢を狭めて頷かせるのは、自由な意思とは言えません。複数の道を示し、断っても不利にならないと伝えたうえで選んでもらう。この手間を省かないことが、良かれと思った判断を後から問われる事態から、自分と職場を守ります。
そもそもマタハラは「悪人」ではなく「余裕のなさ」が生む
ここまで具体的な線引きや予防を見てきましたが、最後に、この問題の捉え方そのものを問い直しておきたいと思います。マタハラの話題は、しばしば「ひどい上司」「心ない会社」という、特定の悪人を責める形で語られます。もちろん悪質な事例は実在します。けれど、それを「一部の悪い人間がやること」として片づけてしまうと、かえって問題の根を見誤ります。なぜなら、加害に加わってしまう人の多くは、特別に冷酷なわけではないからです。
普通に働いている人を加害者に変えてしまう最大の要因は、悪意ではなく「余裕のなさ」です。人手が足りず、一人が抜けただけで現場が回らなくなる。評価が減点方式で、休む人がいると自分の負担と評価に跳ね返る。そうした余裕のない環境に置かれると、人は妊娠や育児を「自分たちを苦しめるもの」として無意識に敵視し始めます。誰かの出産を心から祝えなくなるのは、その人が冷たいからではなく、職場に一人分の欠員を吸収する余白がないからです。つまりマタハラは、個人の道徳の欠如である以上に、余白を失った組織が構造的に生み出してしまうものなのです。
この視点に立つと、対策の方向が変わります。加害者を見つけて叱る、研修で意識を高める。それも必要ですが、それだけでは、土壌が余裕のないままなら、また別の誰かが同じことを繰り返します。本当に効くのは、一人抜けても回る余白を仕組みとして作ること。業務を分散し、負担を分け合い、休むことが誰かの過重労働に直結しない設計にすること。道徳を説く前に、余裕を設計する。ここに手をつけない限り、善意の人ですら加害者になり続けます。
そして、生産性という言葉の意味も捉え直す必要があります。妊産婦を抱えることを「短期的な欠員コスト」で測れば、負担にしか見えません。しかし本当の生産性は、目の前の一か月の穴埋めではなく、人が長く働き続けられ、一度離れてもまた戻ってこられる職場を保てるかどうかで決まります。安心して産み、育て、復帰できる環境は、その会社が人を大事にしている何よりの証拠であり、長い目で見れば人が定着する強い組織を作ります。マタハラを他人事の悪人叩きにせず、「自分の職場に、いま人を思いやる余白があるか」という問いとして引き受ける。そこからしか、本当の対策は始まりません。
まとめ:マタハラ対策をしないことが生産性を下げる
マタハラやパタハラは今や社会問題となっています。国が腰を上げ、東京海上日動をはじめとする企業もマタハラ対策に舵を切りつつあります。 よく、妊産婦を雇い続けることは「生産性を下げる」という言説を目にします。しかし、それは視野狭窄です。子供を産み、育てにくい社会に生産性も合理性もありえないからです。未曾有の人材不足の様相を呈する昨今、規模の大小問わず企業が社会に対し、適切な出産、育児の環境を提供することは必須です。
Noteも書いてます
営業を"言語化""構造化"する話を、ゆるめに

