値引きのインパクトってえぐいぜ 何十年と使われてる古典フレームは正しいことしか言わないんよ

売上10億円、営業利益2億円(営業利益率20%)の会社があります。
売上が5%減った時、手残りの利益はいくらになるか?

10億円×(1▲0.05)×20%、ではない。

どんな業態かにもよるけれど、他の要因がないのだとしたら営業利益率20%を維持することは基本的にはない。

リアルな場面に置き換えるとよくわかる。
あなたは動物園を運営している。通常1000円で売っている入園券を900円に割引した。

売上のマイナス額100円に対して、利益のマイナス額はいくらだろうか。
そう、100円である。10円ではない。
値引きによる顧客の数が変わらず、売上を減らしたことに伴うコストの減少がない限りは同じ金額だけ利益が減るのだ。

この動物園が営業利益率20%だとすると、売上100円のマイナスに対して、営業利益率を維持するためには減っていい利益は20円だけである。つまり、80円のコストが一緒に減ってくれるのであれば、である。でも、飼育員の数も、餌代も、光熱費も何も変わらない。

固定費と変動費という考え方が根底にあるのだけど、それはおいといて
僕が伝えたいのは「値引きのインパクトってえぐいぜ」という話である。

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僕はプライベートで5万円・10万円といった買い物をするときに、「僕の中の重視項目」というものを考える癖がある。むかし、広告系のビジネスに携わっていた経験が根底にあるのだが、顧客の顧客は何を持って購入するのか、それこそが広告で表現すべきことであるから。

マンションの購入なんかはすごくわかりやすい。
ー立地
ー広さ
ー価格
ーデザイン
ー築年数

なんかはわかりやすい重視項目だ。

これらをマンション購入を検討している人たちにアンケートを取るとする。
あなたが最も重視するのは立地~築年数のうちどれですか?

賭けてもいい。価格とか予算内であることは上位3位には絶対入ってくる。

もちろん、金額など関係ない。いいモノや合うモノであればいくらでも払うぜ。もしくはこの課題を解決することが最優先。そのためには一定の予算度外視でスピード優先でやりたいという顧客に出会うケースもあると思うが、稀だ。

多くの顧客にとって実際に値段が低い直接メリットだけでなく、"それ以外を選択することは摩擦や説明責任が生まれる"というデメリットを一つ無意識下に排除している可能性も否定できない。

いずれにおいても価格で優位性を持ち顧客と対峙するという戦略という意味では極めた優れた営業戦略であると言える。し、値引きすることによる利益毀損インパクトも半端ない。
特に原価が変動費ではなくて、売上減ってもコストなんかたいして減らないぜって業態やスキームにおいては、値引き額=利益棄損額になってしまう。

では、多くの営業組織にとって、この価格の統制や価格の戦略への転換というのが合理的に意志決定されているのだろうか、と考えると意外と重要な論点なのにもかかわらず、慣習や市場が決めた(じゃないと売れない)という感じで、他者や歴史に委ねてしまっているケースも多いように思う。

もちろん、利益の最大化にあたっては、市場の意向=競合の動向や顧客の予算状況については無視できない要素なのは、そりゃそうよ。

大事なのは、そこを超越できそうな付加価値をどう作るのかという点だったり、逆に価格優位性を保つための筋肉質な組織作りや仕入力をどう持つかという点である。加えてAIによってゲームの前提が大きく変わるタイミングでもある。

経営陣からテーマを渡された営業組織長の目線で話をしよう。

ー来期の営業戦略構築において、利益最大化と事業成長を両立するために価格をどう置いていくかを議論したい。

あなたは現場の責任者として、この原案を提示する場の人であると同時に、経営が最も意志を持ってほしい人であるかもしれない。

もちろん、多くの人が一瞬で思いついたこと
ーそんなのどっちにしてもメリデメあるじゃん。
は経営陣も織り込み済みの上で、問いを置いてきたわけである。

僕ならまず「交渉力」について考えると思う。

経営学部に入って、最初に学んだ経営基礎科目が
―マネジメント論
―会計額
―マーケティング論
そして、経営戦略論の4つだった。

超古典書の「マイケル・E・ポーター」という人が書いた、競争戦略論というそのまんまのタイトルに書かれていた
5F(ファイブ・フォース)というフレームに登場するのだけど、
”売り手の交渉力/買い手の交渉力”

