コンサルティング営業に必要な思考とスキル|鍛え方の実践

実際にコンサルティング営業として活躍していくために求められる要素として、未経験の人でも持ち合わせておかねばならない「思考」と実際のコンサルティング営業としての「スキル」の大きく二つのパートに分けてまとめました。思考については「必要以上の当事者意識」スキルについては「引き出しの数を増やすこと」がコンサルティング営業として活躍するポイントです。

コンサルティングできる営業マンになるために

コンサルティングできる営業マンはどのような「思考」と「スキル」を兼ね備えているのでしょうか。もしかしたらスタイリッシュな響きでなんとなく格好いいとコンサルティング営業を目指す人もいるかもしれません。ただし、本当の意味でクライアント課題に向き合い、クライアント課題をソリューションしていける営業マンはほんの一握りです。

おそらくその一握りの営業マンとしてカウントすることのできる人たちは社内でも社外でも、極めて強固な信頼関係を築き、「積極的に売りにいかなくても、自動的にアカウントが後からついてくる」というような、まさに営業として理想の働き方を実現できているのではないでしょうか。彼ら彼女らはどのようなステップを経て、クライアントからの信頼を勝ち取り「Mr.コンサルティング営業」としての今のポジションを手にすることができたのでしょうか。

コンサルティング営業が持ち合わせている「圧倒的当事者意識の思考」

クライアントに踏み込んで引っ張ることのできる営業マン

コンサルティング営業として確固たる地位を築くできる人たちに共通している思考(仕事へのスタンス)として「圧倒的当事者意識を持ち合わせている」という点を挙げることができます。当事者意識とはつまり「我が事化」クライアントの立場に「立つ」だけではなく「踏み込み、そして率先する」ような意識を持っている、という点は共通して言えるでしょう。

一つの例でいうと、コンサルティングしていくにあたり、自分の持っている定量的なデータだけでは、そこから言及できることはある程度限定され、ソリューションや提案の幅が狭くなるということは往々にしてあります。そういった時に、圧倒的当事者意識の持ち主達は「データがこれだけしかないのだからしょうがない」ではなく、「クライアントの可能性を高めることができる方法は他にはないのか?」という思考を持ちます。

当事者意識がもたらしてくれるもの

当事者意識がもたらしてくれる思考として「自分がクライアントだったら、恐らくありもののデータだけで判断をしていくという状況や環境に留まることを望まないはず。当事者の立場に立てば、もっと大きな選択肢や可能性の中から最適な一手を打ちたいと考えるはず」という完全にクライアント側にたった物事の考え方になります。主語が営業である自分ではなくクライアントになるのです。大げさな例でいうと「自分でお金を払ってもいいと思える提案以外はしない」という営業マンさえいます。

結果どのような行動に移るかというと、もっとマクロな視点で物事が言えることはないだろうかと、マーケット全体を示すようなデータを検索等で入手することもあります。もっとミクロな視点に切り替えた時に見えることはないだろうかと、時にはクライアント社内のデータを渡してもらえるようにクライアントに対してお願いをすることもあります。他にも、先駆けて同じような事例を取り扱った経験が自社内にないかということを、何人かにあたりをつけてヒアリングをしたりします。

今目の前のクライアントが置かれている状況を示すデータだけでなく、下記のような視点でクライアントが今置かれている状況を把握しようと精一杯の努力をします。

  • 鳥の目(全体を俯瞰して)
  • 虫の目(多角的に)
  • 魚の目(事例などから潮流などを参考に)

様々な角度から、見つけ出した一つの仮説をベースにクライアントと議論を行い、当事者意識を持って相手側に強く踏み込み、今後の方向性を定めようとするのです。クライアント側とすると、多少の不安があったとしても「この人に賭けてみよう」「ここまでやってくれた人に乗っかって失敗するんだったら本望だ」という気持ちになり、クライアントをチャレンジの土壌に引っ張り出すことに成功するのです。

コンサルティング営業が持ち合わせている「引き出しの数」

情熱と併せ持たなければならない「コンサルティングのスキル」

しかし気持ちだけでどうにかならない部分も当然あります。強い熱意とともに持ち合わせていなければならないのが、クライアントの高度な課題をソリューションしていけるだけの「コンサルティングスキル」です。スキル=能力と言っても様々な意味合いのものが含まれます。

また業界や課題内容によって、先方の巻き込み方なども変わるでしょうし、ビジネスのベースとなる普遍的なスキルはもちろんのこと、業界などに特化した突出した知恵や知識も当然必要な場面も出てくることも想定されるので、「能力としてこれさえあればいい」とは一概に言えません。

