納品を通して見る営業の仕事|納期管理と信頼の守り方
一般的な業務サイクルの中で「納品」は極めて重要な意味を持っており、その過程において営業は事前にクライアントと約束した期日に約束した形で納品を行う責任を持っています。これらを疎かにすると、売ったら売りっぱなしの形になってしまい再購入につながらないだけでなく、きちんと約束した期日に約束した形で納品を行えなかった場合、契約違反になる可能性も秘めています。納品に関して営業は積極的に関わるべきです。ひいては納品後のどのような営業のアフタフォローが再購入につながるのかという点について理解が深まれば幸いです。
企業にとって重要な「納品」という側面
営業が担当しているのはクライアントの窓口全般です。基本的は何かしらの形でクライアントと接点を持ち、クライアントに対して商品やサービスを「販売すること」が営業の主の「使命(ミッション)」になります。ただし、特に企業間取引(B to B)においてですが、営業が介在した上で、売ったら売りっぱなしということはあまり多くはありません。
販売した後に、実際にクライアントに購入いただいた商品やサービスを納品しなければなりません。有形のものであれば実際に運搬などを通じてクライアントの元に届けるという業務が発生しますし、無形のサービスであっても、なんらかの形で「納品=クライアントにサービスを使ってもらえる状態にすること」が必ず発生します。
場合によってはオンラインでパソコン上で使える状態になっている、というケースもありますし、指定された日付になんらかの形で一気に役務提供をするという形のものも多くのケースが存在します。無形の商品やサービスの納品の形については、それこそ数え挙げれば無数のパターンが存在しますが、「納品が発生しない」ということは絶対にありません。
なんらかの形で納品するので、その際に営業マンが立ち会ったり場合によっては営業マンが一人で何かを役務提供することが納品に該当するケースもあります。
契約行為の側面
当然ですが、この「納品」は事前にクライアントと約束した形で約束した期日に約束通り納品する義務があります。不良品のような状態であったり、約束した期日を守れないということは、一種の契約違反にあたります。信頼を失うばかりではなく商品代金の回収が見込めないというようなレベルのクレームに発展したり、最悪のケースはクライアント側で納品物や納品期日に明確な売り手側の瑕疵があり、クライアント側で明確な損失が発生している場合は商品代金以上の賠償を請求されるケースもあります。
また企業運営をする以上は売上を立てる際に、何を持って「納品」=売上計上をする基準とするかということを明確に判断できる状態にしておく必要があります。そして企業として定めた「納品の基準」を明確に満たした状態で、クライアントに引き渡すことが求められます。
営業は納品が完了するまで責任を持った行動を
予め納品の形、期日をクライアントと約束してきた営業マンとしてすべきことは当然あります。企業によってはそこは営業の責任としないケースも多々有りますし、それを否定することはありません。しかし何らかの責任に問われなくても営業マンはクライアントに対して売った責任から逃れることはできません。
そして何かしらのトラブルになった時にクライアントの矢面にたつのも営業マンである自分です。必ず自分が約束した通りの形で約束した期日に「商品やサービスが納品された」か、もしくはもっと手前の段階で「納品される手はずが整っているか」などを社内や仕入れ先に必ず確認する営業マンの方が事故をする確率は低いでしょうし、そういった細部にこだわれる営業マンは、営業としてのクライアントフォローの丁寧さなどの点につながっているはずです。
営業はクライアントに「再購入を促す存在である」という側面
アフターフォローに対するクライアントからの期待
納品を終えた後だったり、継続して商品やサービスを使ってもらっている時点で、クライアントによって商品やサービスに対する満足度というものは異なります。大いに満足しているケースもあるでしょうし、「買うんじゃなかった」と購入したことを後悔していたり、場合によっては元々聞いていたものと違う、ということなどが原因で、大きなクレームに発展することだってあります。
