商談カードなるものを発明したら営業が覚醒して商談バブルという営業振り返りツールが爆誕した
商談カードなるものを発明したら営業が覚醒して商談バブルという営業振り返りツールが爆誕した
「なんかうまくまとまらないんすよね~この提案書」という30枚に渡るスライドと昼休み明けからずっと格闘していた営業がボヤいた。ランチに買ってきたポテトはしなしなになり、紙のドリンクカップはもう触らなくても湿っていることがわかる。
数枚自作のスライドがある以外は汎用企画書を繋ぎ合わせただけのスライドだった。でも彼は結構売れた。そしてその彼がまとまらないのは「スライド」ではなく「商談そのものの構成イメージ」なんだろうな、と思った。
特にスライドが悪いわけではない、ように思う。もちろん決して良いわけでもないけど。「一晩寝かせて明日見てみなよ」としなしなポテトを一つ摘みながら薬にも毒にもならないアドバイスをして、自席に戻った。
翌日、トイレに行く途中、その営業の席を通る時、手書きでノートに何か書き込んでいる開きっぱなしのページ目に入った。
・前回の振り返り
・現状
・課題
・商材
というタイトルの横に要点みたいなのが箇条書きで何個か書いてあった。
「課題」と「商材」の間で相当格闘していたのはパッと見て分かった。
パワポ作る時に、いきなり作り始めるんじゃねぇ!!って前職の上司は良く言ってた。
僕に的確なアドバイスをくれる後輩は、ホワイトボードに横に二本、縦に二本線を引いてそのスライドで語るべきことを箇条書きで3つずつ、9枚分書いていた。
スライドって実は、捨てスライドとキースライドもあれば、3つで一つのこと言う時もあれば、1枚で二つのメッセージを伝えることもある。だけど絶対にスライドは16:9の比率で1枚。
トイレに行くことをやめて、自席に戻って考えた。何をしようとしているのかは自分でもわかっているのだけど、うまくこれが思考の整理に役立つのか。
2センチ×3センチぐらいの紙を数枚用意して、「相談し始めてから考えるな」と僕にいつも言われる営業企画女子に話しかけた。
「昨日相談しようとしていた、来週の営業向け勉強会コンテンツ、この紙に何を語るべきかってのを全部書いて、どういう順番で話すべきか並べてみて」
僕が紙にハサミを入れるところから不思議そうにしていた彼女は、「はい。わかりました。やってみます」と答えた。
「多分やけどポイントは2つ。一つは絶対に紙と紙の間の接続を考えろ、もう一つは紙の並びが一直線じゃないと思う」
できたら教えて、とだけ言って一旦彼女に任せてみた。その時には自分の中には一定の輪郭のようなものはできていた。
「これは発明かもしれない」
翌日、「めっちゃこれわかりやすかったです!!!」と相談し始めてから考える系女子が伝えてきた。これは信用できる反応だとも思った。
本題じゃないのと長くなるので、彼女の内容は一旦伏せる。
僕はそのまま営業企画女子をポテトしなしな男子のところに連れていき、やったことを自分の口で説明させた。ポテト系男子は、ほぉなるほどと言って、自分が書いたノートと2×3センチ四方の紙を見比べながら考え始めた。一応ハサミは置いておいた。
「だから」でも「しかし」でも「ちなみに」でも「補足すると」でもなく、接続する何かを全く思い浮かばないのだとしたら。
多分それは文章力や国語力の問題ではなく、提案として欠陥品の可能性が高い。カードの配置が悪いか、もしくはそもそもカードの要素が足りていないか。いずれにせよストーリーが断絶している
細かいフィードバックは受けなかったけど、結果的にその営業が「全体のストーリー」を意識できるようになったと感じたのは、偶然ではないと思う。
具体的に言うと商品名の話は一番最後にくるようになった。商品の機能説明に至ってはAppendixに回されほぼ補欠扱いだ。
彼の成長は結構、教科書通りという感じだった印象で、課題とソリューションの間に必ずボリュームのある「論点」という2×3サイズの紙が入るようになったのだ。
あくまでも論点にあがりうる一例にすぎないが、