スキルに比例する「引き出しの数」

ただ、彼らが確固たるコンサルティング営業の地位を確立している一つの要因として「引き出しの数が桁違い」という点を挙げることができると思います。つまり経験数や場数がそれに該当します。一朝一夕でそのポジションをなかなか築くことができないのも、「引き出しの数がそもそも違う」という点に尽きるでしょう。

引き出しの数に比例する「経験値」

経験値を分解した時に質と量の両面がありますが、彼ら彼女らがこれまで高いモチベーションで仕事をし続けた結果、財産として「量」が、新入社員には到底追いつけないレベルで蓄積されています。10000時間の法則でもありますが、約4〜5年間一つの分野に対して本気で取り組めば相当数の場数を経験することができます。

経験を蓄積すればするほど、彼ら彼女らにとって「初めての経験」に出会う確率が極端に下がります。また彼らもスーパーマンではありませんので失敗した経験もあります。今やそれについても彼らは財産にしていて、どのようなパターンであれば成功する確率が高いのか、過去どのようなケースで失敗したのか、という事例をベースにクライアントと語ることができるというのは極めて営業マンとして強いスキルと言えることができるでしょう。

引き出しの増やし方とは

引き出しの数の増やし方においてはまず何を持っても時間が必要です。一方で短期間で人より積める方法もあります。それは自分の勝ちパターンを作らないことです。営業としては「これをすればクラアインとの課題解決につながる」という自分の中でパターンを見つけることができる時が来ます。営業現場に長くいると非連続な成長を見せる人はだいたいそういうコツのようなものを掴んだ時です。

しかし、勝ちパターンを持ってしまうと逆にそのパターンに当てはめるという思考に陥りがちです。まだクライアント課題解決の勝ちパターンであれば救いはありますが、「売れる法則」のようなものを持ってしまうとなかなかそれから脱することは難しくなります。

引き出しの数を増やすことと営業マンのミッションのバランス

引き出しの数を増やしたいのであれば、勝ちパターンを捨てろとまでは言いませんが、それに固執することなくクライアントと共に様々な数を経験しないと、引き出しの数は増えません。このへんは目先の売上目標の部分との兼ね合いも発生しますが、自分の売上が達成することはクライアントには一切関係ないことです。

自分の目標の達成のためにコンサルティングの内容を多少歪めたり、本位ではないがクライアントに無駄な投資をせがんだりということを自分で理解しながらやる部分も発生します。数字を追う営業ですので当然です。そうした葛藤の部分も営業として成長する上で必要なステップですし、営業としてのある種の「成長痛」に当てはまる部分です。「あらゆる経験をしていく」ということと「自分のミッションコンプリート」と「クライアントの課題解決」が同義になることも相反する時も、バランスを取って折り合いをつける一方で、葛藤をする。それが成長です。それがコンサルティング営業という仕事です。

まとめると、コンサルティング営業は成果を高めるうえで欠かせない視点です。要点を振り返り、自分の現場に合わせて実践していきましょう。

当事者意識を、精神論で終わらせない──「立場を演じて」考える

圧倒的な当事者意識が大事、というのはそのとおりです。ただ、「我が事として考えろ」と言われても、気合の話に聞こえて、どう鍛えればいいのか分かりません。当事者意識は、実は精神論ではなく、思考の手続きに落とせます。

その手続きとは、相手の立場を具体的に演じて考えることです。単に「相手の気持ちになる」のではなく、「自分がこの会社の社長だったら、この状況で何を最優先にするか」「自分が現場の担当者だったら、上司に何と説明したいか」と、相手の役職や利害に自分を置き換えて、そこから景色を見ます。感情移入ではなく、立場のシミュレーションです。この記事で挙げられていた「鳥の目・虫の目・魚の目」も、同じ発想の道具です。全体を俯瞰する目、細部を多角的に見る目、時間の流れを読む目――視点を意識的に切り替えることで、目の前のデータだけでは見えないものを引き出します。当事者意識の正体は、「相手のことを強く思う心」というより、「相手の立場に自分を置いて、複数の視点から状況を見直す習慣」です。心の持ちようだと思うと鍛えようがありませんが、思考の手続きだと捉えれば、意識して回すことができます。

※著者の体験

新卒2年目、大手の人材情報系企業で式場やホテルへの飛び込み・提案営業をしていた頃の話です。

担当していたのは従業員50人規模・創業30年ほどの地場のブライダル企業(仮にA社)でした。最初に私が手元に持っていたのは自社媒体の応募データ(月あたり応募◯件、書類通過率◯%)だけで、そこから言える打ち手は「掲載時期をずらす」「打ち出しを変える」の2〜3個で頭打ちでした。

