営業がクライアントと個人的に仲良くなる時に気をつけておく4つのこと
営業をしているとクライアントと個人的に仲良くなるという体験を多くの人が経験します。そのような時に気をつけておきたいことは大きく4つ存在します。1.引き抜き 2.情報漏洩 3.関係性の認識齟齬 4.男女の仲になる の4点です。これらのどのような点に主に気をつけねばならないかということについて解説しています。
営業がクライアントと個人的に仲良くなる時に気をつけておく4つのこと
営業としてクライアントとの関係性を構築することは極めて重要なことですし、個人的な付き合いができるようになることは営業という仕事の大きな醍醐味や魅力とも言えます。
しかし一方で非常にリスクのあることでもあります。営業としてクライアントと踏み込んだ関係性になるのであれば気をつけておかねばならないこととしてどのようなことがあるのでしょうか?特に気をつけたいのは下記4点になります。
- 引き抜きされる
- 情報漏洩
- 関係性の認識齟齬
- 男女の仲になる
引き抜きされる
クライアントが経営者や上層部の場合、あなたを引き抜く目的で仲良くなろうとしている可能性があります。これは必ずしも悪いことではありませんし、光栄なことでもあります。しかしながら、引き抜きだけが目的の場合、それに応えることができない場合、クライアントの期待を裏切ってしまったり、関係性が悪化するリスクも存在します。
最初からそれを警戒する必要は全くありませんが、ある程度それが具体化した話になってきた場合には、自分の意志をはっきりと持つことが大切です。あやふやな態度に終始している場合、応じることができない時に大きな信頼の失墜につながる可能性もあります。
また、自分という個人に魅力を感じてその話をしてくれているのか、それとも今の会社で営業職をしているからこそ声がかかっているのかは見極める必要があります。特に後者の場合は情報やノウハウを持ってくることを期待されて声をかけられている可能性がありますので、引き抜かれたのはいいものの個人に魅力を感じているわけではないので、情報を吸い上げることだけが目的の引き抜きということもあります。
特に相手が外国籍企業の場合は要注意です。日本企業以上になりふり構わず利益追求するような企業も多く存在します。自分の利用価値や賞味期限が終わり次第吐き捨てられることも覚悟しておかねばならないほど、危険なケースがあることは知っておきましょう。
情報漏洩
気をつけたいことの二点目が情報漏洩です。例えば、自分自身が業務を知り得た秘密を家族や故郷の友人に軽く話したような経験はないでしょうか?これらはそれほど責められることでないと思っているのは大きな間違いです。本当は誰にも話してはいけないことですが、ついつい心の距離感と「業務には影響しないであろう」という認識がそうさせています。
クライアントと個人的に仲良くなった時に、個人的な付き合いをしていくと、ついつい業務上の秘密を話してしまう人がいます。これらは単に利用されているだけのケースもあれば、本当の友人関係の上で、口外しないという暗黙の了解のケースもあります。しかしそれらを情報を渡す側の自分が事前に判断することは不可能です。
例えば上記の例のように転職をしてしまった後のような場合においても、業務上の秘密を知り得た情報源以外の企業に漏らすことは、個人としての責任を追求される可能性もあります。顧客情報を持ち出すなどはもってのほかです。
関係性の認識齟齬
一番失敗してしまいがちなのが、関係性の認識齟齬です。例えば個人的に仲良くなったと思っているのは自分だけで、先方はあくまでもビジネスの延長で付き合いをしていると認識しているケースです。これにより起こり得ることとして、例えば敬語を使わなくなる、呼び名に敬称がつかないということもありえます。
これらが逆に個人的に仲良くなることを阻害している要因になる場合もあるのは確かです。しかし、相手にとって失礼にあたるかどうかというのは自分では判断がつかないことも多々有ります。よほど注意しないと両者が同じ認識をもっているということは確認しあえないということも多々有ります。