・業務SaaSであれば顧客の心理的なスイッチングコスト
・研修商材であれば、導入効果の効果測定と
・広告系商材であれば、ターゲットの可視化・言語化みたいな話かもしれないが、恐らくクリック単価の話ではなかっただろう。
大きく論点というくくりの中で、それら論点と商材や営業としてどうソリューションを図るのかという「繋ぎこみそのもの」こそが、彼の成長のクリティカルポイントだったと思う。
この営業企画系女子とポテト系男子の体験を経て、ほんの少しずつではあるが「商談カード」なる2×3サイズの紙をフロアでちょくちょく見かけるようになった。
営業企画という立場で現場支援をする僕は、文字起こしと商談解析を駆使してポテトしなしなの商談の軌跡を追撃していった。
意外と、彼の論点パートにおいては彼の発話割合が高く、顧客は聞き役に回っていたようだった。ある程度営業が話しっぱなしになっているような場面においても、有効に機能しているというのがAIが文字起こしを食った際の概ねの評価だった。
ポテトしなしな系男子の彼は商談において、ここの論点とソリューションへの繋ぎこみで毎回15分~20分もの時間を使っていた。顧客のタイプによっても違うが、7割以上は営業側が話している。
発話を文字数に変換すると実にA4で8-10枚の量に達するので、それなりのボリュームだなと思っていた時に、そもそもこの子、何にどれだけ時間使っているんだろうと思った。
彼が書いていた商談カードの内容を思い出しながら、文字起こしの内容を放り込みつつ、AIにカテゴリごとの会話時間を区切るように依頼した。
結果からいうと、これが後の商談バブルなる概念に繋がり、イケてる営業になるためのコンパスのような役割を果たしだした。
一番興味深かったのは、成功体験に共通項はさして見られなかった。 ハイパフォーマーのパターンを抽出しようとしていたのに、 見えてきたのは「同じ営業の商談が、時系列でどう変化したか」だった。 成長とは他人との比較ではなく、昨日の自分との差分だった。
説明する。
最初は、文字起こしをベースに商談の中で何にどれぐらいの時間を使っているのかという配分が気になったので図示化したところから始まった。時間を並べるだけでは少しイメージしづらかったので円(=バブル)で表現した。
驚いた。
比較的単調で違いのない商談をしているイメージがあったが、実際は全然違った。そして、同じ人物であっても、顧客が変われば時間配分は全く違った。特定の項目があったりなかったり、もそうだし、時間のかけ方も顧客の反応によってかなりアレンジされておりバラバラだった。
そう、バラバラだった。
バラバラなのが良いのか良くないのかが全く分からない。
でも意図して顧客によって商談構成や時間配分を変えているのかそれとも、場当たり的な商談の進め方をした結果バラバラになってしまっているのか。というのは気になる
なんとなくだけど、それを営業にヒアリングするのは違う気がした。
2万字を超える生文字起こしをいくつかと自分が作ったバブルを交互に見てみる。
生文字起こしを直接見てみるとヒントが少しずつ少しずつ見えてくる気がする。この時点ではそれが何に繋がるかはわからない。
商談ごとに、“お客さんの発話割合結構ちゃうやん”
一つ目の気づきは解析をする前の生文字起こしによってもたらされた。
昼休み終わり際12時50分頃、タバコ休憩を入れたタイミングで喫煙室で他社の営業女子が清掃のおじさんに「灰皿を清掃するからどいてほしい」というのを割と強いトーンで言われていた光景が目に飛んできた。
このビルでは有名なのだけど、なぜかその清掃おじさんは喫煙室がピークで混雑する12時50分に、黄ばんだ壁に囲まれた喫煙室の中にある灰皿を一つずつ清掃するのだ。
それも、喫煙している人を押しぬけるように、そして不機嫌であることを隠そうとせずに。
僕は煙をたゆたゆさせながらその光景を見て、いつも"13時過ぎてからやればいいのに"と思っていたのだけど彼には彼のペースがある。
