パワハラ事例集|判断基準と「指導」との境界の見極め方
【意味】パワハラ事例集!職場でいうと問題になる言葉とは?パワハラと「指導」を分ける線――矛先を人ではなく行動へ、そして"職場"はもう机の上だけではない
パワハラの事例集です。厚生労働省や人事院が公表するパワハラの定義、判断基準もご紹介しています。
パワーハラスメントとは
人事院によれば「パワーハラスメント」に明確な定義は存在せず、「職務上の地位や権限又は職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、人格と尊厳を侵害する言動を行い、精神的・身体的苦痛を与え、あるいは職場環境を悪化させること」を指します。
「職務上の地位や権限又は職場内の優位性」は、上司部下の関係性はもちろん、専門知識の有無や経験なども含みます。また「人格と尊厳を侵害する言動」とは容姿学歴など本人の力で変えることのできない事柄について非難することや、いじめや嫌がらせ、強要、威圧的言動などを言います。
パワーハラスメントの判断基準
パワハラにはセクハラとは違い受け手が不快かどうか以外にもいくつかの条件があります。
- 業務の適正な範囲を超えている
- 業務上適正でも感情的、攻撃的、高圧的に行われるなど社会通念上許容されない
- 周囲の人がハラスメントを見て不快に感じるなど職場環境を乱している
などといったものです。
具体的にパワハラに当たる行為とは
- 暴言(「バカかお前は」「こんなこともできないのか。猿でもできるぞ。」など)
- 執拗な非難(数時間の詰問、何日にもわたる感情的指導など)
- 威圧的な行為(机を叩く、怒鳴るなど)
- 実現不可能無駄な業務の強要(土日出勤の強要など)
- 仕事を与えない(情報を渡さず、役職に見合った業務を与えないなど)
- 仕事以外の事柄の強要(上司より高い家に住むな、昼食を買いに行かせるなど)
- 暴力・傷害(殴る、書類や道具で叩くなど)
- 名誉毀損・侮辱(大勢の前で非難したり、土下座させたりするなど)
- 隔離・仲間外し・無視(特定の人をついたてで仕切る、会議に参加させないなど)
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パワハラ事例集
【パワハラ事例1】「何もするな、殺すぞ」:阪神高速パトロール
2010年に入社した男性は2012年以降2人で巡回していた上司からのパワーハラスメントを受けた。
「(仕事を)何もするな。殺すぞ。」と言われたり、インターハイ出場経験もある空手について「なんちゃって空手」とからかわれた。また「道場に来い。道場やったら殴りやすい。」とさえ言われ、2012年5月自殺した。
2017年9月30日になって初めて労災認定を受けた。
参照元:http://www.asahi.com/articles/ASK9Z2STCK9ZUBQU008.html
【パワハラ事例2】工具で叩かれたヘルメットには大きなヒビ:某建設会社
男性はカンボジアからの技能実習生で2014年7月に東京都立川市の建設会社に入り、上下水道の配管工事を担当していた。複数の日本人上司からの日常的な暴力と、言葉によるハラスメントを受けた。日常的に「バカ、この野郎」と罵られ続け、胸ぐらを掴まれて押し倒されたりヘルメットの上から手や工具で叩かれたこともある。ついに男性はうつ病を発症し、2017年6月7日立川労働基準監督署から労災認定を受けた。現在は母国に帰り療養している。
参照元:http://www.asahi.com/articles/ASK9D5G3CK9DULFA03V.html
【パワハラ事例3】ハローワークで上司からの暴力:静岡労働局
2015年1月の勤務時間中、被害を受けた女性職員と窓口を総括する課長職の男性が他の職員への指導中突然激昂し、女性の背後から左上を拳で3回叩いたりした。男性は日常的に職員たちに対して威圧的な態度を取ることがあった。
女性は国と男性を慰謝料630万円などを求めて提訴した。
参照元:http://www.asahi.com/articles/ASK8B5HNLK8BUTPB01T.html
【パワハラ事例4】「川に飛び込め」ダム管理でのパワハラ:県光都土木事務所
2012年4月から県光都土木事務所で働き始めた男性はダム管理部門でパトロール業務を行なっている。パワハラはおよそ3年前からで上司2人からミスをしたり、指示を仰いだりすると「やる気あるのか。やめろ。」「川に飛び込め」などと罵倒され、1人には日常的に暴力も受けていた。
男性はPTSD(心的外傷後ストレス障害)を訴え別の職場への配置転換を求めている。
参照元:https://mainichi.jp/articles/20170408/ddl/k28/040/473000c
【パワハラ事例5】「正社員にする」出版社約束守らず解雇:青林堂
2003年に退職した男性は青林道に2014年再入社。「試用後に正社員にする」という約束をしたがそれを守らず2015年1月に男性を解雇した。働いていた間も同社幹部が男性を小部屋で2時間詰問するなどのパワハラをしていた。男性はうつ病を発症した。
東京地裁は不当解雇を認めたが男性はさらに慰謝料1831万円の支払いを求め東京地裁に提訴している。
参照元:https://mainichi.jp/articles/20170214/dde/041/040/050000c
