AI営業リストの優先順位の付け方|捨てる線を先に引く

AIで営業リストに優先順位を付けると、何が変わるのか

営業リストの優先順位付けにAIを使うと聞くと、まず作業が速くなる話を思い浮かべるかもしれません。ですが実際に変わるのは速さではありません。変わるのは判断の再現性です。「この会社はたぶん当たる」というベテランの頭の中にある感覚を、誰が見ても同じ順番を再現できる基準として外に出す。これがAIで優先順位を付けるという作業の中身です。従来のやり方は、リストの上から順に架けるか、規模の大きい順に並べるか、あるいは経験のある人が選ぶかのどれかでした。AIを使う場合の並び順は、自社が実際に受注できた会社に似ている順になります。似ているかどうかを判定する基準を人が用意し、その基準どおりに全件を採点させる、という分担です。なお、この記事が扱うのは手元にあるリストをどう並べるかであり、企業情報の収集や名寄せといったリストそのものの作り方は前提として範囲外に置きます。

決め方速さ再現性新人が使えるか
ベテランの勘で決める速いです本人の中にしかありません渡せません
リストの上から順に架ける速いです誰がやっても同じ順になります使えます(当たるかは別です)
AIで軸を決めて並べる準備に手間がかかります基準が外に出るので保てます使えます

優先順位付けは「並べ替え」ではなく「捨てる線を引く」こと

優先順位という言葉には、どこか前向きな響きがあります。有望なものを見つけ出し、そこに力を集める。ですが順位そのものは、実のところ何も決めていません。順位は情報であって、決定ではないからです。情報が決定に変わるのは、使える時間も人手も有限だと認めた瞬間だけで、その宣言が無いあいだは、どれだけ精緻な序列を持っていても、組織の動き方は前の週とほとんど変わりません。スコアが機能しないと感じたとき、私たちはたいてい精度を疑います。もっと良い基準があるはずだ、もっと賢いモデルがあるはずだ、と。しかし疑うべきなのは精度ではなく、有限性をまだ誰も口に出していないことのほうかもしれません。選ぶという行為は、選ばなかった側を引き受ける行為と必ず対になっています。前半だけを取り出して運用できると考えたところに、無理があるのではないでしょうか。

優先順位を付けるという言葉は、たいてい「並べ替える」という意味で受け取られます。上から順に有望な会社が並んだリストができれば、成果が上がるはずだと考えます。しかしここには落とし穴があります。並べ替えただけでは、成果はほとんど動きません。理由は単純で、一日に架けられる件数も、月に確保できる商談の枠も、並べ替えでは一切増えないからです。上位から順に架けたところで、その日に接触する会社の顔ぶれが入れ替わるだけで、投じている時間の総量は前と変わりません。順位の効果が出るのは、順位そのものではなく、その順位を使って下を捨てたときです。線より上には複数回の接触を重ね、線より下は今期は触らない。この線引きを人が決めて初めて、上位に資源が集まり、接触の密度が変わります。密度が変われば結果が動きます。裏を返せば、線を引かないまま全件に薄く架け続けている限り、どれだけ精度の高いスコアを出しても数字は動きません。ですから作業の順序は、多くの人が想像するものとは逆になります。AIに並べさせるのが先ではありません。今期どこまで手が回るのかという線の位置を人が先に決め、その線を引くためにAIに並べさせるのが正しい順序です。線を決めていない組織でスコアだけが配られると、現場は結局すべての会社に架け続けます。この状態は運用の問題に見えて、実際には線を引いていないことが原因です。

※著者の体験

私が長く手元に持っていたのは営業リストではなく、転職を考えている方のリストでした。営業職に特化した転職エージェントを五年ほど続けて、面談させていただいた方は約3,000名、そのうち実際に転職まで支援できたのは100名を少し超えるくらいです。

数の上では、お会いした方の大半とは結果に至っていません。ただ、当時の私が難しいと感じていたのは、誰から先に連絡するかを決めることではありませんでした。順番のほうはいくらでも並べ替えられます。決められなかったのは、どこから先は自分から連絡しないのか、のほうです。今は動かないと分かっている方にも、月に一度は求人を送っていました。送るのをやめる理由が、自分の中に用意できていなかったからだと思います。

