栓抜きの原理を試しに営業組織にぶち込んでみたら、業績が上がった話

栓抜きの原理を試しに営業組織にぶち込んでみたら、業績が上がった話

歯でビール瓶あけようとしてもそりゃしんどい。なのに営業組織の長はなぜ栓抜きを使わずにずっと歯であけようとするのか。ずっと乾杯できない。

栓抜きには3つの登場人物がいる。 支点、力点、作用点。 難しく聞こえるけど、要は「かけたパワーに対して、最大限成果が出る場所を考えようぜ」っていう、同じ力でも結果が変わる、その話をしたい。

そしてこの"てこの原理"は、
・劇的に成果がわかる可能性を秘めていて
・短期で実装可能
だけでもテレビショッピング的なお得が盛りだくさんなのに、なんとお値段「別に難しくない」という衝撃プライスでのご提供が可能なお品となっている可能性も高い。

ちなみにほとんどの営業組織は、薄々気づいている。
やっていないのは「気づいていないこと」じゃなくて、 「そこに大胆に張り切れていないこと」なんじゃないかという仮説もある。

例えば、今過去の受注トレンド実績が目の前にあるとする。あなたはキーボードショートカットとSumifを駆使して、ここに営業組織最大化のキーが隠れていないかを確認している。

きっと、営業組織ごとの生産性は見るだろう。商品ごとについても「この区分じゃ細かすぎてよくわからん」って憤るだろう。そして気づく。うちの組織の売上の大半は上位2割の顧客に支えられてんだな、と。

これこそが、今日大きめの声量で言いたい営業組織のレバレッジである。

“あー大手の売上伸ばせってことでしょ”みたいなそういう話でもあるしそういう話だけでもない。

例えば、先ほどのExcelに昨年や一昨年の受注実績があれば、是非Pivot組んでクライアントごとの売上推移を見てほしい。なんならローデータを手にした瞬間にやっているはずだ。

そして貴社にも「顧客セグメント」や「顧客区分」はあるはずだ。一番メジャーなのは、顧客の業界かもしれない。そして、一回、そのExcelのローデータD列当たりの顧客セグメントを削除してしまおう。

そしてフラットな状態で、もう一度Pivotを組んでみる。そして取引額が伸びている企業・伸びていない企業で降順で並び替えをしてみる。

見なくてもわかる。取引が伸びている企業には、顧客自身の業績を伸ばしている顧客が多く、取引が死にかけている下の方の企業には業績が下降気味の顧客が多い。よほどの急成長急降下の営業組織でなく±20%ぐらいの営業組織であれば、ほぼ間違いなくそうなっている。

問題は、取引先顧客の業績の経年データ。そのデータがそのExcelにないことだけである。

では、もし仮にExcelにそのデータがあったとする。そこで少しシミュレーションをしてみよう。
顧客側の業績が伸びている企業群5に対して、伸びていない企業群5の割合だったと仮定して、それが6:4になったら、7:3になったら。
自社の営業組織の成績は恐らく一桁後半程度の伸び率変化を生んでくれると思う。

じゃぁ伸びている顧客と付き合うことと、少し業績が落ち目にある顧客と付き合うことの難易度が営業にとって大きな差、かというと。そこまでクリティカルとは思えない。
むしろ、業績が落ち目であるほどコスト意識が厳しく発注難易度が高いまである。

では、営業の実力が伸びないとこの一桁後半の伸び率寄与は獲得できないのだろうか。いいやそんなことはない。ただ当たり先を偏らせただけのシミュレーション結果である。

これは極端な例かもしれないけど、明日メンバーの営業スキルが劇的に変わるってことは多分ない。モチベーションにしてもそうだろう。顔ぶれも実力もやる気も何も変わらないとしても、組織の意志決定だけで、営業組織を動かせる可能性があるという意味で言うとかなり検証コスパの高い施策だと僕は思っている。

そして、僕はこのレバレッジという考え方の信者でもある。僕には原体験がある。

グルメサイトの広告営業およびその営業企画を例にする。経営陣に求められたのは「グルメサイト事業のKPIの有用性について語れ」だった。
グルメサイト事業、ぐるなびだとか、食べログだとか、ホットペッパーだ。

