営業マンの自己ブランディング|仕事をしやすくする旗の立て方
営業マンが自己ブランディングできるようになると、仕事はしやすくなるはずです。自己ブランディングができている状態になると、クライアントから「モノを売りに来る人」というイメージ以上に、自分自身個人に対する印象を持ってもらうことができます。また、その人のイメージを持つことによって、自分がどう接すればよいかということをクライアント自身が考えてくれるようになるためです。
自己ブランディングとは
「意識高い系」という言葉を聞いたことがある人も多いと思いますが、流行に敏感だったり積極的に取り入れたりという言葉で使われたり、自分のキャリアを築くことに対して積極的な人たちを指す言葉です。他にも「社畜」だったり「ごますり」だったり、その人を指し示す言葉というのは数多くあります。
自分自身がどのような目で見られたいか、自分自身がどんな人間であるかを自分でコントロールすることを自己ブランディングと言います。そして自己ブランディングは、営業マンにとって自分の仕事をしやすくできる一つの有効な手段です。
SNSを活用した自己ブランディング
SNSを使うことで自己ブランディングというものが一気に容易になりました。それまでは仕事で接点を持った人、それも一回や二回ではなく、何回も会話した人としか自分というものを伝える手段がありませんでしたが、遠く離れていても、極論言うと、接触回数が1回未満であっても自分自身がどういう人間かを伝えることができるようになりました。
営業マンにとってなぜ自己ブランディングが必要か
どのような自己ブランディングを描くかによって、仕事にしやすさは変わります。なぜならば、クライアントから見ると営業マンというのはただのモノを売りに来る人というイメージしか持たれないこともあります。クライアントと営業マンの線を超える難しさはそこにあります。しかしその人自身がどういう人か理解できれば、自分自身の接し方を定義しやすいです。簡単にいうと、自己ブランディングすることによって、相手が自分に合わせてくれるようになります。
また個人の人となりを知ることによって、モノを売りに来る人というイメージ以上のイメージを持ってもらえる可能性もあります。そして何よりも、クライアント自身が無意識に営業マンに対する接し方を考えてくれるようになるというメリットも極めて大きいポイントです。
営業マンが自己ブランディングすることによって得られるようなメリットは下記のようなものがあります。
共通の話題ができる
自分自身が◯◯について詳しい、興味があるということを自己ブランディングの一環で一方的に発信していて、その認知が周囲で高まってくると、その発信に対して、質問をしてきたり、共感を示す人が現れます。例えばクライアントであってもそうです。クライアントに対して自己ブランディングが浸透してくると、たまたま興味を持ったクライアントや、たまたま耳にしたクライアントが質問してくれたりすることで共通の話題を持つことができます。
またどちらかというと自己ブランディングしたいほどの分野ですので、自分のほうがその分野に精通していると言えるでしょう。ある種、自分の土俵に相手を巻き込むことができるというのは大きなメリットと言えます。
相手に合わせた配慮がされる
例えば「納豆が嫌いだ」という人に「納豆を食べろ」とは普通言いません。逆に「フィギュアスケートが好きだ」という人に対しては、フィギュアスケートの話題を積極的に振りたくなります。自己ブランディングとはこの納豆やフィギュアスケートと同じです。
あまり◯◯が嫌いだという自己ブランディングをすることはありませんが、◯◯が好きだ、◯◯に興味がある、◯◯に精通している、という自己ブランディングができていると、相手がそれに合わせた態度を示してくれるようになります。
これは仕事をする上ですごく大きなアドバンテージと言えます。自分自身と自己ブランディングした自分が等身大であればあるほど、自分自身を周囲に正しく伝えることができている状態と言えます。同じような興味を持った人が自然と集まるでしょうし、話も盛り上がります。
