営業の深夜残業|割増賃金と安全対策、体験エピソード
深夜残業はもちろん営業にとってはなるべく避けて通りたいもの。終電がなくなった後にオフィスで一人で仕事なんて経験、営業マンなら誰しも一回や二回はあるのではないでしょうか?そんな深夜残業時に体験したエピソードをご紹介します。
深夜残業中に起きた出来事
20代 物流関係
毎年、年度末は繁忙期なのですが、その日は色々なことが重なって朝の時点から「今日はもう帰れやしないな」と思っていました。案の定22時を過ぎても全く終わるメドが立たずに、コンビニで食事を購入して、臨戦態勢を整えておりました。この時点で会社には3名ほどの同志が。一名また一名と帰って行き、終電が終わった後に残されたのは自分一人。
眠気と戦いながら仕事をしていると、夜中2時頃にセキュリティロックが外れる音が鳴り響き、ビクっとそっちを見ると、なんと憧れの先輩が!飲み会帰りに終電が無くなったけど少しだけ仕事が残っていたことを思い出して、それだけ片付けて帰ろうと思ったとのこと。本当は少し席が離れているのですが、酔っ払っているのもあって「せっかくだしねぇ」と、僕の隣の机に座り仕事を始めました。結局30分ぐらい隣で仕事をしていたのですが、ドキドキして全く仕事が手につかず。先輩の仕事が先に終わり、少し雑談をして先輩は先に帰ったのですが、とてもドキドキした深夜残業でした。
20代 木材メーカー
深夜残業ではないのですが、接待が遅くなり、普段あまり乗らないタクシーで帰宅。タクシーの運転手さんがやたらと話しかけてくる人だったのですが、「お客さんを乗せる前に乗車したお客さんがね、若くて綺麗な女性でね。料金が一万円超えていたのだけど、降りる時になってお金がないって言い出してね、身体で払わせてくれって言うんだよ。」って話を始めた。それまで少し眠かったが、眠気は吹き飛び、すっかり話の続きが気になってしまった。身を乗り出して「それでそれで」となってしまっていたのですが、「ふざけんじゃねぇって警察に突き出してやったよ」というオチでした。少し期待していた流れと違ったのですが「まぁよく考えたらそれはそうですよね」と相槌を打ってその話は終わったのですが、降りる直前にその運転手さんが「カメラがなけりゃなぁ」とボヤいたのを僕は聞き逃していなかった。
40代 広告
広告代理店にとって避けて通ることのできないのが深夜残業。最近はそうでもないが、昔は22時前に帰れる日なんて月に一回あるかどうかだった。その日も当たり前のように同僚何人かで深夜残業をしていたところ、24時過ぎにオフィスに鳴り響く電話。もうすでに帰った先輩が担当している超大手のお客様からで、内容は「Webで出している広告の問い合わせ先のメールアドレスが間違っている」とのこと。こんな時間に気づかないで欲しいと思いつつも、広告において連絡先の誤りは致命傷。すぐに先輩に連絡を取りたいが、時間はすでに24時。
先方はフルフルにお怒りの状態で、何時になっていいからすぐに直せとのこと。なんとなく嫌な予感がしてみたもののついつい取ってしまった電話のため、対応しないわけにいかず、お客様のご連絡先をお聞きして、媒体元メディアと先輩に交互に電話してみるものの全くの不通。当然お客様も先輩に携帯に電話しているのだろうけど、寝てたら気づかないものは気づかない。
最終手段で社内の同僚に連絡を取りまくり、先輩の住所を年賀状より入手。タクシーを飛ばして先輩の自宅に到着したのが午前2時過ぎ。しかしマンションのオートロックの時点で先輩はつながらず。その間一時間に一回、お客様に状況ご報告のご連絡。結局朝の5時にお客様から朝イチで対応するようにと言われ解放。その時に自分の名前を聞かれ、最後には「自分の仕事でもないのによくそこまで対応してくれたね。ありがとう。」というお言葉をいただいて、少し清々しい気分になった。翌朝(と言ってもそのまま会社に戻って仮眠をとっただけ)会社ではそんなに大事として捉えられず、普通に媒体元メディアに連絡が行き、緊急で修正が行われて無事?にきちんとしたメールアドレスが掲載されました。後日談としてその超大手のお客様から「あの日は本当にご苦労様でした」とお食事をお誘いいただき、ご馳走になったのですが、その席で先輩は会食が終わるまでの3時間ずっと部屋の隅で正座させられており、生涯で一番味を感じなかった会食でした。
40代 オフィス機器