順番を考えている時間は、いま振り返るといちばん安全な時間だったのかもしれません。並べているあいだは、まだ誰も外していないことになるからです。

優先順位の軸を決める — 自社の受注実績から逆算する

AIに優先順位を付けさせようとして最初に詰まるのは、たいていツールの使い方ではありません。何を基準に並べるのかを、人間の側が持っていないことです。AIは与えられた基準に沿って採点することはできますが、その会社にとって何が有望さのしるしなのかを発明することはできません。基準を渡さずに頼めば、AIは世間一般で有望とされる条件、つまり規模が大きい、知名度がある、といった一般論で並べます。それは自社の受注実績とは無関係な順番です。ですからこの章が、優先順位の付け方の核になります。やることは、自社がすでに持っている受注と失注の記録から、当たる会社の条件を逆算することです。以下では、差分から軸を見つける手順、実績が乏しいときの代わりの軸、そして軸への重みの付け方の順に見ていきます。

受注できた会社と失注した会社の差分を並べる

直近一年から二年ほどの受注案件と失注案件を、それぞれ一覧にして横に並べます。そのうえで、従業員数、業種、拠点の数、上場しているかどうか、すでに導入しているシステム、問い合わせの経路、商談に出てきた人の役職といった項目ごとに、両者の分布がどう違うかを見ます。ここで探しているのは「受注群に多くて失注群に少ない項目」だけです。受注群と失注群で分布に差が出ない項目は、軸にしてはいけません。差が無い項目を軸に入れると、全社の点数が同じ方向に動くだけで、順位を分ける力を持ちません。とくに注意したいのが企業規模です。大手ほど当たるという感覚は広く共有されていますが、それが自社の実績で裏付けられるとは限りません。裏付けが取れない項目を「一般にそう言われているから」という理由で軸に残すと、最初の設計時点で順位が歪みます。差が出た項目だけを残す、という引き算がこの作業の本体です。

※著者の体験

採用広告や媒体、RPOを扱っていた頃に作ったフレームがあります。4Cと呼んでいて、Competitor、Candidate、Channel、Company の四つで、競合との差を一つの数字にして見るためのものです。

このフレームを実際の商談で使うようになって効いたのは、差が出た項目を見つけること自体よりも、その差が自分たちの手で動かせる場所かどうかでした。差は確かに出ているのに、こちらからは何も触れない項目というのがあります。それを見つけても、話は「そうなんですね」で終わってしまいました。反対に、差を指摘したうえで、そこを埋める手段をこちらが持っている場合は、同じ指摘でも先方の反応がまるで違いました。4Cが四つに絞られているのは、比べたときに差が出て、なおかつ自分たちが握っているレバーと重なる項目だけが残ったからです。

差が出るかどうかと、自分がそこに触れるかどうかは、本当は別の話です。私は前者ばかり見ていて、後者を見落としがちだったような気がします。

受注データが無い・少ないときに使える代理の軸

新商材を立ち上げたばかりで受注がほとんど無い場合、差分を取る材料そのものがありません。この状態で他社の成功事例を持ってきて軸にしても、自社の商談とは前提が違うため機能しません。代わりに使えるものが三つあります。一つ目は、受注に至らなかった商談も含めて、話が前に進んだ理由と止まった理由を並べることです。受注件数が少なくても商談の記録は残っているはずで、進んだ側に共通する条件は軸の候補になります。二つ目は、課題が表に出ているサインです。求人票に書かれた業務内容、事業拡大の発表、担当部署の新設といった外から見える動きは、その会社が今その問題を抱えていることを示します。三つ目は接触のしやすさで、問い合わせ導線があるか、決裁層までの距離が近いかといった条件です。ただし、これらはすべて検証されていない仮説です。仮説であることを明示したうえで軸に置き、後述する検証の章で潰していく前提にしてください。

軸に重みを付ける — 点数配分は「差が出た順」に決める

軸が決まったら、それぞれに何点を割り当てるかを決めます。ここで感覚に頼ると、重要そうに見える項目に高い点を振ってしまいがちですが、基準は明確です。受注群と失注群で分布の差が大きかった項目ほど、重みを大きくします。差の大きさがそのまま、その項目が順位を分ける力の大きさだからです。差が小さかった項目に高い点を与えると、当たりと外れを区別できない情報が順位を支配することになります。もう一つ守りたいのが軸の数です。軸を増やすほど精度が上がるように思えますが、実際には逆で、軸が多くなるほどどの会社もそこそこ点が入り、全社が中間に固まって順位が付かなくなります。軸は多くても片手で数えられる程度に絞ってください。絞る基準も同じで、差が大きかった順に上から残し、差が小さい項目は落とします。