という二つのキーワード。

参考までに言うと他の三つは、
―代替品の脅威
―新規参入の脅威
―競争業者間の敵対関係

これら5つの要素がその業界の競争の性質を決める、と言っている。
これらが最も排除された状態が独占や寡占だったり、スーパーニッチでプレイヤーがいないという状態なのかな。

まずこのフレームに沿って、業界そのものの競争業界を正しく定義しようぜ。
その上で、歪みがあれば是正に向かうのか、歪みを利益に転換しにいくのか、みたいなのが「競争戦略」と位置付けることができそうな雰囲気がプンプンする。

この中で、自社が直接関与しているファクターは売り手と買い手つまり仕入れ先と顧客しかないじゃん。
他は、マーケット環境の事実や変化見立てを立てることができたとしてもよほどのTOPプレイヤーでない限りは直接的にコントロールすることは難しい。

一方で、仕入れ先と顧客は、面と向かってお話ができる。
=コントロールできるかどうかはわからないが、コントロールするための場は用意できる。

では、交渉力とは何か?
ずばり、
仕入れ先においては他の選択肢の存在
売り先においては、他の選択肢の存在に加えて、スイッチングコスト

これらが交渉力を定義するのではないか。ポーターは他にも色々出しているのだけど、現実的な変数はこのあたりかなと思う。

仕入れ先というのは何も有形の商材に限ったことではない。
無形のサービスであっても、その商品を生み出すためのコストは全て仕入先であることを考えるとエンジニアの人件費だったり、リサーチャーの待遇だとか。
つまり、彼らは待遇の変化によって他に選択肢がある人たちなのかという点をドライに考えなさいという話である。

金銭的待遇の話だけでもない。退職が出た時に、補充は新卒に毛の生えたレベルで収まらないか?AIで代替できる部分はないか?
などの、内部だからこそ生まれる選択肢も数多く出てくる。

逆に、仕入れ先の交渉力がやたらと強いというケースも当然ある。
「売ってやるのありがたいと思えよ?」と顧客を選べるような立場もあれば、A4一枚で値上げを通知されても飲むしか選択肢がない、みたいなのはまさにそれ。

売り先に対するスイッチングコストというのについても、金銭的なコストだけでない。見えにくいけど、「変えるのめんどい」という心理コストは超重要なスイッチングコストである。

ERP(基幹システム)の保守業者が、単価の値上げを交渉してきた。
ERPのスイッチングなど考えたくもないほどの影響範囲がある。
仮に他のシステムにスイッチングしたら毎月の運用費は半分になったとしても、その影響範囲の特定だけでどれだけの工数を持っていかれるのか。
更に、業務フローが大刷新になるための現場への説明コストは?

これも全部、スイッチングコストである。
面白いのは、ERPを変えることはできないけど、ERPの保守業者は秒で変えれるかもしれないという点であり、自社の売り手としての交渉力を見誤ると値上げ通知が契約解除祭りになるという悲劇の可能性もある。

経営陣からのオーダーに話を戻すと
・顧客のスイッチングコストは高いのだろうか?自社との取引を打ち切った場合に顧客には他の選択肢は容易に見つかるのであろうか?
・逆に、仕入れ先はどうだろう?自社が仕入れをやめた場合、彼らはどれぐらい困るのだろうか、その補填は容易なのだろうかそれともインパクトが大きいのだろうか?
これらを踏まえた時に、今の価格は適正なのか、もっと利幅をとれるのか。
そして「競合にされたらいやなこと」は何かを踏まえて、先手先手で動きべきという結論で締めくくるのが美しいと思います。

店長

Xアカウント:@nishi_sales_ai 新卒で大手IT企業に入社し、飛び込み営業から深耕営業、大手企業担当まで第一線で経験を積む(表彰歴多数)。その後、事業企画・営業企画部門で経営に近い立場から営業組織と数字に向き合い、10年勤続を経て独立。営業組織の改善に特化したコンサルタント企業を立ち上げる。 コンサルタントして数々の現場に入りつつ、自ら営業特化の転職エージェントも運営。近年はAIを活用した営業組織の業務改善・生産性向上プロジェクトに携わる。現場の最前線と経営の両方を見てきた視点から、営業3年目前後がぶつかる壁を越えるための実践知を発信する。

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