お客様との会食が長引き、解放されたのが深夜24時を過ぎておりました。アポの最中に電話が何度かなっていたので確認してみると、部下からので電話が。折り返してみると「お客様に納品する予定だった新入社員向けのデスクとチェア30セットが発注されていなくて明日の納品に間に合わない」と泣きそうな声で報告するメンバー。まだ会社にいるということなので、「勘弁してくれよ・・・」という思いで帰社。会社のドアを開けるなり鳴り響くクラッカーの音。なんと部署のメンバーが全員私の40歳の誕生日をサプライズで祝いたいがために用意したドッキリと判明。そこには単身赴任中でなかなか会えない妻の姿も。さらにさらにメンバーが用意してくれた映像には先ほどまで一緒に食事をしていたお客様の映像まで。なんと24時ギリギリまで会食を引っ張ってもらうようにお客様まで巻き込んで快く引き受けてくれた模様。心の底から嬉しかったのですが、何よりも嬉しかったのは、未発注の大クレームを覚悟していたのにそれももちろんウソだったことです。
20代 飲食関係
深夜には幽霊が出ると噂のオフィスで一人きりの深夜残業。本当に怖がりな自分は仕事どころではなかったのですが、どうしてもその日のうちに終わらさなければならない仕事があり、上司の許可を得て深夜残業に突入しました。オフィスフロアの電気を全部つけて物音が一切気にならないように、イヤホンをパソコンに繋いで爆音で音楽を聴きながら仕事をしていました。仕事にいい感じで没頭していたところ、突然後ろから誰かに肩を叩かれ、あまりに驚き、声にならない声で奇声を上げて椅子から転落。椅子から落ちて転げるように外に向かって走り出そうと後ろを見てみるとビルの警備員のおじさんでした。完全に仕事に没頭して爆音で物音を遮断していたので全く気づかず。巡回中に自分を見つけ「他のところの電気を消すよ」と一声かけたらしいのですが、全く自分が気づかないため肩を叩いたのことでした。本当に怖かった。誰も悪くないです。
20代 商社
大好きだった先輩と二人で金曜日の夜から一緒に深夜残業したことが忘れられない思い出です。本当はもう仕事は終わっていたのですが、少しでも一緒にいたくて、別にその日しなくてもいい仕事をしている振りをして先輩が終わるを待っていました。しかし前日も終電ギリギリで今朝6時出社だった私。うとうとは少し自分でも感じていたのですが、机に突っ伏して寝てしまい、起きたのは約一時間後。机には「先に帰るわ。お疲れ」の先輩のメモ。起こせよ。カーディガンをかけてくれていたその不要な優しさが痛かったです。
まとめると、深夜残業は成果を高めるうえで欠かせない視点です。要点を振り返り、自分の現場に合わせて実践していきましょう。
そもそも「深夜残業」は法律でどう扱われるのか——深夜割増と残業代の基本
こうしたエピソードを笑って読める一方で、実際に深夜残業に直面する営業マンが押さえておきたいのが、お金の話です。ここを知らないと、当然もらえるはずの手当を取りこぼしていても気づけません。
労働基準法では、午後10時から翌朝5時までの労働を「深夜労働」と呼び、通常の賃金に25%以上の割増をつけることが義務づけられています。ポイントは、これが残業代とは別枠だということです。1日8時間を超える時間外労働には25%以上の割増がつきますが、その時間帯がさらに深夜にかかると、時間外の25%と深夜の25%が重なり、合計50%以上の割増になります。つまり終電後の一人残業は、本来かなり割高な時間なのです。「営業は成果で評価されるから残業代は出ない」と言われることがありますが、深夜割増(22時〜翌5時分)の支払いは会社の義務です。見落とされがちですが、いわゆる管理職(管理監督者)や裁量労働制で時間外の割増が出ない立場であっても、深夜割増だけは原則として発生します。時間外の割増と深夜の割増は、適用されるルールが別だからです。エピソードの数々のように、深夜まで会社に残るのが常態化しているなら、まず自分の雇用形態と給与明細で、深夜手当がきちんと反映されているかを一度確認しておきましょう。
深夜残業はなぜ生まれるのか——営業特有の「客都合」と「属人化」を断つ
エピソードを読むと、深夜残業のきっかけの多くが、自分の段取りの悪さではなく、外からの事情であることに気づきます。会食が長引く、客先からの連絡が夜に来る、担当者にしかわからない案件が夜中に発覚する——営業特有のこの構造を理解すると、減らす手も見えてきます。
一つは「客都合」への線引きです。相手のペースに完全に合わせていると、時間はいくらでも侵食されます。緊急でない連絡は翌営業日に回す前提を、日頃のやり取りのなかでやんわり共有しておくだけでも、夜間対応はかなり減らせます。もう一つが「属人化」の解消です。あるエピソードでは、担当先輩と連絡がつかず、深夜に自宅まで駆けつける羽目になっていました。これは、案件の情報が一人の頭の中にしかなかったために起きた事故です。顧客情報・進行中の案件・緊急連絡先を、チームで共有できる場所に置いておけば、担当者が不在でも誰かが対応でき、真夜中に一人が背負い込む事態を防げます。深夜残業は根性で乗り切るものではなく、こうした段取りで「生まれにくくする」ものだと捉え直すことが、遠回りに見えて確実です。