喫煙室は誰のものか。そしてふと、商談は誰のものか、と思った。
「営業と顧客のモノ」という一律の回答ではなく営業のモノの時もあれば、顧客のモノの時もある。
元をたどると営業×顧客によって、商談の構成がバラバラだということに気づき、その要因を探しているうちに、「商談の主体者」という超抽象的な概念に帰着する。結果、顧客の意向と反応によって商談構成は変化していく。
とすると、商談構成と顧客の反応を図示化する、と商談バブルの完成度は高くなるのでは。
おもろいやん。
完成図を想像して、これは絶対に営業に使えるという直感が生まれた。実に喫煙室までの往復7,8分の電光石火の気づきだった。
そして僕はここから死ぬほど長い旅に出ることになる。
「顧客の反応・・ネガティブなのかポジティブなのか」これを文字起こしから体感に近づけるレベルの数値化に落とし込むまでに数十時間を費やすことになった。もはや浪費と言っていいレベルの時間の使い方だったように思う。
±0を基軸に顧客の反応を+2~-2まで上下に配置。
横軸を時間の経過として、バブルのサイズをその商談構成として使った時間。
ネガティブゾーンで使う大きなバブルと、ポジティブゾーンで使う大きなバブルは同じ「提案」や「議論」でも全く意味は違うはず。という仮説のもと、顧客のポジ・ネガな反応を可視化するというチャレンジをしたものの
「そうですね」顧客が高い納得度を示しました。顧客の反応+2
「そっちよりかは、こっちの方が課題だと思います」顧客が否定しました▲2
安直すぎて、全く役に立たなかった。
AIの文字起こしは事実を事実として抽出し解釈することは超得意だったが、反応から感情を推察するというのは、かなり苦手項目だった。
相槌の温度感、という、人が当たり前のように受け取る反応についてAIが空気を感じ取ることの難易度の壁。
AIは感情を持ったことがないから。
そこから、僕はAIに感情を叩き込む戦争に突入することになる。そう、プロンプトという竹やりを爆撃機にするための。
まず、AIが「顧客の反応」を感じ取ったパターンを洗い出してみる。すべては顧客の発言をベースにしたものである。
「なるほどね」
「わかりました」
「これってこういう場合だとどうなるんですか?」
という一般的な反応に加えて、
「必要ないですね」
「それだと通しにくいかもしれません」
「僕もそう思っていたんですよ」
「やりにくいかもしれない」
など、AIが拾っているキーワードに大きな違和感はなかった。どちらかというと「顧客が前に進める気があるかどうか」を加味できていないことに課題があった。
つまり、反応がポジティブかネガティブか、ではなくて拾えていないのは
“納得するために会話を重ねている”のか、それとも流しているのか、
または、
“もっとこうすべきという顧客側の仮説があるのに営業が拾えていない”とか、営業が”違うツボを押し続けている“時のうんざりした反応、が拾えていない。
名古屋に明道町、という高速の高架が街の真ん中をぶち抜いているエリアがある。そこで中華を食っていた時だ。
常連と思われるおっちゃんがカウンター越しに「なんだか今日の飯、塩っ気がたりないな」とぼやいていた時に、アルバイトと思しき男性が「ありがとうございます、教えていただいて」と言ったのを思い出した。
“顧客”ひいては“人間”は全てに反応するわけではない。美味しくない時に、わざわざ店員に「おいしくない」と口にして伝えるケースはほぼ想像できない。決められた料金を払って店を後にし、二度と行かないだけだ。
営業とすり合わせるべきというスタンスで商談に来る顧客は実はとてもありがたく、ズレを指摘してくれるケースは極めて貴重と言える。仮にそれが多少感情的になっていたとしても、だ。
サイレントに、その場を終わらせる・・つまり文字起こしに現れない部分を拾わないとこれは可視化できないのでは?
「間」ではない。
反応すべきに対して“反応していない”これが本当のネガティブなのではという仮説は検証するに値する仮説なのではないだろうか。
ええんちゃう?
