着地予測と着地報告は誰を幸せにするのか
着地精度を高めるための案件情報の収集側(上長)と受注した/できなかったを報告する側(営業)との間で、月末に向けて特定のチャットのレスが活発になる。
僕自身も営業企画的な立場や事業企画的な立場で、幾度となく月間や四半期というタイミングで情報を集約して役職者に報告した経験がある。
コングロマリットな企業体においてはさらにその上の階層でも同様に。情報の末端は、各営業であり各案件だ。
それまで案件の報告の際にたいして興味を示していなかったマネージャも、アレどうなった、申込書は回収できたのか、という報告を促す。
この着地および着地精度というイベントに対して僕は二つ、感じることがある。
一つは、着地がいくらになるかの情報を収集することで事業の売上は伸びるのかということである。目標額に対して後〇万円、どこどこで××万円ショートしそうだから君の事業で■■上振れてほしい。という数字の入りくりのなかで数字が伸びる場面もあるだろう。
ただ、そこでの上乗せ分はもしかしたらニーズの前倒しかもしれないし、何よりそのために溶けた現場の時間を考えると、結構コスパの悪い時間の使い方のように思う。
営業個人を見た時に、事業全体の目標達成ができるかどうかということに対する興味関心はどうしても個人差があるし、組織のために数字を献上するような物言いをされると、いやいやこっちは来月その先のことも考えて調整してんだけど、と文句が言いながらスプレッドシートの更新をしている営業も目にしてきた。
もちろんこの営み全体にプラスの面があることは理解しているがそれを差し引いたとしても、だ。
もう一つ思うことは、着地精度がブレない組織というのはだいたいその他のこともうまくいっているという点。着地精度がブレまくる組織が色んな事がうまくいっているかどうかというのはどっちのケースもあるように思う。
でも、月初、2-3週目、最終週と着地額が大きく変動しない組織は、なんだろう、全てが安定しているのだ。
これを紐解くと別になんてことはない、だいたいの案件の動きが見えていてその上で想定外はありつつも想定外がどちらか一方に偏ることなく、月初宣言の一本の線に収束していく。で、最後に少しだけ愛嬌のように上振れて終わる。
・着地精度向上のために現場に負荷をかけて情報を集める営業組織
・ニワトリたまごはわからないが、着地精度がブレない組織はその他の安定しているという説
この二つの僕個人が思うことについて、いろんな人の意見を聞いてまわろうキャンペーンを実施してみた。
周囲にいる、営業メンバーおよび組織長、それぞれ情報を吸い上げられる側・吸い上げる側の意見を聞いたところ、やはり営業側は否定的な意見が多かった。つまり、その時間の使い方にメリットを感じていないし、組織全体の達成に対するモチベーションは上が考えているほどない、という結果に終わった。
意外だったのは、もう片方の組織長レイヤーにおいても特に必要性は感じていないというか、お作法としてやっている。つまり彼らもその上に対する報告として求められているからという責任の名の元にやっているのであって、そこの縛りがなければもっとユルユルしたものになるんじゃないかという意見が大半だった。
で、これで面白いのは経営者それも社長クラスになると、「まぁ単月だけで見てもね」という意見が圧倒的に多いわけだ。もちろんポーズとして現場にはっぱをかけたり圧をかけたり全組織達成を促すような様々なコミュニケーションはあれど。
そうなってくると、この営みは何のために行われているのか。というのはとても興味深いテーマのようにも思えてくる。
僕はこうした慣習と概念が入り乱れたテーマは中塚君という後輩に相談することにしているのだけど、彼はいつも正しい事しか言わない
「達成することよりも、ズレないことが大切説ありますよね」
裸眼の僕ですら目からうろこが落ちるレベルだった。
組織長として、ズレない構造をどう作るのか。それは奇しくも僕が感じるもう一つのこと"着地ずらさない組織長は他もだいたいうまくいっている"と絶妙にリンクしていたということは、中塚君がまさに言語化してくれたのかもしれない。
着地がズレない組織を作るというテーマで組織設営にあたる組織長には出会ったことはない。恐らくそれは、結果指標なんだろうな、とも思う。
肝となるポイントを外さずに、恐らくこうなるだろうなに対して早め早めに手をうっていく。
よもや、宣言値に着地を誘導するという芸当をしているわけではないのだと思うけど、おっさん世代が良く言う"手の平に案件を乗せる"
月末にチャットが荒れ、スプレッドシートが更新され、誰かがどこかで数字を前倒しする。その一連の営みで、確かに数字が揃うことはある。でもそれは、揃えたのであって、見えていたわけではない。
本当に強い組織はそもそも月末に慌てない。慌てる必要がないほど日々の案件が手のひらに乗っているからだ。着地精度を高めるために現場を動かすのではなく、現場が正しく動いた結果として着地がズレなくなる。
順番を間違えると、ずっと月末だけが忙しい組織になり、よくわからない報告と案件前倒し依頼に辟易した営業の辞める理由が一つ増える
「達成することよりも、ズレないことが大切説ありますよね」
その説、あると思います。