営業マンは、クライアントに対してアフターフォローをすることが前提となっているケースが一般的です。アフターフォロー代金という形で商品購入とは別でお金頂戴しているわけではなくとも、基本的には商品購入後もなんらかの形でクライアントと接点を持っています。逆にクライアント側の立場に立ってみると、「購入後も営業側から一定の接点を持ちかけてくれて、フォローをしてくれる」という期待を込めて発注を行い、代金を支払っています。
その接点の中で「購入を通じてクライアントが感じている満足・不満の部分」を汲み取り、時にはコミュニケーションを通じて、時には何らかの資料を通じて、時にはクライアントの要望に対して、様々な形でアフターフォローを提供していくことも営業の大切な仕事の一つです。
再購入につながる「提案」のポイント
そして、一度販売したものを改めて次の機会に同じクライアントに商品を購入してもらうことが前提のビジネスも大変多いです。特に企業間取引においては「売り切り型」の商品やサービスがないとは言いませんが、何らかの形で再購入を促したり、それに期待することが前提となっているビジネスモデルの方が圧倒的に多いと言っていいでしょう。
そしてその前提にたった時に、「もう一度購入してもらえるかどうか」という部分は、どのようなポイントで左右されるのでしょうか。大別すると、三つあると言えます。
- 一度目の購入で大きな満足も不満足もなかったが他の選択肢がなかったりするのでもう一度購入するケース
- 一度目の購入で非常に商品やサービスもしくは営業マンに対して満足したケース
- 一度目の購入では、それほど高い満足度を得られなかったが、クライアント側において何かしらの気づきがあり、もっとうまくその商品やサービスを活用するイメージがついたケース
1点目は営業個人のことではなく、商品の特性やポジショニングにおける論点になりますので、営業個人の力量による再購入というケースにはあまり該当しません。
2点目においては、商品の満足度は高くなくとも営業マンのフォローや熱意に好意を抱き、再発注するというケースももちろんありますので、これは営業マンによって次回の購入確率が大きく変わる可能性があり、営業マンとしての手腕が評価されるポイントです。
3点目においても、営業関与度が極めて高いポイントです。いわゆるアフターフォローが手厚いこととは少し異なりますが、「今回は期待値に届かなかったが、もう一回買ってみよう」と思わせる部分が再購入につながるケースも多くあります。そこには「何がダメだったのか」ということと、それを踏まえて「次はどうすればよいか」という点を、クライアントときちんと話せる環境を営業自身が用意できるか、という点にかかっています。
またクライアントの期待値に届かないということを察したら、気持ち的にはなかなかクライアント先に訪問することを前向きに捉えることができない時もあります。しかし、逃げてはダメです。
気持ち的な部分も乗り越えて、これらを再販売に繋げていくこと自体が「提案」だったり「提案できる環境を用意すること」に該当し、これもまた営業に課せられた業務のうち大きなウェイトを占める部分です。
納期を守るのは、実は「社内営業」の仕事
納品を約束どおりに行う責任は営業にある――そのとおりです。ただ、実務で納期を守れるかどうかは、営業一人の頑張りではほとんど決まりません。納品には、制作、物流、開発、生産といった社内の他部署が必ず絡むからです。営業が客先で交わした約束を、実際に形にするのは自分ではない誰かです。だから納期を守る力の正体は、社外の交渉力ではなく、社内を動かす力にあります。
できる営業は、客先で納期を握る前に、社内の余力を確認します。「この量を、この日までに」と安請け合いする前に、制作や生産の現場が本当に回せるのかを先に押さえます。無理な納期を客先で約束してから社内に泣きつくと、現場は疲弊し、事故の確率が跳ね上がります。順番が逆なのです。そして日頃から、社内の関係部署と良い関係を作っておくことも、立派な営業活動です。いざというとき「あなたの案件なら優先しよう」と思ってもらえるかどうかは、普段の頼み方や感謝の伝え方で決まります。客先で頭を下げるのと同じ丁寧さで、社内にも向き合います。納期の話になると本質は社内にある、とよく言われるのは、このためです。外で約束を作る人と、中で約束を守らせる人が同じ営業である以上、社内営業は納品責任の中核なのです。
「納品完了」の基準を、着手の前に握る
納品をめぐるトラブルの多くは、品質そのものより「これで完了と言えるのか」という認識のズレから生まれます。営業側は「納めた」と思っているのに、客先は「まだ終わっていない」と考えています。この食い違いは、後から埋めようとすると必ずもめます。だから、完了の基準は、着手の前に握っておきます。
