夜が明けてAIの一日が始まった時、僕はChatGPTと商談解析を始めた
夜が明けてAIの一日が始まった時、僕はChatGPTと商談解析を始めた
GoogleMeetが会議内容の文字起こしをデフォルト機能として実装した。それまで、Googleの上位互換としてしかAIを使っていなかった自分の仕事は、この機能実装で一変した。
2025年3月だったと思う。
その時点で、既に世の中にはAIを用いた商談解析というサービスは出ていたが、一方で「プロンプト」そのものに価値があった時代だったと記憶している。
すごい、の一言だった。
まず、僕がGPTに話しかけたのは「この商談から事実ベースで顧客の重要な発言を教えて」だった。
「社長があまりお金かけるの好きじゃなくて、最初にコケると次やりづらくなるんですよね」
「今のところ、ツールやSaaS変えてもそんなに変わる気がしてなくて、結局“誰がどう動くか”の方が大きいかなと思ってます。」
「リソース的にそこまで手をかけられないんですよね。正直、やりたいのはあるんですけど、人も時間も足りてなくて。」
「最終的には社長判断になります。役員会で話は上げるんですけど、営業サイドの意見も見られるので、その辺ちゃんと整理しないと通らないですね。」
「比較資料は必要ですね。今のままだと“なんでそれをやるのか”っていう説明が弱いので、他と比べてどうなのかは見せないと厳しいです。」
実際の文字起こしより抜粋
全部が僕には宝に思えた。
多くの営業マネージャや、営業企画、また営業本人が「商談にあるヒント」を探しているように思う。
例えば
―この顧客の課題は?
―次はどうするつもり?
―提案はどんなふうに?
と矢継ぎ早に、マネージャがメンバーに問うている場面や指示している場面を多くのビジネスパーソンが目にしたことがあるのではないかと思う。
それ自体は良く理解できつつも自分は「事実」に圧倒的に価値を感じる。
課題や意向、というのはあくまでも人が定義したものであるがゆえに、見ようによっては色々な見方ができるのに対して
「顧客は既存のパートナー業者に不満を感じている」
「去年よりも売上は下がっている」
「組織の離職率が右肩上がり」
誰がどう感じているか、それに何が意味があるかというのは一番最初はどうでもよくて、事実をまずは事実として認識する、それが全ての起点であると思っていた僕にとってAIの出現は衝撃だった。
そこには「営業のフィルターを通さない」事実がそこに置かれているからだ。
それも同時に何個も。
「課題は?」「ネクストアクションは?」「提案はどうする?」とメンバーに聞くマネージャはやはりAIチャットで商談の分析をするときに、AIに同様の質問をすることも興味深かった。
後にAIを使い込むにあたって「構造化思考」という概念を自分なりに確立していくことになるのだけど、僕の超偏見によると”とにかくAIに回答を求める”それは構造化思考の欠如が見られる人に多くみられるAIの使い方の傾向でもあった。
遡ること10年以上前、やはり僕は営業に対して、「お客さんが何て言ってたか事実で教えて。今は感想や意向やどうしようとか、まだいい」と問うていた。
その僕にとって、「事実を事実として知ることができる」AIの出現は、後に語るであろう営業活動のレバレッジや営業の型の導入、営業戦略の構築にあたって極めて重要な基礎の土台となっていった。
事実が揃ってくると、次の問いが自然に生まれた。 この事実は、受注につながるのか。 それを測れないか。 そこから「スコア化」への取り組みが始まった。
例えば商談をスコア化するというと、営業の商談のテクニカルな指標
―ヒアリングができているか
―顧客の課題を深堀できているか
―顧客の決裁ルートを聞けているか
―テストクロージングができているか
等の観点もあったし、後にそういう取組をすることになるのだけど、最初にしてかつ、今なおAIの商談解析において、これ以上の使い方はないと思うのは「顧客の発注状態のスコア化」だった
新規の営業を重ねた人でなくとも容易に想像できることとして、営業は目の前のこの商談相手の顧客が「アツいかアツくないか」つまり受注から近いか遠いかという概念を持って商談に挑んでいる。
僕がスコープとしていれたのは「1か月以内」を目処としての発注、つまり営業からすると受注の状態が整っているかどうかという点を下記の5観点で10点満点でスコア化した。
―予算が明確か、または予算が確保されているか
―自社が提案する商材そのものへの顧客の懸念がないか
―決裁者がその発注に対して了承をしているか、また商談相手が決裁者か
―検討期限を決めているか、かつ直近一か月以内か
―顧客が認識している課題が、自社の商材で解決可能な課題か
何度も外して、何度も組み直した。最終的にたどり着いたのが、この5つだった。この5つの観点をバランスさせることが最も受注との相関があるということにたどりつくことができた。
うまく組めたと思っても受注確率との相関が見えづらかったし、後ろの席で「9点なのに失注しちゃったよ」って営業の声を聞くたびに、修正を重ねて、おかげで僕のキーボードはMとAのボタンが摩擦ですり減って見えない。
顧客貢献とか、好奇心とかそういうレベルははるかに超えて、執着。
魂をこめたフレームは、僕がいなくなっても残る。
この中には「即死に直結」する内容も含まれているので、そこがノースコアとなった回答の場合は、0点ではなく▲2点とすることで、他がどれだけよくともそこが厳しいとかなり厳しい、という傾斜についてもかなり研究を重ねた。
具体的には
―自社が提案する商材そのものへの顧客の懸念がないか
―顧客が認識している課題が、自社の商材で解決可能な課題か
この二つ、似通っているようで全く異なることが非常に興味深かった。
―自社が提案する商材そのものへの大きな懸念がないか
その後の商談の運び方によってはこっちはリプレイス可能性まだある。
だが
―顧客が認識している課題が、自社の商材で解決可能な課題か
こちらの「顧客の課題」そのものを動かしていくというのは極めて大きな困難というのも副産物としては大きすぎる発見だった。
例えば、人事労務に強いHRSaaSがあったとする。顧客の課題がタレントマネジメントや組織開発に偏っていれば、もう受注は程遠い。ただ労務は労務で結構課題あるぜという状態なら、HR情報の統合という上段からアプローチすることで難易度は高くともまだ可能性はある。
この商談のスコア化を通じて営業の主観に頼ることなくリソースの配分の仕方についてガイドラインを設けることができるようになったから、仕組みとなりやがてそれは大きな財産となった。
具体的な約束は一つだけ。
スコア6.5以上はマネージャと話せ。
それが、1年以上AIの商談解析を続けてきた僕の「営業組織にAIを介入させる」というテーマの最初の成功体験だった。
AIがなければこんなこと言語化する機会もなかったと思うのだけど、全ての答えは商談にあった。
