人間ができることとAIができることそしてAIを使って営業組織に対して僕ができること
AIによる業務の効率化、つまり今までヒトがしていたことをAIが代替する。これは大きなイノベーションである。ただ、それはSaaSやスプレッドシート、GASの延長なんだよな。と僕は思っている。
例えば生産性という指標がある。
“売上/人員数”とか“売上/人件費”とかなわけだけど、僕が圧倒的ライフワークのように携わる営業組織においては、生産性向上のために分母を下げに行くAIは多く目にするけど、分子を上げにいくAIの使い方、という意味でいうと意外とイノベーション前夜という感じがする。
営業の業務を効率的にすることはできてもダイレクトに売上を上げにいくという観点のAIの乗車率は40%ぐらいのイメージ。まだイスはある。ただし、相当の悪路だ。
この僕の感覚が仮に正しいという前提で話を前に進めると、その回答もまた結構シンプルだなと思っていて、“営業の業務”を理解してAIをぶち込むことは外野からの支援で可能だけど、“営業”を理解してAIをぶち込むことはかなり難易度が高いから、だと思っている。
AIを入れていくにあたって「業務」を理解する必要がある。昨今、ほとんどの業務は「情報」を扱っている。特に無形商材をメインとするドメインで仕事してきた自分にとっては、あらゆる業務は“情報の取り扱い”であり、“情報の翻訳“であり、意志決定のための”情報提供“だったと思う。
“めっちゃ売上伸びてる”も“この顧客の課題は?”も“このパワポわかりやすい”も全部情報。
どんな業務も分解するとだいたい同じで、情報として何かが入ってきて、情報として何かが出ていく。 その間に人とファイルと判断がある。
その関係性を構造として捉えることができる人であれば、営業業務を紐解き、AIが入る隙間や自動化、簡略化、置き換えを検討し実装することはそれほど難しくないように思う。そしてこの領域には必ず状況に合わせた選択肢をAIがやたらとフレンドリーに「そこはGAS組み合わせるのが最適やで」などの正解を教えてくれる。
一方で「営業」となると、構造的にそれを分解したり因果で紐づけたり、投下リソースと成果の関係性で紐解いたり、顧客セグメントにヒントを求めることもあれば、翌日には営業スキルという逆サイドからの検討の必要性に迫られたり。おいおい営業スキル高いのに営業成績悪いってなんだよ、みたいなのが日常だった。
「あいつは現場をわかってない」なんて言葉を僕が口にする日が来るとは思っていなかったけど、そういうことだと思う。検討においてこのステップをごまかすと、それっぽいだけで使われない埃りっぽくなった何かが量産されるだけだと思う。ちなみに僕は埃りっぽいソレを量産した側の人間でもあるし、これからも量産するだろう。
営業のスキルや顧客の温度感、受注の条件、様々なテーマを構造化する必要があり、「現場感」のグラデーションがやたらと濃くなるエリアで因果・順序・条件、などのテーマを持って仮説を立てて優しいAIにぶん殴られまくること。そして変数を置けるようになるまで、逃げないこと。
業界トップのプレイヤーと地場の粛々営業マンだったら構造はガラっと変わるだろうし、業界が変わればその変数自体も大きく変わるだろう。セールスフォースの入力は業界問わず普遍的なテーマであるにも関わらず、である。
僕はここの解像度がそこそこ高いと思っている節があるわけだけど、だからこそできたAIの活用、それも恒常的な売上貢献期待ができることの一つが、営業のスキル分解だった。
よく「再現性」の高い営業スタイルととか、ハイプレイヤーとロープレイヤーの違いを明確にするためのハイロー分析とか。このあたりのテーマはAI時代到来前からずっと営業界隈においては、営業組織底上げのための主役級のテーマだったと思う。
お付き合いで発注した、とあるコンサルの話をしよう。
顧客側のカウンターパートを務めた時に「訪問したら顧客からお茶を出されるようになりましょう。これが売れる営業のKPIです」ってコンサルが言いだした。発注単価で割り戻すとスライド一枚18万円だった。
こうした営業組織の再現性の追求や育成、営業の標準化は、AI、ひいては文字起こしが「文字起こしを開始する」ボタン一つで我々にも手が届くようなツールになったことで、より精度高く設計や検証ができるようになった。
うんちコンサルを除けば、「営業スキル」とはなんぞえという考察はAIがなくてもできたのだと思うけど、その検証においては、AI×文字起こしの組み合わせにおいて段違いに精度高く可能になったと思う。
僕は、3つの依存カテゴリと7つのスキルを定義した。
(組織依存)