有形の商品なら、納品完了の線は比較的はっきりしています。厄介なのは無形のサービスです。「使える状態にする」といっても、どこまでできたら完了なのか、その線は放っておくと曖昧なままになります。設定が済めば完了なのか、相手が使いこなせて初めて完了なのか、一定の成果が出るまで見るのか――ここを最初に言葉にして、できれば書面で合意しておきます。検収の条件、完了の定義、確認の手順を先に決めておけば、「言った・言わない」の水掛け論を避けられます。ここまで見てきたとおり、企業として「何をもって納品とするか」を明確にする必要があるのは、社内の売上計上のためだけではありません。客先との認識をそろえ、無用な争いを防ぐためでもあります。完了の基準を先に握ることは、自分と相手の双方を守る、地味だが決定的な一手です。
事故は起きる。初動で、その後の信頼が決まる
どれだけ気をつけても、納期の遅延や品質の不良は、いつか必ず起きます。問題は、事故をゼロにすることではなく――それは不可能です――事故が起きたときにどう動くかです。ここでの初動が、失った信頼を取り戻せるか、決定的に壊すかを分けます。
やってはいけないのは、隠すことと、報告を遅らせることです。事故の兆候をつかんだら、まだ確定していなくても、早い段階で客先に一報を入れます。悪い情報ほど、早く、自分の口から伝えます。相手が別ルートで先に知る、というのが最悪の展開です。そのうえで、原因、復旧の見込み、そして代替案をセットで持っていきます。「遅れます、すみません」だけでなく、「この日までに、この形で挽回します」まで示せると、相手は次の手を打てます。気持ちのうえでは、うまくいっていない客先ほど足が向かないものですが、逃げてはいけません。矢面に立つのは、いつも営業である自分です。逆に言えば、危機のときに逃げずに誠実に動く姿は、順調なときの百の訪問よりも強く相手の記憶に残ります。トラブル対応の丁寧さが、皮肉にも次の受注の入り口になることは、決して珍しくありません。
そもそも営業が売っているのは、「約束が守られること」ではないか
ここまで、社内営業、完了基準、事故対応と、納品の実務を見てきました。最後に、納品という側面から、営業という仕事の正体を見つめ直してみたいと思います。
営業の使命は「売ること」だと、当たり前のように語られます。この記事の前半でも、販売こそが営業の主たるミッションだと述べられていました。けれど、納品という角度から眺めると、少し違う輪郭が浮かんできます。顧客がお金を払っているのは、実は商品そのものだけではありません。「この人が言ったことは、そのとおりに実現される」という予測可能性――言い換えれば、約束が守られることへの信頼に対して、対価を払っているのです。どんなに良い提案でも、約束した日に約束した形で届かなければ、その提案の価値は根こそぎ崩れます。納品とは、営業が販売の場で交わした約束が、本当に守られるのかどうかの、答え合わせの瞬間なのです。だとすれば、納品を軽んじる営業は、自分が売っている本体――信頼そのもの――を軽んじていることになります。
そう考えると、先に挙げた再購入の三つのパターンのうち、最も営業の力が問われるのが三つ目、「一度目は期待に届かなかったが、それでももう一度買ってもらえた」ケースだった意味が、はっきりしてきます。これが示しているのは、逆説的な真実です。再購入を生むのは、一度目に完璧に満足させることよりも、約束と現実のあいだに生じたギャップを、どれだけ誠実に埋め合わせたか、その姿勢のほうだ、ということです。顧客は、うまくいったかどうか以上に、うまくいかなかったときにこの営業がどう振る舞うかを見ています。順風のときには、誰でも良い顔ができます。営業の真価が試されるのは、納品が遅れたとき、品質が期待に届かなかったとき――つまり逆風のときです。
だから納品とは、単なる業務サイクルの一工程ではありません。それは、営業が良い時に築いた信頼を、悪い時に証明する場です。売る瞬間に交わした「大丈夫です、お任せください」という言葉が、本物だったのでしょうか、それとも受注ほしさの口約束だったのでしょうか。その答えが出るのが、納品の現場です。売ることを使命と考える営業は多いですが、売った約束を守り抜くことまでを自分の仕事だと捉えられたとき、その人は単なる売り手から、顧客が長く頼りたいと思う相手へと変わっていくのだと思います。