特に営業マンとクライアントという関係であれば、極端な例ですが、一つの投稿がすごく気に入ってもらって、距離を近く感じることができるようになったということもあるでしょう。
適切な場に呼ばれる・指名される
例えば、自己ブランディングが完璧にできた状態だと、その分野で何か話題にあがった時に自分の名前があがりやすくなります。◯◯という分野に強い。ということもそうでしょうし、◯◯でわからないなら彼なら詳しいとかこういった場面です。最近のアプリにやたらと詳しいとか、ビジネス書籍に精通しているとか、ベンチャー界隈に顔が広いなど、様々な場面で、適切な場に呼ばれたり、指名されて仕事をもらえる可能性もグンと高まります。
まとめると、営業マンは成果を高めるうえで欠かせない視点です。要点を振り返り、自分の現場に合わせて実践していきましょう。
掲げる旗を一本に絞る──「詳しい」を「相談される」に変える言語化
「◯◯に詳しい人」という認知が周囲に広がると仕事がしやすくなる、という感覚は営業3年目なら実感があるはずです。問題は、その◯◯を何にするかを、なんとなくの好みで決めてしまいがちなことです。旗は、好きなだけでは弱く、詳しいだけでも弱く、「相手の困りごとに効く」ところで初めて武器になります。
選ぶときは、三つの円が重なる場所を探してください。自分が続けて学べること、担当している顧客層が実際に困っていること、社内で他の人があまり掲げていないこと。この三つが重なる一点が、あなたの旗です。たとえば「製造業の現場改善に詳しい」より「工場の若手離職に効く採用まわりに詳しい」のように、業種と場面まで絞ったほうが、相手は自分ごととして思い出せます。広い旗は誰の記憶にも残りません。
言語化のコツは、「好き・興味がある」ではなく「誰のどんな場面に効くか」で一文にすることです。そしてその一文を、第三者が又聞きで他人に伝えられる短さまで削ります。自己ブランディングは、自分が説明する場面より、あなたのいない場所で誰かがあなたを説明する場面のほうが多く発生します。商談後の雑談、名刺交換の一言、社内会議での発言。同じ一文を、場面が変わっても崩さずに置き続けることで、旗はようやく人の記憶に定着していきます。
顧客の外側に、社内という第二の観客を置く
自己ブランディングというと顧客向けの話に見えますが、指名や紹介が生まれる起点は、実は社内にあることが少なくありません。上司が取引先に誰を連れて行くか、同僚が顧客に「うちの◯◯が詳しいので」と誰の名前を出すか、案件が振られるときに真っ先に浮かぶのが誰か。これらはすべて、あなたが顧客に会う前の段階で、社内の視線によって決まっています。
営業3年目にありがちなのは、外向きの発信ばかりに気を取られ、隣の席への浸透を後回しにすることです。順序としては逆で、まず机を並べている人の記憶に旗が立っていないと、顧客に届く経路そのものが生まれません。
社内に旗を立てる方法は、派手なものではありません。朝会や社内チャットで、自分の担当領域の小さな知見を定期的に共有します。案件で得た知見を口頭で終わらせず、短いメモとして残して他の人が引ける状態にします。他部署から来た相談に、たとえ自分の案件でなくても一度は乗ってみます。こうした積み重ねが、「この領域はあの人」という一言を社内に生みます。顧客からの指名は、その社内の一言が外へ滲み出た結果として、後からついてきます。
発信は「頻度」より「重なり」で設計する
遠く離れた相手にも自分を伝えられるようになった、という手軽さの裏で、多くの人が「量を出すこと」に発信の焦点をずらしてしまいます。営業の自己ブランディングで効くのは、投稿数の多さではなく、触れる面がひとつの像に重なっていることです。
まず、発信する場所は顧客が実際に目にするところへ合わせます。BtoBであれば、SNSの投稿だけでなく、プロフィール文、名刺の肩書き、メール署名、商談冒頭の自己紹介の一言までを、ひとつの「発信面」として捉えてください。ここで掲げる旗が媒体ごとにバラついていると、相手の中で像が結びません。プロフィールで語る顔と、実際に会ったときの振る舞いが同じであること。この一貫性が、第一印象を後から補強してくれます。人の第一印象は初回で固まりやすく、後から上書きするには何度も接触が要る、というのが一般的な傾向です。だからこそ、最初に見せる旗と実物を最初からそろえておくほうが効率的です。
