やろうぜ。年間提案。黒川さんっていう化け物の話する

今年も年プレの季節がやってきました。
毎年正月休暇があけて、リハビリを終えて仕事モードが5速ぐらいに入ってくると3末決算顧客に向けた年間提案のシーズン入りが始まる。

年間提案はただの大型提案に非ず。一年間の顧客との関係性、理解度、貢献度、そしてこの先一年間営業として顧客にどう寄り添いたいかの宣言。
それらを顧客にジャッジいただくための、一大イベントである。

商材によっては年間の契約が難しいこともあるだろう。顧客によっては、将来の発注を約束することができないというケースもあるだろう。
あえて断言すると、そんなのはどうでもいい。

営業として一年の節目できちんと顧客と向き合いなさいというスタンスの話だと思っている。

オーソドックスは

・まずは年間の振り返りをする
・その上で出てきた課題点に対する論点の提示をする
・時間軸で一年かけてそれをどう解消していくのかというストーリーを提示する
・最終的に、それを商材に落とし込んで見積もりとして年間契約の打診をする

こういう流れなのかな、と思う。

ここでクオリティを左右する大きなファクターは、その資料の中の定量数値を「顧客にどれだけ提供してもらえるのか」という点である。

当然、自社データ自社数値を営業に提供するといいことがあるよね、という価値を感じてもらえないとそんなものはもらえない。この時点で既に、顧客の期待値を獲得できていない営業は、年プレゲームでいきなりハードモードスタートになる。

例えば、顧客の事業計画はどういったスケジュールでどう進み、原案として対峙する担当者はどういう数字を入れ込んで全社に提出することになるのか。

この情報があるかないか、またそれはいくらなのか、変数は何かによって
当然こちらが出すストーリーは大きく変わる可能性がある。

そう、テンプレートがありそうでないのがこの年プレ・年間提案の難しいところ。顧客が10社いれば10社のストーリーがあり、ロジックが必要となる。

黒川さんの話をしよう。黒川さんは広告会社の営業だった。
大手の上場企業のとある商材の広告費のうち8割を超すウォレットシェアをもらっていた。

もちろん、厳密かどうかはさておき一定の売上に対する広告宣伝費率というガイドラインが顧客社内にあるため、8割のシェアが維持される前提で言うと、年プレって特にすることがなくて、効果が出ているのであれば顧客の売上計画に沿って全体予算がある程度自動的に決まり、その8割が自社の年間取引想定額となる。

ただし、8割のシェアというのは、ほぼ危険水域と言っていいと思っていて、顧客が恐れるのは極端な依存。シェアを分散させることを課題として置いていることは、まず間違いなかった。
という意味で言うと黒川さんの年プレのテーマは攻めるよりも8割というシェアを守ること。

過去は変えれないから、費用対効果はもはや可変数値ではなくその前提でいかにシェアを守るのか・・・というテーマ設定での年間提案をすると思わせておいて、彼女は昨対大幅アップを勝ち取ってきた。

彼女は20代の営業でありながら、上場企業としてのそもそもの"売上計画の保守性"をついた。つまり、マーケット白地やマーケット成長性に対する顧客の売上計画が不当に低く設定されている、と。
寝てても達成する事業計画を引くことに何の意味があるのかということを事業部長クラスを味方につけて経営陣に直接プレをし、マーケットポテンシャルの魅力から適切な売上計画の策定を促した。
結果的に、その売上達成に必要な広告宣伝費の枠そのものを確保しつつ、8割シェアの依存の論点なんぞ全体の売上計画の話と比すると些末な話と、なし崩しになきものにして、しっかりと大幅前年アップの契約を勝ち取ったのだった。

何年も営業現場に寄り添う仕事をしているが、この黒川さん以上に顧客の前提に踏み込んだ年プレは後にも先にもなかった。
では、これは黒川さんにしかできない仕事で共有知にすることはできないか、というとそうでもないと思うし、実際にここから生まれたナレッジでいくつかのいい仕事をさせてもらったと思っている。

学びの一つは取引ポテンシャルを正しく把握するということである。
この年プレという一大事業を担当顧客全社一律にコンサル並みに入り込んで数十枚の.pptxを作成することは工数的に恐らく現実的ではないと思う。
その中で、守りに行くという文脈であっても、取引拡大を目指すという意味であっても、年間提案する意味・意義がある顧客がどこの企業なのかという見定めは肝要である。

逆に、うまくいっている企業、価値を肌で感じてくれている企業というのは
そこまでパワーがかからなくてもよいかもしれない。逆にもうほぼ取引停止レベルまで取引が落ち込んでいる企業の中には救えないものも多いだろう。

間にいる中間層の中から、どの企業を引き上げ・どの企業を守りに行くのか、またそのストーリがあるのかないのか。そしてそのストーリーのレバーをこちらが持てるのか持てないのか。
このあたりの見極め・選定がズレると徒労に終わるだけでなく、機会を逸して競合に予算分捕られて、結果を聞いて初めて絶望するという可能性もある。

もう一つの学びは殊更大きく、視点だった。
多くの年プレ提案というのは自社の商材を起点とした、自社の商材の必要性を訴える資料と思っている。

黒川さんはそうではなかった。顧客の、それも経営陣の目線で「私が社長ならどうするか」というストーリーをファクトを添えて提案していったのだ。
恐らく、自社商材に触れるスライドも決して少なくはなかったであろう。ただ、この何十枚ものスライドで絶対に外せない3枚を選べと言われると
想像でしかないが、それは営業目線で作ったスライドではなかったと思う。

最後に一つ書き足すとすると、1顧客に年間1回しかない。営業が経験を積みたくてもそれは年に一回しかやってこないイベントである。
そこから考えると若手こそチャレンジすべきテーマなのかなと思う。

年間提案プロジェクト。いいと思います。
年に一度しかないこの機会を、ただの大型提案で終わらせるのか。
それとも、顧客の一年を動かす場としてチャレンジするのか。

やろうぜ。年間提案。

まずは自社のSFAに各顧客の決算月がきちんと入力されているか、から見てみませんか?

店長

Xアカウント:@nishi_sales_ai 新卒で大手IT企業に入社し、飛び込み営業から深耕営業、大手企業担当まで第一線で経験を積む(表彰歴多数)。その後、事業企画・営業企画部門で経営に近い立場から営業組織と数字に向き合い、10年勤続を経て独立。営業組織の改善に特化したコンサルタント企業を立ち上げる。 コンサルタントして数々の現場に入りつつ、自ら営業特化の転職エージェントも運営。近年はAIを活用した営業組織の業務改善・生産性向上プロジェクトに携わる。現場の最前線と経営の両方を見てきた視点から、営業3年目前後がぶつかる壁を越えるための実践知を発信する。

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