軸の候補受注群での出方失注群での出方採否
従業員規模大小が混在しています大小が混在していますほとんどありません見送ります
業種特定の業種に偏っています広く散らばっています大きいです採用します
問い合わせ経路自社サイト経由が中心です一括配信への反応が中心ですあります採用します
商談に出た役職決裁層が同席しています担当者止まりが多いです大きいです採用します
拠点数ばらついていますばらついていますほとんどありません見送ります

AIに渡す材料と、優先順位を出させる手順

軸と重みが決まったら、ようやくAIに渡す段階に入ります。この章で扱うのは、渡すデータをどんな形に整えるか、指示文に何を書くか、そして出てきた結果をどう受け取るかの三つです。手順そのものは短く、慣れれば作業自体は単純です。ただし、この三つのどこで手を抜いても、出てくる順位は使えないものになります。ですから以下では、各ステップで間違えるとどうなるかを合わせて書きます。とくに指示文の作り方は、AIで優先順位を付けて外す原因のほとんどが集まる場所です。ツールの機能差より、渡す材料と指示の設計のほうが結果を大きく左右する、という前提で読んでください。

渡すデータの形 — 列を先に決める

最初にやるのは、表の列を決めることです。一社を一行とし、企業名、業種、規模、前章で決めた軸の値、これまでの接触履歴を列として並べます。表計算ソフトやCSVで一社一行に揃えるところまでを人がやります。ここで重要なのが、すでに自社が持っている列と、AIに調べさせる列を分けておくことです。自社の商談記録から取れる接触履歴や商談の進み方は、正確な一次情報です。一方、AIに補完させた従業員数や事業内容は、古い情報や別会社の情報が混ざることがあります。この二種類を同じ列に混ぜてしまうと、後で順位が外れたときに、軸が悪かったのかデータが誤っていたのかを切り分けられなくなります。列の名前か、別の列を一つ設けるかして、出所が分かる状態にしておいてください。

指示の書き方 — 判断基準を固定してから並べさせる

指示文でやってはいけないのが、「良さそうな順に並べてください」と頼むことです。この頼み方をすると、AIは自社の実績を知らないまま、規模が大きい会社や知名度のある会社を上に置きます。基準を渡さないとAIは一般論で並べる。これがAIで優先順位を付けて外す最大の原因です。正しい書き方は、軸と配点を先に固定して渡すことです。決めた軸を列挙し、それぞれ何点を上限とするか、どんな状態のときに何点を入れるかまで書き、そのうえで「この軸と配点以外の観点を使わないこと」「軸と配点を変更しないこと」と明示します。合計点の高い順に並べるところまでを一度の指示に含めます。基準を文章として書き切れない場合、それはまだ軸が固まっていないということなので、前章に戻ってください。

出力の受け取り方 — スコアと「そう判断した理由」を必ずセットで出させる

出力させる項目は四つです。順位、合計点、各軸ごとの点、そしてそう判断した根拠を一文で。このうち見落とされやすいのが根拠ですが、これは飾りではありません。根拠を出させる理由は、順位が外れたときにどの軸が原因だったかを追えるようにするためです。合計点だけが並んだリストは、外れても直しようがありません。各軸の点と一文の根拠が残っていれば、外れた会社を集めて共通点を探し、どの軸が効いていなかったのかを特定できます。根拠はもう一つの役割も持ちます。現場に順位を渡すとき、なぜその会社が上位なのかを説明できるかどうかが、その順位が使われるかどうかを決めます。なお、根拠が書けない会社が出てきた場合は、情報が足りない会社として別枠に落とし、無理に点を付けないでください。

付けた順位は当たっているのか — 検証の仕方と、外れたときの直し方

ここまでで順位は出ます。しかし多くの人が本当に不安なのは、その順位を信じていいのかという点です。AIが出した点数には、なぜその点になったのかが分かりにくいものもありますし、そもそも軸を決めたのは自分たちですから、その軸が正しかったという保証もどこにもありません。この不安を解消する方法は一つしかありません。実際に架けて、順位が当たっていたかを測ることです。しかも測り方を先に決めておかないと、後から検証しようとしても比較する材料が残っていない、という状態になります。以下では、当たっているかの測り方、外れ方の三つのパターンとその切り分け、そして見直す頻度と直す順番を扱います。