発信を続けるコツは、毎日投稿することではなく、同じ旗を掲げ続けることです。ネタは背伸びして探すのではなく、自分の実務から拾います。担当領域で気づいたこと、顧客との会話で出た小さな発見。頻度が落ちても旗さえブレなければ像は保たれますが、旗が回ごとに変われば、どれだけ投稿しても像はぼやけていきます。
「盛った自分」は必ず剥がれる──等身大からはみ出さない
自己ブランディングには、やりすぎると逆効果になる境界があります。実績を少し大きく語る、詳しくない分野でも専門家のように断定する、発信が価値提供より自分語りに寄っていく——こうした兆候が出ると、周囲は「痛い」「うざい」という印象を先に持ち、旗そのものが警戒されるようになります。
営業の現場で怖いのは、盛った旗はどこかで必ず実務にぶつかることです。専門家として振る舞っていた領域で、顧客の一つの質問に答えられず、ボロが出てしまいます。その一度で、それまで積み上げた像が崩れます。演出と中身のギャップが大きいほど、崩れたときの落差も大きくなります。
境界の引き方はシンプルです。語ってよいのは、自分が実際にやったこと、調べたこと、経験したことの範囲まで。その外側に踏み出しそうになったら、「そこは調べてお持ちします」で止めます。知らないと言うことは旗を汚しません。むしろ、答えられる範囲と答えられない範囲の線がはっきりしている人ほど、掲げた旗の信ぴょう性が上がります。自己ブランディングとは、自分を大きく見せることではなく、実物の輪郭を相手にくっきり見せることです。輪郭が実物と重なっているほど、その旗は剥がれません。
自己ブランディングは「つくる」のではなく、相手の中に「立ち上がる」
ここまで旗の選び方や発信の設計を並べてきましたが、最後に順序を逆から眺めてみます。自己ブランディングという言葉は、どうしても「自分で自分を作り込む作業」に聞こえます。プロフィールを整え、発信を重ね、キャラクターを演出します。けれど、ブランドが実際に成立している瞬間は、いつも自分の外側で起きています。顧客が別の誰かに「あの件ならあの人が詳しい」と話したとき、上司が取引先へ「うちの◯◯を連れて行きます」と言ったとき。そこで初めて、旗は像として立ち上がります。つまり自己ブランディングとは、自分が発信した内容そのものではなく、相手の記憶に残った「差」のことです。旗を立てるのは自分でも、その旗を像に変えて完成させるのは、いつも相手です。
この順序を取り違えると、演出だけが先行します。差として覚えられてもいないのに、見せ方の厚みばかりを増やしていきます。語れる中身より大きな旗を掲げてしまいます。その瞬間は華やかでも、一度でも実務でボロが出れば、盛った分だけ落差が際立ちます。中身の伴わない演出が剥がれるのは、剥がすのもまた相手だからです。相手は演出そのものを採点しているのではなく、接するたびに「聞いていた話と、目の前の人がそろっているか」を静かに照合しています。そろっていれば旗は濃くなり、ずれていれば旗は色あせていきます。
だとすれば、営業3年目がまず問うべきは「どう見せるか」ではなく、「相手の記憶に、どんな差として残っているか」です。いま自分がいない場所で、自分はどう説明されているか。又聞きで一言に縮められたとき、何が残るのか。その一言が、実際の自分と等身大で重なっているか。ここがそろっていれば、発信の頻度が多少落ちても像は保たれます。逆にここがずれていれば、どれだけ発信を増やしても像はぼやけたままです。
自己ブランディングは、自分を実物以上に見せる技術ではありません。自分の実務が生む「差」を、相手が思い出しやすい形に整えて、相手の視界の手前に置いておく——その置き方の設計です。旗は自分で立てますが、その旗を覚えているのは、いつも机の向こう側の人です。だからこそ、掲げた旗と日々の仕事がずれない範囲で旗を育てていくことが、剥がれないブランドをつくる唯一の道になります。