データがこれだけだから仕方ない、と一度は思いかけたのですが、自分がA社の人事部長だったら、この程度の材料で採用の意思決定はしたくないはずだと考え直しました。
そこでA社にお願いして、社内の定着データ(入社1年の定着率25%、退職8名/年)を出してもらったところ、応募数の多い媒体と定着率がむしろ逆相関していることが見えてきました。

目の前の相関を鵜呑みにせず、あえてクライアント側の一次データに踏み込んだことで、議論が「応募を増やす提案」から「定着まで設計する提案」に変わりました。当事者意識というのは気合ではなく、この「相手の立場に立って手元のデータを疑い、足りない材料を取りに行く」という手続きの積み重ねなのだと、この現場で体で覚えました。

引き出しは、自分の経験だけで増やさない

引き出しの数がものを言う、そしてそれには時間がかかる――この指摘は正しく、だからこそ新人には残酷にも聞こえます。四、五年かけて場数を踏まないと一人前になれないなら、若手はどうすればいいのでしょうか。ここに補助線を引くなら、「引き出しは、自分が経験しなくても増やせる」という視点です。

他人の引き出しを借りるのです。先輩の商談に同行し、その判断の裏で何を考えていたかを後で聞きます。社内に眠る成功事例や失敗事例を掘り起こし、「なぜうまくいったか/いかなかったか」を言語化して、共有できる形にします。異業種の事例を意識してストックしておきます。そして何より効くのが、一件の商談を、そのまま一件で終わらせないことです。商談のあとに「何が効いたか、何を外したか、次はどうするか」を五分でも振り返る習慣があれば、一件の経験から十件分の学びを引き出せます。同じ場数を踏んでも、振り返る人と踏みっぱなしの人とでは、数年後の引き出しの数が桁違いになります。時間をかけて量を積むのは大前提として、その量から学びを抽出する効率を上げます。ここに、経験の少なさを補う余地があります。

※著者の体験

引き出しは自分の経験だけで増やさない、というのは本当にそのとおりで、私が20代から続けているのは「一件の商談を、勝っても負けても一行で残す」という地味な習慣です。

当時は大手企業担当として月間40件ほどの商談をこなしていましたが、商談の直後にノートへ「何が効いたか・何を外したか・次はどうするか」を5分だけ書き殴っていました。1件が10件分の学びになる、という感覚は、あとから振り返ると本当でした。

独立後に営業組織改善のコンサルとして20社以上を横断で見たときも、事業企画で500億円規模の三か年計画を組んだときも、効いたのは新しい知識より、この一行メモを10年分ためた「失敗と成功のパターン集」でした。

「引き出しには時間がかかる」という話を少しでも前倒しする方法があるとすれば、それは場数そのものではなく、一件あたりから抜き出す学びの歩留まりを上げることだと思っています。踏みっぱなしの人と毎回一行残す人とでは、数年後の引き出しの数が桁違いになる——これは精神論ではなく、私自身が複利で体験したことです。

勝ちパターンは、持ちながら「捨てられる」ようにする

引き出しを増やすうえで、勝ちパターンに固執するな、という指摘は鋭いところを突いています。ただ、勝ちパターンを一切持つな、というのも現実的ではありません。型がなければ、毎回ゼロから考えることになり、そもそも仕事が回りません。要は、型を持ちつつ、縛られない状態をどう作るかです。

鍵は、勝ちパターンを「正解」ではなく「仮説」として扱うことです。「この課題には、たぶんこの型が効く」と当たりをつけて使うのはよいのです。ただし、使いながら毎回一度だけ、「この客に、本当にこの型が最適か」と自分に問います。型を出発点にはするが、終着点にはしません。厄介なのは、経験を積んだ人ほど、過去の成功が強い引力を持つことです。うまくいった型を無意識に再生産し、目の前の相手の固有の事情が見えなくなります。ベテランの落とし穴は、引き出しが少ないことではなく、増えた引き出しの中の「お気に入り」ばかりを開けるようになることです。だからこそ、意識的に型を疑い、更新し続けます。勝ちパターンを捨てるとは、型を持たないことではなく、いつでも捨てられる手つきで型を握っておくことです。この身のこなしがある人だけが、経験を重ねながら、なお引き出しを増やし続けられます。