上位群と下位群の実績差で測る

測り方は単純です。上位群と下位群に同じだけ接触し、アポ率と商談化率を比べます。上位群のほうが明確に高ければ、軸は効いています。両者にほとんど差が無ければ、そのスコアは当たる順に並べたものではなく、ただの並べ替えだったということになります。ここで一つ、運用上どうしても必要になる注意があります。順位を付けた直後は、当然ながら上位から架けたくなります。ですが上位にだけ架けてしまうと、比較する相手が存在しなくなり、効いているのかどうかを永久に判定できません。ですから下位からも少数を必ず架けて、検証枠として残しておいてください。一見すると無駄な接触に見えますが、この枠が無い限り、軸が正しいかどうかは分からないままになります。検証枠を最初の運用ルールに含めておくことが、後から軸を直せるかどうかを分けます。

外れ方は3パターン — 軸が違う/重みが違う/データが古い

外れたときは、まず外れ方の形を見ます。一つ目は、上位群と下位群で結果がほとんど変わらないパターンです。これは軸そのものが受注と関係していないことを意味しますから、軸の選び直しに戻ります。二つ目は、上位群の中で当たりと外れが極端に分かれるパターンです。この場合は軸の方向は合っていて、配点のバランスが崩れています。特定の一つの軸が効きすぎて、その軸を満たすだけで上位に入る会社が混ざっている状態なので、重みを調整します。三つ目は、特定の業種や特定の条件の会社だけがまとめて空振りするパターンです。これは軸の問題ではなく、その領域のデータが古いか誤っている可能性が高いので、元データの出所を確認します。この三つを混同したまま手を入れると、直したつもりで別の場所を壊すことになります。

症状疑う場所打ち手
上位群と下位群で結果が変わりません軸が受注と関係していません受注群と失注群の差分から軸を選び直します
上位群の中で当たり外れが極端です重みの配分が偏っています効きすぎている軸の配点を下げます
特定の業種だけがまとめて空振りします元データが古いか誤っていますその列の出所を確認し、一次情報で取り直します

見直す頻度と、直すのは軸か重みか

見直しの周期は、月次のようなカレンダーではなく、接触件数を基準にしてください。月末が来たから見直す、というやり方だと、その月にあまり架けられなかったときに、わずかな結果を見て軸を動かすことになります。それは改善ではなく、偶然に振り回されているだけです。あらかじめ「これだけ架けたら結果を見る」という件数を決め、その件数が溜まるまでは手を入れない、と決めておきます。直すときの順番も決まっています。先に重み、次に軸です。重みの調整は配点を変えるだけで済み、影響範囲も限定されます。一方、軸を作り直すのは設計のやり直しに近く、それまでに蓄えた接触結果との比較も途切れます。ですから軸から作り直すのは、十分な件数を架けてもなお上位群と下位群に差が出ないと確認できたときに限ります。

AIで優先順位を付けない方がよい場面

ここまで手順を書いてきましたが、そもそもこの作業をやらないほうがよい場面があります。やらない判断を先に示しておくことで、どういう条件が揃っていれば前章までの手順が機能するのかがはっきりします。まず、リストの件数が少なく、今期のうちに全件へ接触できてしまう規模の場合です。全部に架けるのであれば、並べ替えても架ける相手は変わりませんから、順位を付ける意味がありません。次に、商材が新しく受注実績がほとんど無い場合です。軸を作る材料が無いため、作れるのは仮説だけになります。この段階では、まず一定数を当てて実績を貯めることが先で、スコアリングはその後の作業です。三つ目は、商材が業種や規模を問わず広く浅く刺さるタイプの場合です。受注群と失注群で分布に差が出ないため、軸を探しても見つかりません。四つ目は、意思決定者が一人で全件を見ている小規模な組織です。属人的ではあっても、判断が引き継げないという問題がまだ起きていないため、仕組み化の必要が生じていません。

現場が並び順どおりに動かないときに見るところ

決めたとおりに動かない、という現象は、たいてい徹底の問題として語られます。伝え方を工夫し、説明を尽くし、それでも動かなければ意識の問題だとされます。ですが、この見方には抜けているものがあります。組織の中では、決める側と触れる側とで、持っている情報がそもそも違うということです。設計する側に見えているのは記録に残ったものだけで、現場の側は、記録に残らなかったものを毎日受け取っています。だとすれば、指示と実際の動きのあいだに生まれるズレは、統制が緩んでいる証拠であると同時に、片方にしか無い情報が表に出てきた瞬間でもあります。徹底を強めるほど、そのズレは表に出にくくなるのかもしれません。全員が指示どおりに動く組織は、自分たちの基準がどこで間違っているかを知る手段を、同時に手放しているとも言えそうです。