そこには“ない”ものを見つける。やっていないことを証明する的な悪魔の証明のアプローチだ。
僕は原点に戻って、商談をもう一度最初から「事実」ベースで要約を抜き出した。5本ほど見たところで、「ない」ことを証明するには少し遠いアプローチだった。
次に“そういうケースでは営業は結構ちぐはぐなやりとりをしてしまっているのでは”という仮説のもと、営業の商談運びが、“文脈からズレている”または“強引さを感じる場面”に限定して抽出をしてみた。
結果、これも違った。ただ、営業が文脈からズレた商談してしまっているケースが出てきただけだった。
「砂浜で指輪を落とした」
大学時代にBBQ行った時に、夜に真っ暗な白浜あたりの海岸で20人総出で何台も車のライトを照らしながら1時間ぐらい指輪を探したことを思い出した。
当時と違うのは「落としたのは本当に砂浜なのか?」そもそも「本当に落としたのか?」という疑問は、今回なかったこと。つまりそういうケースは今回は、絶対ある。
それとAIがあるという点。
文字起こしではなくて、営業が実施した商談録画を見てみた。映像を見ながら、40代ぐらいの女性が画面越しに静かに営業の話している内容と文字起こしを画面で並べて、なぞっていった。
28分頃、営業と顧客の間で認識相違が発生した。
顧客の組織課題について話していた時だった。
顧客は商談内で、「新卒の早期離職」について、年々顕著になっている全社的な課題があるという話から、具体の離職率に話が及んだ時。離職率は2割台が今年3割に到達しそうという会話の内容について一通り話し終え、別の話題に移っていった。
正確にいうと、28分開始時点で違和感に気づけたわけではない。
商談終了間際で直前まで全然別の話をしていた。その最後の会話の中に、新卒=大卒と思い込んでいたのだが、当社は大卒だけでなく専門卒や高専卒も採用しているという点。
そして大卒の早期離職が大きな課題という点に加えて、女性の定着率が低いというところがポロポロではじめたのだ。
「新卒の離職率」ではなく「大卒の離職率」と「女性の定着率」という、28分頃の話が商談間際に回収された。
なぜ、顧客は29分に、それを伝えなかったのか。
聞かれなかったから?
営業に伝える必要がないと思ったから?
はっきりとはわからない。でも
「なんで反応しなかった?」を探すのは難しくても、「文脈上、こう反応すべきが自然」という場所に"ない"を探せばいい。
ありがとう!近藤さん!(40代の顧客の女性)
そうなってくると、途端にAIの得意分野になってきた。
探すべき指輪は「商談全体を確認した上で、まずは反応すべきまた指摘すべき点」と「それを実施しなかった箇所」と「きちんと指摘した箇所」と定義した。
ポジティブ・ネガティブという感情軸ではなく、営業に対する希望を持っているか、または否か。これこそが本来可視化すべき内容だったのだ。
結果的にはほとんどが「中庸」つまり、±0に収束していくことになる。
別の論点となるのだが、顧客も営業も、根っこのところで琴線に触れるような会話がなされていない、というケースが残念ながら圧倒的に多数だったからだ。これはこれで課題なのだが、何歩かではあるものの、前に進めることができた。
ここまでで完成したのは、
・バブルそのものの構成(どんな内容を話しているか)
・バブルの大きさ(一つのテーマの会話時間)
・バブルの横並び(商談の構成)
・バブルの縦位置(顧客の営業に対する希望)
このバブルを並べる。とにかく並べる。
一定の自動化は可能なのだが、この時点でこのツールがモノになるかどうかはわからない。そういう意味では時間をかけて商談バブルを自動化生成ツールを作る=つまり時間的投資をすべきかどうかの判断がまだできず、やむなく僕は手動でパワポ上に並べていった。
見た目は相当意味のあるもの”ができた。
何に時間を使い、どういう構成で商談が出来上がっていて、顧客の営業に対する希望残も可視化できた。
次の問題は相棒のAIがバグり始めたことだ。
2万~3万文字というのはAIが文脈を解釈し、正確性を保持するに大量の文字数ではない。
素材そのものに課題があるのではなく、オーダーするこちら側の“オーダー量が半端ない“が故に、正しい解析結果というよりかはAIが「それっぽく返す」ことに終始してしまうのだ。
実際に排出された内容を、改めてスレッドを変えて一から順番に聞いていくと大きなズレが出ているのは明確だった。
途方にくれたら喫煙室に行くのがよい。迷ったらパソコンから一度離れると僕は決めている。
ーどうして、AIはそれっぽく返すのか。
それは情報量が多いからである。
ーどうして、丁寧に聞くと正しい回答が導けるのか?