いわゆるマッチング型ビジネスなので、カスタマー側と顧客側両方にKPIは置かれている。前者は新規会員登録数とか、会員当たりの一か月の予約数だとか。
後者は、継続率だとか商談数だとか。

ロジックツリーで砕いたKPI指標をベースに現在のKPI運用について僕は売上の変数を説明していた。ツラツラと説明を聞き終わった役員は「新規会員数落ちてるのに売上伸びてるんだったらそれもうKPIじゃないじゃん」とペーパーを置きながら言った。
室内で風が吹いているわけでもないのに、ペーパーがフワっと浮いたような気がした。

なんだと。

ぐぅの根もでないほどの一言だった。会員登録と売上の時期がズレ・・・てないことも直感的に分かった。つまり、ずっと現場や僕たちの事業が追いかけてきたKPIが、全然Key Performance Indicator になっていなかったのだ。

そこに年収1000万を超える人間が何人もいたのに、あまりの役員の正しさに何も言えないでいた時、僕の隣の部署のGMが、ホワイトボードに書き始めた。

中央に「新店」と書かれたあと、横に「周辺競合店」と書いた。そして、その二つを「新橋」という円で囲った。そして静かに役員に向きながら語り始めた。

「新橋エリアに大きめの新規出店が重なりました。これによって、まずベースとなる広告出稿費の獲得ができます。そして周辺競合店はどうしても集客が落ちます。つまり広告宣伝費を投下します。結果、ここで顧客同士の”顧客獲得競争”が起きます」

ここまで語ると今度は隣に、「神田」と書き、そして話し始めた。

「これまで神田で店を探していた人たちが、新橋で起きた顧客獲得競争の影響で新橋の客単価が下がり、神田よりも新橋を選び始めます。すると今度は神田でも顧客獲得のための広告費出稿がかさみます。
もちろんこれは店舗側の集客費単価を上げる構造です。各店舗が少しずつ辛い。結果的に労せず売上が伸びたのは我々グルメサイト側です。これが、今の事業のKPIと言えるでしょう。もちろん顧客の新規出店なんてのは我々にはコントロールできません。ただし、一番儲けたのは我々です

この時ほど「構造」という言葉の持つ強さを知った日はない。

そして、もう一つの大きな発見は「何もしなくてもただそこに座っているだけで売上が伸びることがある」という点だった。
これこそが僕のレバレッジ理論=“小さな努力で大きな成果を得る。とにかくそのことについて考え抜く”の起点となった出来事だった。

おっさんの長めの自分語りを経て、もう一度先ほどのExcelを見てみる。

伸びている顧客と付き合う、もレバレッジである。
他にも「ほっといても単価や取引量を伸びている顧客」はいないか?
「何もしなくてもリピートする顧客」はいないか?

結論は、顧客マスタの中に必ずいる。
その次にすることは、「なぜその顧客から何も労せずリピートや単価アップを勝ち取れるのか」という点である。KPI至上主義をあざ笑うレベルの仮説を持ってそのExcelを眺めてみてほしい。

静かに聞いていた役員は特に重たくない口を開いた。
「自分でコントロールできないものが最重要指標、か。まぁ構造的にありえるわな。営業戦略とは言えないけど。いいじゃん。何もしなくても勝手に売上伸びるならそれに越したことはないと思う」

みんなが頑張ってるところ走ってるところ悪いけど、オレはバス乗るね。まだ席あいてるよ。

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筆者:店長

営業と、競馬と、しゃべる植物。あっAIも。つい、いろいろ作ってしまう人です。

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店長

Xアカウント:@nishi_sales_ai 新卒で大手IT企業に入社し、飛び込み営業から深耕営業、大手企業担当まで第一線で経験を積む(表彰歴多数)。その後、事業企画・営業企画部門で経営に近い立場から営業組織と数字に向き合い、10年勤続を経て独立。営業組織の改善に特化したコンサルタント企業を立ち上げる。 コンサルタントして数々の現場に入りつつ、自ら営業特化の転職エージェントも運営。近年はAIを活用した営業組織の業務改善・生産性向上プロジェクトに携わる。現場の最前線と経営の両方を見てきた視点から、営業3年目前後がぶつかる壁を越えるための実践知を発信する。

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