・各論
・決裁構造の把握
(個人依存)
・関係性構築力
(構造力依存)
・情報整理力
・仮説・論点設計力
・提案設計力
・価値訴求・クロージング力
僕がしたことを先に書いておくと、個人依存の営業スキルは伸ばさないと決めた。再現性が低く「突然変異待ち」とか「いつ抜けるかわからない伝家の宝刀」だと思っている。ここを強化するには「採用」しかない。というのが僕の現時点での解釈。
逆に構造力依存の4つのスキルについて、型を作るところから入った。
なぜなら、構造的な思考性だとか、情報整理力というものは、抽象度が高すぎて営業マンの日常業務に対する接続が極めてフワフワしてしまう。
だから「営業の型をつくる」その型をなぞるうちに、こすり続けて寝ててもそのフレームで商談ストーリーを作れるようになると自然に構造的な思考性が伴うような営業の型を作って浸透させた。
この営業の型とはなんぞえ、ということについては1章では足りないほどのスペースが必要なので、別のターンで死ぬほど語りたい。
組織依存の二点については、文字起こし×AI先生に大活躍いただいた。
文字起こしの中から「営業としての業界各論、顧客に対するノウハウの提供」にかかるキーワードを数十万字の中から抜き出し、それを形式知した。
ただ、この文字起こしからノウハウに該当するもの抽出して、とAIにオーダーしても、自分でやる方が早いやんってなるぐらい、絶望的に粗い。またいつか語りたいテーマだ。
順番が逆になったけど、まず、この三つの依存カテゴリ(組織依存・個人依存・構造力依存)については、そのスキルがどのように育ち・営業の能力として身に着いていくのか、つまり依存しているのか。
組織依存・・組織としてそのノウハウを蓄積して展開されているのか、また教育されているのかに依存
個人依存・・完全に個人としての経験と能力、パーソナリティに依存
構造力依存・・構造力を持てるかどうかに依存
個人依存の中に構造力依存は含まれる。ただ、あえて区分したのは「再現が可能かどうか」という点だ。
例えば構造力というのは組織としての共有知とすることが可能だと思っているし、また個人の構造化思考というのが本人以外からの支援で育成することが可能だと思う。
一方で、完全に個人依存としての関係性構築力というのはほぼ再現性はないと思うし、組織として関係構築力を育てていくというのもかなり難易度は高いのではないかと思う。
できなくはないと思うのだけど、少なくとも僕がそのテーマを預かって営業企画のような立場で営業組織を支援することは今までもなかった。
構造力依存の4つのスキルについては、文字面で一定のイメージを持てる人が多いと思うので、一つ一つを説明はしないんだけど、これらの4つのスキルを強化していく鍵を僕は「フレーム」においた。その先に「型」がある。
あらゆるフレームを使いこなしていくこと。その集合体を「営業の型」とした。もちろんすべてのフレームは、文字起こし×AIの組み合わせを何度も何度もキーボードのMとAがすり減るまで試行錯誤した結果だ。
フレーム・・ほんの一例として、ヒアリングの種類は9つ。
因果(Cause)「それって何が要因なんですか?」
前後(Phase)「それっていつ・どの段階で起きますか?」
包含(Scope)「それは全体的な話ですか?一部だけですか?」
並列(Channel)「他のチャネルでも起きていますか?」
程度(Magnitude)「どのくらいの頻度で?どのくらい困ってますか?」
主体(Who)「現場ですか?経営ですか?」
判断(Basis)「そう思ったのは何があったからですか?」
変化(Delta)「以前と比べて変わった部分ありますか?」「いつからですか?」
対処(Action)「今までに何かやってみましたか?」
ヒアリングの9Q
こうしたフレームに沿った会話をすることは、営業の型にはならない。
しかしながら、こうしたフレームがヒアリングだけでなく、商談の捉え方・商談の運び方・提案書の設計の仕方と連続してくると、営業の志向性が自ずと型枠の中に収束し、やがて型と呼ばれる再現性のあるものになっていく。
営業本人が4つの構造力強化の一環として、実感しながらやっているとは思えない。
しかしながら、「なんでこの顧客に今まで何してきたか聞けなかったの?」と、そういう会話が量産されることで質問する側もされる側も構造化思考の淵に立ち始めていると、僕は新宿のビルで感じることができた。
そして、これの素晴らしいところは、うんちコンサルであってもこのフレームは型を使う側であれば再現可能で、AIがあっても構造思考のないうんちコンサルには型を作る側に回ることはできないという点である。