スコアは出た。上位から架けるようにも伝えた。それでも営業は自分がやりやすい会社から架けていく。この状態はよく起こりますが、原因を現場の意識に求めても解決しません。見るところは三つあります。一つ目は、線が引かれていないことです。下位を今期は捨てるという指示が無ければ、現場は全件に架け続けるのが自然です。順位は着手の順を変えるだけで、やめる理由にはなりません。二つ目は、根拠が現場に見えていないことです。なぜその会社が上位なのかを説明できないスコアは従われません。各軸の点と判断の根拠を、順位と一緒に現場へ渡してください。三つ目は、軸が現場の実感とずれていることです。そしてこの場合、正しいのは現場であることが少なくありません。日々話している相手の手応えは、記録に残っていない情報を含んでいます。ですから「この順番はおかしい」という声は、指示への抵抗としてではなく、軸に対するバグ報告として扱い、軸の見直しに戻してください。運用の落とし所としては、全件の序列を配るのをやめることです。順位を命令として渡すのではなく、「今週はここから始めます」という着手の順として、扱える件数だけを渡すほうが機能します。

※著者の体験

独立してから六年ほど、外部の立場で営業組織の設計に入ってきました。KPIの置き方を決めたり、標準のやり方をまとめて配ったり、という仕事です。

この立場でよく起きるのが、設計したものが現場でそのとおりには動かない、という状況です。私はしばらく、配り方や説明の仕方の問題だと考えていました。ただ、良いレシピがあることと、その厨房で同じ味が出せることは、別の能力の話です。上流の型をどれだけ研いでも、それを毎日手で回す側の条件が揃っていなければ、結果のほうは動きません。そして外から入った人間が触れるのは前者だけで、後者については、そこに毎日いる人のほうが圧倒的に詳しいのです。

ですから「この順番、なんか違う気がします」と言われたときに、説明を重ねて押し返そうとしたのは、私の側の逃げだったのかもしれない、と今は思っています。

データの鮮度と法令面で外せない注意点

最後に、運用前に押さえておく点を挙げます。AIが補完した企業情報、たとえば従業員数、事業内容、担当者名などは、古い情報や誤った情報が混ざる前提で扱ってください。架電の前に、自社サイトや法人番号公表サイトといった一次情報で確認したかどうかを記録する列を、リストに一つ持っておくと安全です。個人情報を含む場合は、その取得元と利用目的を説明できる状態にしておく必要があります。公開されている情報であっても、生成AIのサービスに投入してよい範囲は社内でルールを決めてから運用してください。あわせて、利用するサービスで入力データが学習に使われない設定や契約になっているかを確認します。

  • 無料のAIツールでもできますか。軸と配点を自分で決めて渡せるなら、採点と並べ替え自体はできます。ただし入力データの取り扱い設定は必ず確認してください。
  • AIが出した順位をそのまま新人に渡してよいですか。順位だけを渡すのは避けてください。各軸の点と判断の根拠、そしてどこまで架けるかの線を一緒に渡します。
  • 軸はどのくらいで見直しますか。カレンダーではなく接触件数を基準にし、決めた件数が溜まってから結果を見て判断します。

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筆者:店長

営業と、競馬と、しゃべる植物。あっAIも。つい、いろいろ作ってしまう人です。

→ 店長の正体(詳しいプロフィール)

店長

Xアカウント:@nishi_sales_ai 新卒で大手IT企業に入社し、飛び込み営業から深耕営業、大手企業担当まで第一線で経験を積む(表彰歴多数)。その後、事業企画・営業企画部門で経営に近い立場から営業組織と数字に向き合い、10年勤続を経て独立。営業組織の改善に特化したコンサルタント企業を立ち上げる。 コンサルタントして数々の現場に入りつつ、自ら営業特化の転職エージェントも運営。近年はAIを活用した営業組織の業務改善・生産性向上プロジェクトに携わる。現場の最前線と経営の両方を見てきた視点から、営業3年目前後がぶつかる壁を越えるための実践知を発信する。

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