ほかにも、営業としての愚痴をこぼしてしまったり、他社のクライアントの悪口などを漏らしてしまったりということも大きなリスクです。逆にメリットは何もないので、どれだけ仲良くなったとしても控えるべきでしょう。
男女の仲になる
営業とクライアントが男女の仲になることもあります。例えばお付き合いをして結婚までしてしまえば、祝福されるのですが、そこに至るまでの間に、これが両社に漏れるとただごとではありません。
クライアントが男性で営業が女性の場合だと、クライアントとしての立場を利用して営業をやりこめたというような話に先方社内でなってしまう可能性もありますし、営業サイドだと悪質な噂となり「枕営業」というような言われ方をする可能性もあります。逆の立場ですと、クライアント側が営業に取り込まれたとクレームに発展する恐れもあります。何にせよ両社にとって守られるべき情報が守られない可能性がある非常にリスクの高い状態になります。
今自分が飛び込もうとしているのがそれらのリスクを引き受けてでも開きたい扉であるかどうかということは冷静に判断する必要があります。これらは友人関係の延長での勢いなどとは比較にならないほどのリスクを潜ませているということを強く認識しておいた方がよいでしょう。
仕事が先、私的な仲は後 ― 順番を間違えない
クライアントと親しくなること自体は、素晴らしいことです。ただ、その親しさが、どこから生まれたものかは、忘れないでいたい。健全な親しさは、たいてい、きちんとした仕事の積み重ねの上に、後から育ってきます。約束を守り、期待に応え、この人となら気持ちよく組める、と思ってもらえたからこそ、個人的な付き合いへと発展する。順番が、仕事が先で、親しさが後、なのです。ところが、この順番が逆になると、危うくなります。まだ仕事で認められてもいないのに、仲良くなること自体を目的にしてしまうと、中身のない馴れ合いになりかねない。親しさで仕事の甘さを埋めようとする関係は、もろいものです。相手が本当に見ているのは、こちらの仕事ぶりであって、付き合いの良さではありません。まず、仕事で認められること。親しさは、その確かな手応えの上に、自然と積み重なっていくものだと心得ておくことです。
会社を「隠さない」 ― 重い話ほど社内と共有する
クライアントと個人的に深くなると、そのやり取りが、だんだん会社を通さない、自分と相手だけの閉じたものになりがちです。ここに、落とし穴があります。とくに、相手から込み入った相談を持ちかけられたり、自分を高く買って別の話を切り出されたりしたとき、それを自分ひとりの胸にしまい込むのは、危険です。個人の関係で受け止めたつもりが、いつのまにか、会社対会社の話に発展していることもある。だからこそ、大事な話ほど、抱え込まずに、上司や社内と共有しておくことです。「こういう相談を受けているのですが」と、早めに開いておけば、判断を一人で背負わずに済みますし、後から「なぜ黙っていた」と問われることもありません。会社を通さない秘密のやり取りは、一見、特別で心地よく感じられますが、こじれたときに、あなたを守ってくれるものが何もなくなります。親しさは個人で育てても、仕事の重い話は、必ず会社の見える場所に置いておく。この使い分けが、身を守ります。
仲の良さで仕事を緩めない ― なれ合いと遠慮を持ち込まない
親しくなると、いつのまにか、仕事の手綱が緩みがちになります。少しくらい納期に遅れても、この人なら許してくれるだろう。細かい確認は、仲がいいから省いてもいいだろう。この油断が、積み重なると、大切な関係を静かに損なっていきます。相手は、親しさとは別のところで、こちらの仕事ぶりを、しっかり見ています。むしろ、親しい相手にこそ、いい加減な仕事は、裏切りとして深く刺さる。だからこそ、どれだけ仲良くなっても、仕事の質だけは、初対面のときと同じ緊張感で保ち続けることです。加えて、親しさは、言うべきことを言えなくする方向にも働きます。嫌われたくなくて、相手にとって耳の痛い指摘を、飲み込んでしまう。しかし、本当に相手のためを思うなら、親しいからこそ、言いにくいことも率直に伝えられる間柄でありたい。仲の良さを、なれ合いや遠慮に変えず、質の高い仕事と、正直な物言いで裏打ちする。それでこそ、親しさは長持ちします。