終電後に一人で残るときの安全と健康——眠気・防犯・緊急時の備え
エピソードにも、セキュリティロックの音にびくつく場面や、警備員に肩を叩かれて椅子から転げ落ちる場面がありました。笑い話になっていますが、深夜に一人でオフィスに残ることには、現実的なリスクが伴います。無事に済ませるための備えを押さえておきましょう。
まず防犯面では、誰が残業しているかを守衛や警備会社が把握できるようにし、施錠状況を確認しておくこと。人けのないフロアで体調を崩したり転倒したりしても、誰も気づかない恐れがあるので、家族や同僚に「今日は遅くなる」と一言伝えておくだけでも安心感が違います。健康面では、眠気を我慢して作業効率を落とすより、15〜20分の仮眠を挟んだほうが結果的に速く終わることが多いものです。カフェインは飲んでから効くまで30分ほどかかるので、仮眠の直前に取ると目覚めと重なって効きます。帰宅の足も先に確保しておきましょう。終電を逃したときのタクシー代や、深夜に一人で歩く帰り道の安全まで含めて考えておくと、「終わったのに帰れない」という二次的な消耗を避けられます。
どうしても深夜になる日の、翌日ダメージを最小にする——食事・仮眠・切り替え
深夜残業をゼロにできない日もあります。そういう日は、その夜をどう乗り切るかより、「翌日にどれだけ引きずらないか」を基準に動くと、消耗の蓄積を抑えられます。
食事は、深夜にがっつり食べると内臓が休めず、翌朝の重さにつながります。遅い時間なら、消化のよいものを軽めに、というのが翌日への負担を減らすコツです。エピソードにあったように、コンビニ食で臨戦態勢を整えるにしても、脂っこいものより温かい汁物やおにぎり程度にしておくほうが、あとがラクです。そして、朝までかかりそうなら、中途半端に起き続けるより、思い切って短時間の仮眠を確保する。会社での仮眠なら、明るさと物音を遮る工夫をして、時間を決めて横になるだけでも、翌日の頭の回り方が変わります。さらに大切なのが、翌日の予定をあらかじめ緩めておくことです。徹夜明けに重要な商談を入れない、午前は事務作業に充てるなど、先回りして負荷を下げておく。深夜残業のダメージは、その夜だけでなく翌日の判断力にまで及ぶので、「翌日を守る」視点を持っておくと、一度の無理が次の無理を呼ぶ悪循環を断てます。
そもそも、語れる「深夜残業エピソード」は、無事に済んだ一握りにすぎない
ここまで、深夜残業の法律上の扱い、生まれる構造とその断ち方、一人で残るときの安全、翌日への備えと、深夜残業に現実的に向き合うための知識を見てきました。最後に、そもそも深夜残業のエピソードが、なぜこうも語り草になるのかを考えてみます。
振り返って気づくのは、思い出として語られる深夜残業が、どれも不思議と温かい色を帯びていることです。憧れの先輩が隣に座った夜、部署ぐるみのサプライズ、黙ってカーディガンをかけてくれた優しさ——過酷なはずの時間が、あとから振り返ると宝物のように語られます。深夜という非日常が、昼間は見えなかった人の素顔をふと照らし出すからでしょう。ここには確かに、深夜残業ならではの得がたい何かがあります。
ただ、ここで一段引いて考えたいことがあります。こうして笑って語れるエピソードになったのは、その夜が「たまたま無事に済んだ」からだ、という点です。同じ深夜残業でも、体を壊した夜、心が折れた夜、家族との時間が二度と戻らなかった夜は、エピソードとして語られることがありません。楽しい思い出だけが人の口に上り、すり減っていった無数の夜は、静かに沈んでいきます。深夜残業の思い出話が心地よく響くのは、いわば生き残った側の記憶だけが選ばれて残るからで、その裏には、語られないまま消えていった時間が、同じ数だけあるはずなのです。
だから、エピソードの温かさと、深夜残業という働き方そのものは、はっきり分けて考える必要があります。先輩の優しさや仲間のサプライズが尊いことと、そもそも終電後に一人でオフィスに残らざるを得ない状況が望ましくないことは、まったく矛盾しません。むしろ、本当に目指すべきなのは、「語れる深夜残業エピソード」が増える職場ではなく、そんなエピソードが生まれずに済む職場のほうです。人の温かさは、深夜のオフィスでなくても伝わります。優しい先輩は、昼間の職場でも優しい。だとすれば、あの夜のドキドキやありがたさは大切にしまっておきつつ、次の世代には同じ夜を強いなくて済むように段取りを整えていく——それが、こうしたエピソードを笑って読める私たちにできる、いちばん誠実な受け取り方なのだと思います。