【パワハラ事例6】2時間以上にわたって暴言を浴びせ男性は自殺:ヤマト運輸
長野県内にあるヤマト運輸の事業所でのパワハラを原因に男性従業員が自殺した問題。2012年秋以降上司のセンター長から「死ね」などの暴言や暴行を日常的に受けたことを苦にうつ病を発症。2015年1月に自殺した。
遺族が会社と上司に計およそ9500万円の損害賠償を求めて長野地裁に提訴している。
参照元:https://mainichi.jp/articles/20170331/k00/00e/040/271000c
【パワハラ事例7】「もういい加減職を辞していただけないですか」:大分県情報通信部
部下や上司にパワハラ行為をしたとして大分県情報通信部の男性係長が減給10分の1の処分を受けた問題。2015年10月から2016年1月、20代男性職員に対する指導の中で、「バカ」などの暴言、蛍光ペンを机に投げつけるなどの威圧的行為を少なくとも5回行なった。加えてこの20代男性職員に対する指導について、上司の男性職員に指示を仰いだ際具体的な回答が得られなかったことから、「もういい加減職を辞していただけないですか。」などとメールで迫った。
上司の男性が同局に訴えたことから発覚した。
参照元:https://mainichi.jp/articles/20170304/k00/00e/040/275000c
【パワハラ事例8】「こんなもん使いものにならん」:大津市企業局
2014年4月から2015年3月までの間、企業局の男性課長補佐級職員に日頃からパワハラを受け続け、自宅で薬をオーバードーズし死亡した。課長補佐は週に2、3回自分の机の前に呼び出し10分程度、大声で「こんなこともわからへんのか。普通やったらできるぞ」など業務改善に繋がらない叱責を繰り返した。
市は課長補佐を10分の1の減給処分にした。
参照元:https://mainichi.jp/articles/20160526/k00/00e/040/245000c
【パワハラ事例9】「お前の触った物を触ると障害がうつる」:仙台国際ホテル
被害を受けた女性社員は先天的に両足に麻痺があり、専門学校を卒業してから仙台国際ホテルに正社員として採用された。2016年7月からホテル内のフレンチレストランに配属され、12月まで調理場で洋食部門の料理長の男性から、
- 「お前の触ったものを触ると障害がうつる」と暴言を吐かれる
- 「息が合わない」と難癖をつけられ、顔を殴られる
- 調理場で蹴られ転倒
などといったハラスメントを受け続けた。
女性は現在休職中で宮城県警に被害届を提出した。
参照元:http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201709/20170930_13029.html
境界を決めるのは「言葉の強さ」ではなく、「人格に向けたか、行動に向けたか」
事例集を読むと、つい「ここまでひどい人は自分とは無関係だ」と感じてしまいます。けれど、現場の管理職にとって本当に難しいのは、明らかな暴言よりも、「指導」と「パワハラ」の境い目です。厳しく言えば越えてしまうのではと萎縮するか、逆に良かれと思って無自覚に踏み込むか。どちらも起こりがちです。
この境界を分けるのは、実は言葉の強さそのものではありません。叱る矛先を「人」に向けているか、「事実・行動」に向けているかです。「使いものにならない」「こんなこともできないのか」は、相手の人格や能力そのものを否定する言葉で、これは指導ではありません。一方、同じ場面でも「この見積もり、ここの数字が前回と食い違っています。今日中に直してください」と、具体的な事実と次の行動に向ければ、それは正当な指導です。厳しさを捨てる必要はありません。矛先を、人から行動へ動かせばよいのです。あわせて気をつけたいのが、手段です。内容が正しくても、大勢の前で、長時間、繰り返し責めれば、やり方のほうで一線を越えます。叱るなら一対一で、短く、事実に絞ることです。これだけで、同じ中身でも受け取られ方はまるで変わります。
「指導のつもりだった」は通用しない――"職場"はもう机の上だけではない
もう一つ知っておきたいのが、判断の物差しです。二〇二〇年に施行されたパワハラ防止法によって、会社には防止のための措置が義務づけられました。そしてパワハラかどうかは、行為者の「指導のつもりだった」という主観では決まりません。優越的な関係を背景にしているか、業務上必要な範囲を超えていないか、就業環境を害したか、という三つの要素を、平均的な働き手の目線で見て判断します。
ここで見落とされがちなのが、対象となる「職場」は、物理的なオフィスの中だけではないという点です。業務との関連が強ければ、飲み会の席や出張先はもちろん、オンライン会議やチャットのやり取りも「職場」とみなされます。
在宅勤務の相手を深夜までチャットで問い詰める、全員が見ているチャンネルで一人を責める、といった行為も対象になり得ます。さらに、要件には「周囲の就業環境」も含まれます。叱られている本人がその場で黙っていても、それを見ている同僚が萎縮するような叱責は、問題として扱われます。だからこそ、気づいた人がその場面を記録し、声を上げられる空気をつくっておくことが、めぐりめぐって組織と自分を守ることにつながります。