会社としての関係に育てる ― 属人的な仲良しで終わらせない
個人的に築いた深い関係には、一つ、見落としがちな弱点があります。それが、あなた個人にしか、ひもづいていないことです。担当があなたである間はうまく回っていても、あなたが異動したり、転職したりした途端に、その取引ごと消えてしまう。相手が付き合っていたのは会社ではなく、あなただった、というわけです。これは、会社にとっても、実はあなた自身にとっても、もったいない話です。だからこそ、親しくなった関係は、あなた一人に閉じたままにするのではなく、少しずつ、会社と会社のつながりへと広げていくことを意識したい。後任や同僚を、折を見て引き合わせておく。自分がいなくても回るように、関係を開いておく。一見、自分の存在価値を薄めるようですが、そうではありません。個人の魅力で始まった関係を、組織の財産にまで育てられる人こそ、本当に力のある営業です。属人的な仲良しで終わらせず、続いていく関係へと編み直していくことです。
そもそも営業とクライアントの親しさとは、公私という別のルールで動く二つの関係が、同じ二人の間で重なることである
ここまで、クライアントと親しくなるときの心得を見てきましたが、最後に、そもそも営業とクライアントが「個人的に仲良くなる」とは、どういう状態なのかを、少し掘り下げて考えてみたいと思います。仲良くなることには、なぜこれほど注意書きがついて回るのか。その理由は、この関係が、実は二重になっていることにあります。
考えてみると、仕事の関係と、友人の関係とでは、そもそも従っているルールが違います。仕事の関係には、守るべき秘密があり、立場があり、果たすべき約束があります。一方、友人の関係が心地よいのは、そうしたものから自由で、腹を割って話せ、貸し借りをいちいち勘定しないからです。営業とクライアントが個人的に親しくなるというのは、この、本来まったく別のルールで動く二つの関係が、同じ二人の人間の間に、同時に存在し始める、ということなのです。厄介ごとは、たいてい、この二つのルールが衝突するところで起こります。
たとえば、友人どうしなら、隠しごとをせず何でも打ち明けるのが自然です。けれど、その感覚のまま、仕事の秘密まで話してしまえば、仕事のルールを破ることになる。友人どうしなら、堅苦しい敬語も遠慮もいりません。けれど、それを持ち込んで、仕事の場での礼儀まで崩せば、相手の受け取り方との食い違いが生まれる。この話が挙げてきた注意点は、突き詰めれば、すべて同じ一つの誤りから来ています。それは、片方の関係のルールを、もう片方の世界にまで、そのまま持ち込んでしまうことです。
だとすれば、親しくなること自体を、恐れる必要はありません。恐れるべきは、二つの関係が重なっていることを忘れ、どちらか一方のルールで、すべてを動かそうとしてしまうことです。だから、どれだけ打ち解けても、「自分はこの人と、二つの関係を同時に生きている」という感覚だけは、心の隅に置いておく。今この瞬間は、友人として接しているのか、それとも仕事の相手として向き合っているのか。その切り替えを、意識の底で保てる人だけが、親しさを、危うさに転ばせずに、長く続く財産へと育てていけます。営業にとっての親しさとは、どちらか一方に振り切ることではなく、この二つの関係を、器用に持ち重ねていく技なのだと思います。
終わりに
クライアントと仲良くなることや、取引関係を超越した人間関係を構築できることは営業という職種における大きなやりがいや魅力の一つに間違いありません。しかしやり方や関係性の構築の仕方を間違えると、自分自身のキャリアや営業としてのアカウントに傷をつけてしまう可能性すらあります。
あくまでも営業とクライアントとしてお付き合いをしているという前提があってこその関係であるということを決して自分自身忘れないようにすべきと言えるでしょう。
営業を意識するだけで、結果は変わります。お伝えした内容を、次の商談や日々の行動に落とし込んでいきましょう。