それは丁寧に聞くからである。
丁寧?
いや違う。一気に聞かないからだ。
検算をするために僕がしたのは、事実を抜き出す、その事実に対してまずそれがヒアリングなのか議論なのか提案なのか雑談なのかというカテゴリを区分する。
そのカテゴリごとに対して、どれぐらいの時間がかかったを聞く。
その上で、全体の商談構成から顧客があるべき反応をした箇所、しなかった箇所を明示する。
つまり、4-5回のストロークをしてターンを切るから、である。
では、この4-5回が毎回非定型で、人間の判断が必要かというと、プロンプトとして固定化して区切れるものばかりだった。
つまり長文の文字起こしに対して、何個も指示があり、細かい出力定義をした超長文のプロンプトをぶつけるから困るのであって、区切ればよい、それだけだった。
話は大きくそれるが、努力には副産物があるという経験をした人は多いのではないだろうか?
部活動、受験などの学生時代の経験を例えにすると、「勝ち負け」「合格不合格」だけでなくやり切ったという経験や自分という人間を鼓舞させる方法、また好きに対して没頭できる自分の発見だったり、生涯の仲間、逃げないという自分の心だったり。
長い人生で見ると、その副産物によって人格が形成されていくようなことも大いにある得えると思うのだけど、僕はこのテーマと向き合う中で「一つの文字起こしに対して複数回の解析を繰り返しかけていく」という壁に対して「API」という副産物を手にするのだった。
APIはブラウザでのチャット上でのAI利用ではなくて、裏側でデータをAIに渡して裏側で解析して、解析結果だけを表に出してもらうというものだった。スプレッドシートなども“表”の役割を果たしてくれるので、誰でも使える。
素材(文字起こし)と一回目のプロンプトを渡すと、(A)という解析結果が吐き出される。この吐きだされた(A)に対して二回目のプロンプトを渡して(B)という解析結果を吐き出させる。
次はもう一回、素材(文字起こし)に別観点の三回目のプロンプトを渡して(C)という解析を出してもらう。最後は(B)と(C)から、(D)という解析を出させ、それだけをスプレッドシートに出させる、というものだ。
APIという言葉は知っていた。なんとなくのイメージも持っていた。
ただし、それが自分が使いこなすものではなくエンジニア世界にお住まいのイメージだった。
面識はあったけどそれほど近くはなかった、でも帰社タイミングが合ったので流れで駅まで一緒にあることになり、話してみたらめっちゃ気が合うやん。という経験に限りなく近かった。
そして商談バブルは日の目を浴び、様々な改良を経て現在に至る。
その1に記載したように、このバブルに正解はなかった。
事業部長が同席した商談などでは冒頭の雑談と自己紹介、会社概要の説明に25分もの時間を使っていた。
もしセオリーがあるのだとすると、セオリーに則ったとは言えないだろう。事実、AIもばっさり「しゃべりすぎ」と断罪していた。が、1500万の受注に繋がったと後から聞いた。
ヒアリングに時間をかけろ
営業よりもお客さんにしゃべらせろ
全部、受注との相関があるとは言えなかった。
ただし、バブルの大きさや構成がこれまでのその営業の標準スタイルから逸脱し始めた時、それはその営業の成長であり、やがて受注という成果がついてくる傾向があることは、一つの発見となり、そして事業の財産となっていった。
問題は「その営業の標準スタイル」を崩しに行こうとしても狙っても全くできない。ということである。
先行指標ではなく結果指標のため、それを追うことは適切ではなかったが、僕はそのタイミングではこのプロジェクトを離れていくことになる。
AIの進化が速すぎて、それ以上追いかけることをやめた。正確には、APIと仲良くなる方を選んだ。自分の好奇心やスキル向上の話ではない、営業組織の改善に段違いの爆発力を持ち合わせていたからだ。
時を同じくして、慣れ親しんだChatGPTかClaudeへ。
そしてチャットUIではなくターミナルという真っ黒なエンジニアが見ているような画面でAIと向き合い続けるのである。
魂を込めたフレームは僕がいなくても残る。魂入れ待ちの課題探しと、困っている営業組織に呼ばれた気がして。
