営業/各論 全科目75点取る人より数学だけ先生より詳しいレベルの「各論営業最強マン」

全科目75点取る人より数学だけ先生より詳しいレベルの「各論営業最強マン」

僕の憧れについて話をしたい。

大学時代にOB訪問で出会った男性の営業マンである。彼は後に僕の「会社の先輩」になった。それほどいい大学というわけではなかったので、OBに巡り合える確率というのは決して高くなかった。
そこで僕は終業時間を狙いそのビルから出てくる人の中からそれっぽい人に「〇〇(社名)の方ですか?就職活動で御社を志望していてお話しを聞かせてほしいです」とストーカーのようなOB訪問をしていた時に出会った高橋さんという男性である。

高橋さんは、HR系の組織課題のコンサルの部署にいた。
その彼から聞いた内容があまりにもプロとしての仕事すぎて、未だかつて彼を超えるレベルの仕事をしている大人に数えるほどしか出会えていない。
当時僕が学生で仕事の解像度がそれほど高くなかったということを差し引いても、である。後に僕は彼のようなビジネスマンのことを「各論最強マン」として崇拝するようになった。

構造化とか再現性っていうのは、「営業組織」っていう“面”とか「時系列」という“線”における最適解ではあるけれども、「今、この商談」という”点”において超強力かというと、そうではないケースも多々ある。
平均や確率の世界で生まれた人の考え方で「収束する位置」をなるべく高いところにしよう、というたゆまぬ努力のことであると理解している。

「持ち帰ります」というキーワードは場面によっては少しずつ顧客の信頼残高を削っているわけだけど、各論最強マンは比較的そのキーワードから縁遠いような気がする。

二人以上の大人が会話する場面においては、どんなテーマであろうと”情報の非対称性”が発生する。
これはどっちかがそこについて詳しく、どっちかが経験が薄いというだけでなく、顧客と営業の関係性でいうと顧客社内で会話された内容を営業は当然すべて把握しているわけではないし、顧客社内の人間関係などの言語化されにくいテーマを持ってすると尚のことである。

逆に営業は、様々な顧客との会話の中から蓄積されたケースの中から、ケースごとの最適解を持っており、この情報非対称性をお互い埋める中で合意が生まれる。
と、いいのにな。

各論最強マンは顧客との間において、この情報非対称性が極めて大きい。
そしてあらゆるケースにおける最適解だけでなく、顧客業務に恐ろしいほどの解像度を持っている。 僕がこれまでビジネス人生で出会ってきた各論最強営業マンは、単純に経験年数や場数では説明しきれず、畏怖するほどの執着を兼ね備えている人が多かった。

・製造業向け設備機器営業が、ラインを見ているとパートのおばちゃんに「この機械、午後になると音変わりません?」と問いかけるとか。
・不動産仲介が顧客が駅から少し遠いな~と話した後に、「朝は7時20分に出たら7時32分の快速乗れますよ」と回答するとか。
・アカデミックな業界の顧客が出張で地方の学会に出向くと、最前列で営業が座って話を聞いていて、話しかけると有給に自腹で来たとか。

インプットもアウトプットも意味不明なレベルで業界や顧客の情報・知識を蓄え続け顧客を導き続けている。
食肉を扱う食材卸の営業が店舗間の配送効率に留まらず、厨房のレイアウトにまで踏み込んだ提案をしてくるとか。ECプラットフォームの営業がオフライン店舗も持っている顧客のオフライン店舗競合も踏まえた提案もしてくるとか。
知識だけでなく、各論最強営業マンは提案においても変態レベルのスコープで切り込んでくるという特徴を併せ持っているケースが多い。

是とか非ではなく、総論や構造や情報から顧客の課題を紐解くというアプローチしかできない人間にとっては、ただただ憧れの存在である。

そうした各論最強営業マンの商談は、一見すると“?”というところから始まるケースも多い。
経理業務の負荷について話をしていたのに、メインバンクはどこだ?と聞いてきたり。
製造業向けの原材料商社の営業が、唐突にゴールデンウィーク明けの不良率を知りたがったり。
福利厚生サービスの営業が本社圏と地方の有給取得率の差に言及したり。

一瞬”?”となるのだが、話を進めると
銀行と財務部の関係性から経理業務への影響値の差を熟知している。
工場が長期休暇に入ると原材料ロットが変わり初期不良を生みやすいというところに課題設定することもある。
地方拠点は管理職の少なさから管理職が休まないと有給とりづらいという課題解決の方法を知っていることもある。

通常、背景や意図や繋がりを理解しがたい質問については、顧客は「その質問どういう背景ですか?」と懸念を示しがちになることも多いのだが、なぜか各論最強マンにはそれすらも感じさせないほどのプロ感を併せ持っている。
ただただ聞かれたことに答えていればなんとかしてくれそう、という期待を獲得することができるのだ。決して威圧的なのではない。医者と患者の関係に近いと思っている。

僕自身もどうすればそういう存在になれるのかということは色々試行錯誤してきた。これに対しては一歩目というものがあるのではないかと思っている。

僕はよく、営業に質問することがある。特にToc系の事業を展開している顧客を担当する営業に、なのだが。「自分が担当している顧客のうち、自腹で客になったことある会社、何社ある?」

顧客に気に入ってもらうという文脈もあるかもしれないが、それは各論最強マンにとってはコストではなく投資、であり、投資である以上容易に回収可能と考えているのだ。

ToCのビジネスじゃないと通用しないとは別に思わない。お金じゃなくて時間であってもいい。顧客が展開する事業やサービスの受益者になるとか、それに匹敵する情報を収集するために時間を投資するというのは、間違いなく営業としての“目線”や“視座”が変わる行為だと僕は思っている。

当然だけど、こんなことやらされてすることではない。
営業が自分でその視点に気づき、興味を持ち行動に移した上でさらにいくつかの成功体験を生まなければそれは習慣にはならないだろう。
やらされてやったとしても各論最強マンと同じだけの情報を持ち帰ることは期待できないと思う。

僕は、各論最強マンに憧れている。
そして再現できない=人の手で生み出すことはできないとも思っている。
もし社内にそういう人がいるのであれば、今のうちに関係性を築いておくべきだ。人生でそう何人も出会うことのない、極めて価値の高い”一代限りの”超希少種なのだから。

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店長

Xアカウント:@nishi_sales_ai 新卒で大手IT企業に入社し、飛び込み営業から深耕営業、大手企業担当まで第一線で経験を積む(表彰歴多数)。その後、事業企画・営業企画部門で経営に近い立場から営業組織と数字に向き合い、10年勤続を経て独立。営業組織の改善に特化したコンサルタント企業を立ち上げる。 コンサルタントして数々の現場に入りつつ、自ら営業特化の転職エージェントも運営。近年はAIを活用した営業組織の業務改善・生産性向上プロジェクトに携わる。現場の最前線と経営の両方を見てきた視点から、営業3年目前後がぶつかる壁を越えるための実践知を発信する。

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