そもそも、思考とスキルの到達点は「葛藤の消滅」なのか

ここまで、当事者意識の思考法、経験の借り方、型の捨て方を見てきました。最後に、コンサルティング営業の思考とスキルが、最終的にどこへ向かうのかを考えてみたいと思います。

私たちはつい、思考とスキルを磨けば、いつか営業は楽になり、迷いなく仕事ができるようになる、と考えます。しかし、この記事の末尾で触れられていた「葛藤」という言葉が、実はこの仕事の核心を突いています。当事者意識を突き詰めるほど、「このクライアントにとっての本当の最善」がくっきり見えてきます。ところが営業は、同時に自社の売上も背負っています。この二つは、しばしば正面から衝突します。クライアントにとって最善の一手が、自社がいちばん儲からない一手だった――そんな場面に、当事者意識が強い人ほど、頻繁に出くわします。多くの議論は、この矛盾を「バランスを取りましょう」と穏当に片づけます。けれど本当の問いは、バランスの取り方ではなく、「その矛盾の中に、逃げずに居続けられるか」です。

ここに、逆説があります。思考とスキルが伸び、引き出しが増えるほど、この葛藤は減るどころか、むしろ増えていくのです。未熟なうちは、そもそも「別の、自社が儲からない最適解」が見えていないから、葛藤も生まれません。見えないものには、悩みようがありません。しかし当事者意識と経験が深まり、クライアントの立場からの最善が見えるようになるほど、自分の数字との板挟みは鋭くなります。つまり、成長すればするほど楽になるのではなく、むしろ悩みが深くなります。逆に言えば、ある日この葛藤をまったく感じなくなったとしたら、それはスキルが完成したのではなく、当事者意識が擦り切れて、クライアントの側から考えることをやめてしまったサインなのかもしれません。

だとすれば、コンサルティング営業の思考とスキルの到達点は、葛藤を消し去ることではありません。葛藤を抱えたまま、それを毎回の仕事の燃料に変えられるようになることです。クライアントの最善と自分の数字のあいだで悩み続けること自体が、この仕事の本体であり、成長し続けている証でもあります。当事者意識とは、心地よく相手に寄り添うことではなく、相手の利益と自分の立場がぶつかる、いちばん居心地の悪い場所に自ら立ち続けることなのだと思います。思考とスキルは、その葛藤から逃げるために磨くのではなく、その葛藤に耐え、向き合い続けるために磨くもの――そう捉えたとき、コンサルティング営業という仕事の輪郭が、少し違って見えてきます。

※著者の体験

思考とスキルの到達点が「葛藤の消滅」ではない、という話は身につまされます。私が一番この葛藤を鋭く感じたのは、転職エージェントとして約5年、3,000名ほどの面談をしていた頃でした。

ある営業職の方(仮にBさん)に、自社が扱う求人よりも、正直に言えば他社経由や直接応募で受けたほうがBさんのキャリアには合う、と気づいてしまった場面があります。自社の売上だけを見れば、自社求人を勧めるのが正解です。でも当事者意識を突き詰めるほど「自分がBさんだったらどちらを選んでほしいか」が痛いほど見えてしまう。

結局そのときは正直に伝えました。目先の1件の成約は消えましたが、その方は数年後に別のご相談で戻ってきてくださいました。

広告営業の側でも同じで、「平均応募数はこれくらい・今月申し込むとお得・今が動くタイミング」という自社都合の3点セットだけの提案は、50万円の案件でも1,000万円の案件でも顧客に見透かされます。同じ中身でも「コンサルとして受ける」のと「営業として受ける」のとでは価値が変わる——顧客の最善と自分の数字がぶつかる、この一番居心地の悪い場所に立ち続けることこそ、この仕事の本体なのだと、今は思っています。

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筆者:店長

営業と、競馬と、しゃべる植物。あっAIも。つい、いろいろ作ってしまう人です。

→ 店長の正体(詳しいプロフィール)

店長

Xアカウント:@nishi_sales_ai 新卒で大手IT企業に入社し、飛び込み営業から深耕営業、大手企業担当まで第一線で経験を積む(表彰歴多数)。その後、事業企画・営業企画部門で経営に近い立場から営業組織と数字に向き合い、10年勤続を経て独立。営業組織の改善に特化したコンサルタント企業を立ち上げる。 コンサルタントして数々の現場に入りつつ、自ら営業特化の転職エージェントも運営。近年はAIを活用した営業組織の業務改善・生産性向上プロジェクトに携わる。現場の最前線と経営の両方を見てきた視点から、営業3年目前後がぶつかる壁を越えるための実践知を発信する。

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